世界史リンク工房:コーヒーを飲みながら歴史を語れ

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『東書の世界史B 入試対策問題集』(東京書籍)

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今回はちょっとマイナーな問題集をご紹介します。東京書籍が出している『世界史B』の流れに沿って作られた『東書の世界史B 入試対策問題集』です。これも教科書と間違えられると困るので一応示しておきますと、下が教科書の『世界史B(東京書籍)』。
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 ちなみに、よく教科書の良し悪しが問題になることがあるのですが、正直山川とか東書とか帝国の『世界史B』であれば、多少の視点の違いこそあれ、受験に対応するのにレベル的に問題があるということはまずありません。細かい違いにこだわる前にまず全部覚えてしまうべきですw そもそも、難関大の場合、教科書ベースで勉強することにこだわる必要すらありません。かといって、教科書ベースで勉強したらアカン、というわけでもありません。その人の状況次第ですよね。世界史で偏差が65欲しいのか、75以上欲しいのかでも違いは出るでしょうし、世界史が得意科目・得点源の人と、苦手科目・足を引っ張らない程度にと考えている人でも異なります。ついでに言えば、受験に合格するだけが勉強ではないわけですから、「もっと深いとこまで行ってみたい」と思うのであれば山川の『詳説世界史研究』あたりを手がかりに色々な歴史の概説書に手をのばして、受験を度外視した勉強をしても構わないわけです。そうした学びを「無駄」として退けるのは行き過ぎた効率主義というもので、そういうことばかり気にしている人が官僚になると基礎研究に金出さないとか色々言い出すことになるわけですw

 まぁ、それはそれとして、東書の『世界史B』の良いところは最新の歴史学の研究成果を取り入れることに敏感で、意欲的なところですね。あちこちにあるコラムも、ものによってはすでに古くなっている感もあるものはありますが、興味深いものが多いです。もっとも、それが受験にダイレクトに役立つか、と言われると一長一短といった感じがします。  

 

一方、こちらが問題集の方です。


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ちょっと画像ではよくわからないのですが、実物はもう少し紫がかった色をしています。外観は正直「売る気あんのか、これw」っていうくらい素っ気ないカッコをしていますが、問題集は中身なので、中身の検討をいたします。

まず、この問題集の良いところは以下の2点につきます。

・単元別であること。

・図表問題が多いこと。

これらです。

まず、「単元別であること」の利点ですが、これはやはり「授業で勉強した部分を小さなズレもなく復習することができる」という点です。東京書籍のHPには[教科書『世界史』(B301)傍用の入試演習問題集です。…(中略)…リード分の穴埋めと,下線部対応の設問(短答,国公立対応の記述,センター試験対応の正誤など)を効果的に設定しています。「概観とまとめ(教科書の章扉に対応)」や「横にみる世界史」(教科書の)「世紀の世界」に対応)など,教科書とのタイアップをはかっています]とあります。

https://www.tokyo-shoseki.co.jp/materials/h/2/695/

このように、教科書の内容に沿って作ってある問題集で、全部で155の問題(それ以外にテーマ史が13題)が用意されていることから、自分の学習した内容に合わせて復習を進めるには最適の問題集だと思います。例えば、「一週間学校で授業が進んだら、週末に進んだ分だけの問題を解き、できなかったところをチェックする」。これだけでもただ漫然と授業を聞いたり教科書を読むよりはグッと定着度が上がってくるかと思います。

 また、本問題集の利点として「図表問題が多い」という強みがあります。ざっと数えてみたところ、地図・写真・表やグラフなどが全部で200点以上あります。これは山川の世界史B問題集にはない強みです。こちらはこちらでレベルの高い問題集なのですが、こと図表ということに関する限りほとんどと言っていいほど掲載されていません。近年のセンター試験や2次試験を考えた場合、地図・図表問題に触れる機会がないというのは大きなデメリットであると思いますので、そうした部分を補い、早いうちに地理を確認し、図表問題に慣れることができるということはこの問題集の大きなメリットでもあります。

