『東書の世界史B 入試対策問題集』(東京書籍)

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今回はちょっとマイナーな問題集をご紹介します。東京書籍が出している『世界史B』の流れに沿って作られた『東書の世界史B 入試対策問題集』です。これも教科書と間違えられると困るので一応示しておきますと、下が教科書の『世界史B(東京書籍)』。
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 ちなみに、よく教科書の良し悪しが問題になることがあるのですが、正直山川とか東書とか帝国の『世界史B』であれば、多少の視点の違いこそあれ、受験に対応するのにレベル的に問題があるということはまずありません。細かい違いにこだわる前にまず全部覚えてしまうべきですw そもそも、難関大の場合、教科書ベースで勉強することにこだわる必要すらありません。かといって、教科書ベースで勉強したらアカン、というわけでもありません。その人の状況次第ですよね。世界史で偏差が65欲しいのか、75以上欲しいのかでも違いは出るでしょうし、世界史が得意科目・得点源の人と、苦手科目・足を引っ張らない程度にと考えている人でも異なります。ついでに言えば、受験に合格するだけが勉強ではないわけですから、「もっと深いとこまで行ってみたい」と思うのであれば山川の『詳説世界史研究』あたりを手がかりに色々な歴史の概説書に手をのばして、受験を度外視した勉強をしても構わないわけです。そうした学びを「無駄」として退けるのは行き過ぎた効率主義というもので、そういうことばかり気にしている人が官僚になると基礎研究に金出さないとか色々言い出すことになるわけですw

 まぁ、それはそれとして、東書の『世界史B』の良いところは最新の歴史学の研究成果を取り入れることに敏感で、意欲的なところですね。あちこちにあるコラムも、ものによってはすでに古くなっている感もあるものはありますが、興味深いものが多いです。もっとも、それが受験にダイレクトに役立つか、と言われると一長一短といった感じがします。  

 

一方、こちらが問題集の方です。


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ちょっと画像ではよくわからないのですが、実物はもう少し紫がかった色をしています。外観は正直「売る気あんのか、これw」っていうくらい素っ気ないカッコをしていますが、問題集は中身なので、中身の検討をいたします。

まず、この問題集の良いところは以下の2点につきます。

・単元別であること。

・図表問題が多いこと。

これらです。

まず、「単元別であること」の利点ですが、これはやはり「授業で勉強した部分を小さなズレもなく復習することができる」という点です。東京書籍のHPには[教科書『世界史』(B301)傍用の入試演習問題集です。…(中略)…リード分の穴埋めと,下線部対応の設問(短答,国公立対応の記述,センター試験対応の正誤など)を効果的に設定しています。「概観とまとめ(教科書の章扉に対応)」や「横にみる世界史」(教科書の)「世紀の世界」に対応)など,教科書とのタイアップをはかっています]とあります。

https://www.tokyo-shoseki.co.jp/materials/h/2/695/

このように、教科書の内容に沿って作ってある問題集で、全部で155の問題(それ以外にテーマ史が13題)が用意されていることから、自分の学習した内容に合わせて復習を進めるには最適の問題集だと思います。例えば、「一週間学校で授業が進んだら、週末に進んだ分だけの問題を解き、できなかったところをチェックする」。これだけでもただ漫然と授業を聞いたり教科書を読むよりはグッと定着度が上がってくるかと思います。

 また、本問題集の利点として「図表問題が多い」という強みがあります。ざっと数えてみたところ、地図・写真・表やグラフなどが全部で200点以上あります。これは山川の世界史B問題集にはない強みです。こちらはこちらでレベルの高い問題集なのですが、こと図表ということに関する限りほとんどと言っていいほど掲載されていません。近年のセンター試験や2次試験を考えた場合、地図・図表問題に触れる機会がないというのは大きなデメリットであると思いますので、そうした部分を補い、早いうちに地理を確認し、図表問題に慣れることができるということはこの問題集の大きなメリットでもあります。

 

 ですが、どんなに優れた問題集にもイケていないところがあるのですから、当然この問題集にもそうした残念な部分はあります。大きいところでは以下の3点です。

・問題のレベルが難関大向けの内容としては物足りない。

・用語の意味内容に対する意識の低い部分が散見される。

・誤植や事実誤認が多い。

 まず、問題のレベルについてですが、東書のHPには[国公立大学2次・市立大学上位を意識した入試演習問題で構成されています]とか[別冊の解答編には詳細な解説を付し,「入試力」錬成に万全を期しました]とあります。このうち「国公立大学2次」というのは国公立でも数多くの大学がありますので間違いではないかもしれませんが、少なくとも東大・京大レベルの問題に対応できるだけの難度を維持できているとは思えません。レベル的にはセンターレベルまたはセンター+αレベルか、マーチの素直な問題くらいの難しさでしょう。また、解答も言うほど詳細だとは思えませんw ですから、世界史を習いたての人間がそれを復習するためや、一度学習はしたものの忘れてしまった人が忘れてしまった知識の再確認のために活用するには向いていますが、受験直前期の人間がさらに力を伸ばすのには明らかに不適です。そうしたことを目的とするのであれば前出の山川の問題集や各大学の過去問の方がはるかに適しています。

 また、ところどころに「これは問題としてはどうなんだろう」と思えてしまうような、用語に対する意識の低い部分が見られます。たとえば、「新石器時代」という用語がある場合、「この問題集は新石器時代をどうとらえているのだろう」と首をかしげたくなる部分があります。そうした定義が曖昧なまま正誤問題などの設問を作っているため、正答と誤答の境界線が曖昧になるというか、どちらにもとりうるという設問がちらほら見られます。もっとも、こうした設問は実際の大学入試でも見られるもの(下手をすれば正解が二つとかw)ですので、そこまで気にしなくてもいいと言えばいいのですが、まだしっかりとした知識を持っていない人にとっては混乱の元になる要素だと思います。

 最後に、誤植や事実誤認ですね。後から訂正が送られては来ましたが、ちょっとそのあたりで信頼度が落ちる部分はあります。

 

 以上述べたような短所はありますが、先ほどから述べているように、通史を習いたての人が、授業進度に合わせて復習を進めたり、世界史についての知識がだいぶ抜けてしまった人が総復習を手軽にこなすということを目的とした場合には便利な問題集かと思います。『世界史B』を学習したての高1や高2が毎週これを使って復習した場合、かなりの力がついてくるのではないでしょうか。やはり、教科書に準じて単元別になっているというところが最大の強みですかね。価格も900円と手頃で、まぁそのくらいの使いごたえはあるかなぁという気がします。偏差で言うと「~60前後」までの問題集という感じです。65こえてくる人には「割と簡単かも」と思えてしまうでしょうね。

 

(おススメの人)

・今、はじめて世界史の通史を勉強しているところで、その復習をしたい。

・『世界史B』を学習したての高1・高2である。

・基本的な知識を定着させたい。

・できるだけ図表問題にも触れてみたい。

・一度世界史を勉強したけれどもかなり忘れてしまったので総復習したい。

・東書の『世界史B』を使って勉強している。

・まずは偏差60UPを目指して勉強したい。

・まだ受験までにかなりの時間的余裕がある。

 

(おススメしない人)

・すでに世界史の基本知識は入ったのでさらに上を目指した勉強をしたい。

・偏差65以上がコンスタントにとれる。

・受験直前で2次試験対策を進めている。

・難関大受験を考えていて、すでに時間的余裕が半年を切っている。