一橋大学「世界史」について、「今年(2017年)の予想問題はないのですか」というご質問がありました。すでにご質問にはお答えしておりますが、そちらでお答えした通り、作ってあるには作ってあるのですが、大人の事情により公開を自粛中ですw そういうわけで残念ながら問題を公開することはできないのですが、代わりに今年の予想問題を作成するにあたり、私が気を配った点についてご紹介しておこうかと思います。ただ、予想はあくまでも予想でして、正直なところ一橋の先生方が気まぐれで「よし、今年は猿人・原人祭りだ!」とか言ってアウストラロったりピテクスってしまったりした場合にはまったく意味をなしませんw 当たらないことの方が多いかもしれませんが、そこは気休めぐらいのつもりでご参考になればと思います。「余計な先入観を持ちたくない!」という方はむしろお読みにならずに飛ばしてください。

 

まず、私が今年の予想問題を作るとすれば、基本的には「史料読解をベースにした、例年の一橋の出題とは少し外れたものを作る」と思います。理由はいくつかあります。第一に、一橋を受験される方であればすでに本ブログでも公開しております「一橋の伝統的な出題範囲」についてはすでにふまえていて、ある程度の知識は入っているだろうと思われることです。こうした「伝統的な出題範囲」に関しては各種参考書もそれなりに東大や一橋など難関校で出題された内容を意識して作ってあると思いますし、過去問もありますから、こうしたものを日々練習してきた受験生の方にあらためて同じようなものを示す必要はない、というよりは、こちらが示すとすればむしろ優先すべきものは別にあると考えるからです。

 

これと関連しますが、二つ目の理由として、「近年の一橋はその範囲とは少しずれた出題をすることがあるので、受験生に対してはむしろそちらの補強をしてあげた方がよい」ということがあげられます。従来は中世であれば「神聖ローマ帝国とその周辺史」、近世~近現代であれば「フランス史」、「アメリカ史」、大問3のアジア史であれば「清朝建国期、清朝交易史、清朝末期の諸改革と混乱」、または「李朝末期以降の朝鮮史」とある程度その出題範囲を読むことができました(http://history-link-bottega.com/archives/5935036.html)が、近年は必ずしもこうした出題範囲に限定されず、より広い範囲からの出題がされています。(http://history-link-bottega.com/archives/5936916.html)こうしたことを考えますと、伝統的な基本路線は外すことなく、それをやや拡大していくのが予想問題を作成する際の基本姿勢となります。その際、一橋の研究者の専門分野に気を配っていることは同じく過去の記事ですでに述べました。

 

三つ目の理由は文句なしに「近年の一橋では史料読解型の設問がかなり出題されている」ということです。最先端(とまでいかなくても、わりと進んだ)の歴史学における成果を、生の史料や二次文献などの史資料から読み取れるようにして、ヒントとして受験生に示した上で、その読解をもとに歴史的知識・理解を整理させるスタイルの設問が非常に多く見受けられます。こうした設問は従来の一橋の設問とは明らかに一線を画すものですし、東大型の設問とも少し異なります(東大の設問は基本的には高校で学習する内容を逸脱するものではないように思います。要求されるレベルは高いですが)。そうした意味で、こうした史料読解問題に慣れていないであろう一橋受験生のために、この手の史料読解問題を作っておいた方がいいだろう、と思って今年の予想問題は作成しました。

 

ちなみに、この手の予想問題を作成するには史料が必要になりますが、教科書や資料集レベルに記載されている史料では分量・内容ともに物足りないですし、探すのに骨が折れます。そこで今回私が使用したのは、たとえば一橋2015年大問1でも出題された『フランク年代記』も掲載されております『世界史史料』(歴史学研究会編、岩波書店)シリーズです。この本については本ブログで簡単に紹介しています。(http://history-link-bottega.com/archives/11994047.html少なくとも高校生が目を通して参考になるようなものではありません。ただ、数多くの基本史料が掲載されておりますので学校の先生がちょっと気の利いた史料を使いたいなと思って調べるにはそれなりに重宝します。もちろん、歴史の専門書とか、ダイレクトに1次文献をあたることもできなくはないのですが、専門の分野で12題を作成するならともかく、広い範囲から複数題作るとなると正直なところ手間がかかりすぎますので、私の場合はまずこちらから史料をあたりました。

 

 以上のことを考えて、今年の一橋受験を準備する上で役に立ちそうなことを述べるとすれば以下の3点です。

 

1、伝統的な出題範囲の理解はしっかりとしておくこと。

2、史料読解や2次文献の内容把握ができる読解力をつけておくこと。

3、下に示すような分野など、穴になっている部分の詳細をまとめておくこと。

 

 上の3で言う「下に示すような分野」とは、一例を挙げれば以下のようになります。

 

(大問1)

:中世ヨーロッパ史の中でも、一連の流れを持っているもの、政治・経済・社会・文化など複数の要素が絡んでくるものなど(例:ビザンツ史 / 教会と各国君主の中央集権[またはその地域差] / イタリア都市 / 議会制の発達 / 大空位時代と金印勅書 / 宗教政策、宗教改革と各地への影響 など)

 

某予備校のオープンで出たロシア史とかも悪くないと思いますよ。少し素直すぎるかなという気はしましたが、東欧史をついてくるというのは一橋の基本だと思います。

 

(大問2)

:基本的には啓蒙の周辺。フランス史、アメリカ史で思想的な内容の絡むものは特に注意が必要。また、アメリカ史については現代史も含めて注意。その際、防共圏の設定など国際的な枠組みが作られるような動きについては特に注意を向けておく。(例:科学革命と啓蒙 / ドナウ帝国 / アメリカ独立戦争と啓蒙 / 大西洋革命 / 19世紀ラテンアメリカとヨーロッパ / 1819世紀プロイセン / ウィーン体制下の民族運動 / アイルランド併合と英議会制度 / 19世紀後半の社会主義・労働運動 / 19世紀トルコとパン=イスラーム / フィリピンの独立 / アメリカのカリブ・太平洋進出 / 冷戦 / 戦後のラテンアメリカ / 中東戦争とアラブ など)

 

(大問3)

:明末以降の中国史や李朝末期以降の朝鮮史がベースであることには変化はないが、それをさらに時代的に広げておく。また、地域的にもインド・ヴェトナム・フィリピン・チベットあたりには目を向けておく。(例:辛亥革命以降の中国の動向 / 国民党と共産党 / 土地改革~文革 / 中ソ対立 / 改革・開放 / 朝鮮保護国化 / 19世紀後半から戦後までのインド民族運動 / インドシナ戦争~ヴェトナム戦争 / 東南アジアの民族運動 / 戦後インドネシア / 中印国境紛争 など)

 

何度も繰り返しになりますが、上に示した分野というのは、一橋の受験に「出る」というよりは、「万が一出た場合に一橋用の勉強をしてきている受験生には穴になりかねない」部分で比較的狙われそうな一連の流れ・テーマを持っているものをピックアップしたものです。一橋の設問は付け焼刃の知識やヤマ張りでどうにかなる、という類のものではないということは、過去問を解いたことのある方ならすでにご存じのことと思います。ですから、これらの分野を集中してやり直すというより、まずは基本となる勉強をしっかりとした上で、余裕があればこうした脇道の部分にも目を通しておく、というくらいがよいのかなとおもいます。「HANDのいうことはあてにならん」というくらいの捉え方の方が正しいと思いますし、こちらとしても気が楽ですw 頑張って分析したり作ったりはしますが、人間のすることですから。

 

微力ではありますが、みなさんが目標を達成できることを心からお祈りして、できる限り細々と更新していきたいと思います。