 

 ですが、どんなに優れた問題集にもイケていないところがあるのですから、当然この問題集にもそうした残念な部分はあります。大きいところでは以下の3点です。

・問題のレベルが難関大向けの内容としては物足りない。

・用語の意味内容に対する意識の低い部分が散見される。

・誤植や事実誤認が多い。

 まず、問題のレベルについてですが、東書のHPには[国公立大学2次・市立大学上位を意識した入試演習問題で構成されています]とか[別冊の解答編には詳細な解説を付し,「入試力」錬成に万全を期しました]とあります。このうち「国公立大学2次」というのは国公立でも数多くの大学がありますので間違いではないかもしれませんが、少なくとも東大・京大レベルの問題に対応できるだけの難度を維持できているとは思えません。レベル的にはセンターレベルまたはセンター+αレベルか、マーチの素直な問題くらいの難しさでしょう。また、解答も言うほど詳細だとは思えませんw ですから、世界史を習いたての人間がそれを復習するためや、一度学習はしたものの忘れてしまった人が忘れてしまった知識の再確認のために活用するには向いていますが、受験直前期の人間がさらに力を伸ばすのには明らかに不適です。そうしたことを目的とするのであれば前出の山川の問題集や各大学の過去問の方がはるかに適しています。

 また、ところどころに「これは問題としてはどうなんだろう」と思えてしまうような、用語に対する意識の低い部分が見られます。たとえば、「新石器時代」という用語がある場合、「この問題集は新石器時代をどうとらえているのだろう」と首をかしげたくなる部分があります。そうした定義が曖昧なまま正誤問題などの設問を作っているため、正答と誤答の境界線が曖昧になるというか、どちらにもとりうるという設問がちらほら見られます。もっとも、こうした設問は実際の大学入試でも見られるもの(下手をすれば正解が二つとかw)ですので、そこまで気にしなくてもいいと言えばいいのですが、まだしっかりとした知識を持っていない人にとっては混乱の元になる要素だと思います。

 最後に、誤植や事実誤認ですね。後から訂正が送られては来ましたが、ちょっとそのあたりで信頼度が落ちる部分はあります。

 

 以上述べたような短所はありますが、先ほどから述べているように、通史を習いたての人が、授業進度に合わせて復習を進めたり、世界史についての知識がだいぶ抜けてしまった人が総復習を手軽にこなすということを目的とした場合には便利な問題集かと思います。『世界史B』を学習したての高1や高2が毎週これを使って復習した場合、かなりの力がついてくるのではないでしょうか。やはり、教科書に準じて単元別になっているというところが最大の強みですかね。価格も900円と手頃で、まぁそのくらいの使いごたえはあるかなぁという気がします。偏差で言うと「~60前後」までの問題集という感じです。65こえてくる人には「割と簡単かも」と思えてしまうでしょうね。

 

(おススメの人)

・今、はじめて世界史の通史を勉強しているところで、その復習をしたい。

・『世界史B』を学習したての高1・高2である。

・基本的な知識を定着させたい。

・できるだけ図表問題にも触れてみたい。

・一度世界史を勉強したけれどもかなり忘れてしまったので総復習したい。

・東書の『世界史B』を使って勉強している。

・まずは偏差60UPを目指して勉強したい。

・まだ受験までにかなりの時間的余裕がある。

 

(おススメしない人)

・すでに世界史の基本知識は入ったのでさらに上を目指した勉強をしたい。

・偏差65以上がコンスタントにとれる。

・受験直前で2次試験対策を進めている。

・難関大受験を考えていて、すでに時間的余裕が半年を切っている。 

山川『世界史B用語集(改訂版)』

全国歴史教育研究協議会編、山川出版社(2012年版)

 

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 そもそも解説の必要があるのかなとも思ったのですが、案外参考書や問題集関係の情報は需要があるみたいなので、載せておきます。言わずと知れた「山川の用語集」こと『世界史B用語集』(山川出版社)です。世界史に登場する基礎的な用語を全て網羅している優れもの用語集として、受験生ばかりでなく教育機関含め各所で愛用されている基礎参考書の一つですね。ただ、一言だけ言っておきたい。

 

 少なくとも、HANDは受験生の頃、これを持っていませんでした。

 

もちろん、全然使ったことがないわけでも見たことがないわけでもなかったですが、少なくとも普段使う参考書の中にこの本は全く入っていませんでしたね。正直、逐一この用語集を調べるくらいでしたらまず例の『詳説世界史研究』をあたりましたし、そんな時間があれば一問でも多くセンターや大学の過去問あたりました。実際、それでも十分に偏差70以上は確保できます。あれば便利なのでしょうが、成績を取る上で絶対に必要かと言われればそこまでのものでもないでしょう。

 

別に、この参考書がダメだと言っているんではありません。この参考書はとても優れた参考書で、私も重用しています。今手元にあるのは2012年版(すいません、新しいのは職場においてきましたw 今あるのは部屋にある私物です)ですが、ボロボロになっています。それくらい使っているということですね。ただ、私思うんですが、この参考書は「受験生がこれをもとに世界史通史を勉強するための参考書」ではないと思うんですよ。この参考書はそのタイトルにもあるように「単なる辞書、用語集」なのです。

 

たしかに、各用語は時代ごとに配置されていますし、順番に出てきます。でも、だからといって一つ一つの用語が教科書や参考書にあるように話の流れの中で配置されているわけでもなければ、それぞれの関係性も見えません。ヨコの流れもなければタテの流れもない、基本的には一語一語が断絶している、そういうものなんです。たとえば、国語の辞書を引いた時に、「秋」の次に「悪」が出てきたとしますよね?関係ありますか?英語の用語集で、’vocational(職業の)の次に’pertinent(関連のある)が出てきたとしても同じように関連はないでしょう。いや、pertinentだから関連はあるとか、そういうことではなく。つまり、これはあくまで「用語集」なんです。その範囲では素晴らしい出来ですが、だからといって教科書や、参考書や、問題集の代用になれるものではない。

 

ところが、受験生の中にはそれをはき違えてこの用語集を「参考書」状態にして使う人がいるんですね。付箋はりまくって、マーカー引きまくり、文字書きまくりで。多分、コンパクトだから持ち運びはしやすいし、試験に出てくる用語は全部載っているんだからそれでいいじゃんと思っているのでしょう。ですが、先ほども述べた通り、それではタテ・ヨコの流れはつかめませんし、用語集には地理情報も載っていません。たとえ、用語集に複数の戦いの名前や事件(たとえば、アドリアノープル遷都に、コソヴォの戦いやニコポリスの戦い、アンカラの戦い)が載っていたからといって、オスマンがまさにバルカン半島へ奥深く侵入しようとするルートや、それをティムールに阻まれる様子を思い描くことは難しい。

 

ですから、この用語集を使う際には、あくまでも「用語集」としての長所を生かした使い方をしてあげるべきでしょう。本当は、学校の先生が使う場合と受験生が使う場合とで便利な使い方のようなものを分けて示してあげたりした方が親切なのですが、そこはさすが天下の山川ですから、エンドユーザーの顔まで見た気づかいは微塵も感じさせませんw 通り一遍の「使用上の留意点」と「まえがき」がついているだけですね。それでも売れるだけの質を兼ね備えているからできることなのでしょうが、何十年も出しているんだからもう少しサービス精神があってもいいような気はしますw ただ、ベストセラーなだけあって、下にあげたような短所長所はありますが、労力を惜しまず作られた良書であることには変わりがありません。一冊あれば便利であることには違いないでしょう。

 

[長所]

・「世界史B」教科書11冊から学習に必要と思われる用語を選んだ、と豪語するだけあって、さすがに基本的な用語はきちんとそろっています。国王の生没年と在位年が分けてあるところや、文化人の生没年が付してあるところなども素晴らしいですね。教科書や参考書では前後関係が不明確になってしまう場合には重宝します。

・通常の教科書ではおろそかになりがちな文化史に関する用語に詳しい説明がついていることも良いです。文化史が覚えにくいのはやはり「その作品がどんな話なのか」など、作者や作品のバックグラウンドに関する情報不足からくることが多いです。(ダンテがベアトリーチェLoveなあたりがルネサンスなんだ!とかが伝われば『神曲』や『新生』に対する愛着もわこうというものです。)同じく、必ずしも十分ではありませんが思想史に関する事柄も、ある程度内容がわかるようになっている点は、この用語集を使うにあたり特に受験生が重宝すると思います。

・索引が丁寧に作られており、求める語が引きやすいです。

・各項目も、極力その内容をくみ取りやすいように書かれています。(たとえば、「ユトレヒト条約」の項目については、この条約がどのようなものかという概略が簡単に示された上で、受験でよく出題されるこの条約で割譲された各地方(ハドソン湾地方、アカディア、ニューファンドランド、ジブラルタル、ミノルカ)が出題頻度とともに別途示されています。

・教科書11冊に出てくる頻度が①、⑧などの形で示されています。

 

[短所]

・あくまでも「用語集」なのであり、タテ、ヨコのつながりがわかるほどではありません。

・地図、図表などは当然のことながらまったくありません。

 

 ここまではそもそも本書が「用語集」なのですから当たり前といえば当たり前で、むしろ使う側が「使い方を間違えて短所にしてしまっている」部分があります。ですが、以下の短所については改善の余地があるでしょう。

 

・初めて手に取る受験生などはどのように活用したらいいか意外に見当がつきません。そのため、買うべきか買わざるべきか、限られたお小遣いの中で迷う人もいるようです。

①、⑧といった頻度はあくまでも「教科書11冊」を調べた中で判明した登場頻度であって、これが受験で出題される頻度とは必ずしも一致しません。ところが、これをはき違えている受験生が非常に多いんですね。ですから、本来は本書の冒頭にこの点に関して注意を喚起する注意書きがあってしかるべきかと思います。

実際の受験現場では本書に登場しない用語からも多数出題されています。たとえば、『詳説世界史研究』では登場するフィチーノなどは本書には出てこないようです。おそらく、用語的な穴という意味では『詳説世界史研究』の方が少ない気がします。(もっとも、どんな参考書を用いたとしても穴は存在します。ただ、本書の場合、早慶などの難関私大の受験を考えた場合、看過してよいものかどうか迷うレベルだということです。やはり、複数の参考書や問題集に目を通すことが一番だと思います。)

 

(おススメの人)

・時間はたっぷりある人(すくなくとも1年)

・細かいところに気を配る丁寧な学習を心がけている人。

・文化史、思想史などの背景を「手軽に」、「簡潔に」知りたい人。

・本書をあくまでも「用語集」として使うつもりの人。

(おススメしない人)

・時間に余裕のない人(受験まで数か月)

・そもそも、細かいところまで気にせずざっくり歴史を学べれば十分という人。

・文化史、思想史の背景を「深く」知りたい人。

・タテ、ヨコのつながりや地理的情報を入れたい人。

・参考書や問題集の代用として使うつもりの人。
 

詳説世界史ノート

(詳説世界史ノート編集部編、山川出版社、2014年版)

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 山川は「〇〇ノート」と名のつく学習ノート形式のものを非常に数多く出しています。これらの学習ノートは外見も非常に似ており、本屋の店頭に行くとこれでもかというくらいにおいてあるので、受験生からすると「そもそもこいつらは役に立つのか。いや、それ以前にこれらはどのような違いがあるのだろう」と迷ってしまうというのがこの山川の学習ノート群です。ためしに、いくつか例を挙げてみると、

 

・『詳説世界史ノート』

・『授業用 詳説世界史B整理ノート』

・『詳説世界史学習ノート:上』

・『詳説世界史学習ノート:下』

・『流れ図で攻略詳説世界史』

・『詳説世界史スタンダードテスト』

 

などなど。とにかく似ています。そっくりです。どれくらい似ているのか。

まず、学校の教科書などとして使われている「詳説世界史B」です。

 

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つづいて、『詳説世界史ノート(本書)』です。

 

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『流れ図で攻略:詳説世界史B』です。

 

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詳説世界史スタンダードテストです。

 

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これらが同じような水色の表紙に包まれて本屋に陳列されている様は
さながらスライムなのか水色のぷよぷよなのかわからない連中が群れをなしているかのようです。開いてみると、内容的にも一見、「む、どこに差があるのだろうか」と思わせるほどよく似ています。その違いはおいおい解説していきますが、これだけ似ているものを、そっくりなタイトルでドカドカと同じ場所において、ろくに各参考書、問題集の使い方の区別をユーザーに丁寧に示さないというのはどれだけ殿様商売なんだ、と思いますw 用語集にもその手の傲慢さは透けて見えますねw「オラ、オレ様は山川の用語集だぞ?受験生なんだろ?買えよ!は?使い方?そんなもんはテメーで考えろ!」みたいなw くぬどんかよw

 
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これらの学習ノート・問題集群の中でおそらくもっともよく見かけ、さらに受験用のまとめに適しているだろうと思われるのがこの『詳説世界史ノート』です。本書の「使い方」として、表紙カバーには以下のようにあります。

 

このノートは、『詳説世界史』の流れに沿ったノートです。教科書に完全準拠しているので、授業の予習・復習はもちろん、受験のための自宅学習にも最適です。

 

また、本書の冒頭にある「内容と使用法」にはこのように書いてあります。

 

 『詳説世界史』に完全準拠しており、教科書の構成・本文の流れに忠実に沿ってつくられています。内容は教科書の記述を逸脱せず、過不足なく整理されております。

 

たしかに、その通りなのでしょう。実際、私もその通りだと思います。学習ノートとしてよく練ってあると思いますし、仮にこれを一般の中高における世界史プリントとしてそのまま用いたとしても、特に問題なく使用できるレベルに仕上がっていると思います。

 

ただ、ここで注意しなくてはならない点があります。それは、ここでいう『詳説世界史』とは、高校の教科書として用いられる『詳説世界史B』のことをさしているのであって、私が最初に紹介した受験生のバイブル『詳説世界史研究』のことを言っているのではない、ということ(多分)です。実際、本書を手に取って実際に進めてみると、『詳説世界史研究』と比べるとやや内容が薄いことに気付きます。このことが何を意味しているかというと、本書を解き進めるだけで東大をはじめとする難関国公立ならびに早慶の難関学部に対応するだけの学力が身につくかは「微妙」だということです(身につかない、と言っているのではありません。使い方次第です。)要は、『詳説世界史研究』の方が情報が濃いのです。これは本書の出来が悪いと言っているのではなく、単純にその目的とするハードルが違うのです。つまり、本書はあくまでも教科書『詳説世界史B』のまとめ用の学習ノートに過ぎず、『詳説世界史研究』のまとめ用学習ノートではない、ということです。ちなみに、『詳説世界史研究』はこちらです。


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このことさえ踏まえれば、本書は『詳説世界史B』を教科書として使っている学校の定期考査対策としては十分に使えます。また、大学受験用としても、ある程度のレベルであれば十分対応は可能でしょう。私の感覚としては、偏差60強までの大学とセンター試験であればかなり対応できるのではないでしょうか。また、この学習ノートをもとにしてよりレベルの高い大学用の勉強を進めることも可能です。要は、情報量が足りないのならば足してやればいいわけで、たとえば『詳説世界史研究』を傍らにおきながら、本書を進めていき、足りない情報があれば本書に直接書き加えていくという方法を取ればよいわけです。

 

もっとも、そうした方法はすでに自分で『詳説世界史研究』をベースに効果的な学習スタイルを確立している人には必要ないでしょう。たとえば、学校の先生が作る副教材(プリントなど)が十分に東大、早慶に対応するに足る内容を備えていて、それらを使って学習を進めている場合や、自学自習で『詳説世界史研究』レベルの内容を自らノートにまとめている場合、『詳説世界史研究』にダイレクトにチェックペンひいて頭に叩き込んでいる場合などです。

 

いつもと同じことですが、要は使いようなわけです。教科書に準拠して同じ出版社から出ているものですから、出来としては十分です。ただ、「純粋に」本書だけで学習した場合、偏差70近辺の大学で高得点を狙うことは難しいでしょう。一方で、少し背伸びをして通史を学習したいと考えている「世界史を習って半年~1年目くらいの高校1年生または高校2年生」や、ざっと通史を教科書レベルの内容でおさらいしておきたい高3生には向いていると思います。ですが、図表・地図が少ない&コラムが少ないのは短所ですね。良くも悪くも「教科書を逸脱しない」内容になっていて、遊び心と言うか、面白みに欠ける気がします。
 
 正直、
HANDとしては地図が少ないという時点で、かなり減点です。まとめ用のノートですから、地理的なことは知っているだろうという前提でそうしているのでしょうが、世界史を覚える作業において地理情報の有無は大きくその成果を左右します。また、多くの場合世界史を勉強している受験生の多くが地理的な情報を十分に自分のものとして消化していないのが現状です。みなさんは、「イラン」といったらどこ、「トルキスタン」といったらどこ、と言うように頭の中におおまかな地図が出てくるでしょうか。こういった、「地名を聞けばだいたいどこのことか分かる」という感覚は世界史を勉強する上でとても重要です。HAND自身が授業をする時は、くどいくらいに地理的な位置関係を示しつつ(実際に画像を見せつつ)説明します。しかし、多くの先生方や学習参考書は、(私の経験上ですが)一度解説してしまった地理情報はほとんど説明しません。そうすると、生徒は「バルカン半島」と言われると「あー、なんとなくヨーロッパの東の方?」のような理解でとどまってしまっているのに、先生の方ではセルブ=クロアート=スロヴェーン王国であるとか、セルビア、ルーマニア、モンテネグロの独立なんてことを滔々と語りだすというギャップが生じます。こうなると「理解したつもりで実は全然理解していない」受験生の出来上がりです。もし地名を聞いた時に「まだイメージとして自然にはわいてこないな…」と感じるときには、こうした地理的な情報に敏感になるように注意して、基本的な位置関係だけは押さえるようにすると理解も深まり、学習効率も大きく上がってくると思いますよ。東欧については、ベーメン、ハンガリー、ポーランド、ブルガリア、ルーマニア、セルビアと言われた時におよその位置関係はつかめる、くらいになっているというのが理想です。

 

 ちょっと脱線してしまいましたが、本書はこんな感じになっています。

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右側に内容がプリント風にまとめてあって、左側に番号に入る言葉を入れていく形式ですね。ですが、HANDはこのやり方で本書を利用することはおすすめしません。HANDがもし本書を使うならこうします。

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おわかりになるでしょうか?つまり、ダイレクトに書きこんでいってしまうということです。本気で覚えるつもりなら絶対にこうしたほうがいいです。理由は二つあります。一つは、もし左の「解答欄」に答えを書き入れた場合、必ず目は「右→左→右→左…」というように往復を繰り返します。これが思いのほかに負担になりますし、なにより時間のロスにつながります。二つ目ですが、経験則で申し訳ないのですが、HANDは記憶にとって「視覚情報」は非常に重要だと思っています。「目で」見た印象というのは意外に頭に残っていたり、忘れてしまったとしても何かの拍子に「ひょいっ」と飛び出してくるものなのです。直接書き込んだ場合、その単語を見たときの視覚情報はその周辺の情報も連れてきてくれる、引き出してくれる可能性がありますが、「解答欄」に書きこんでしまった場合、右の「まとめページ」の情報と左の「解答欄」の情報が断絶してしまい、「視覚情報」からは何も引き出せなくなってしまいます。これが本番では意外に大きな差となって出てくる、というのがHANDの印象です。こうしたことは、本書の活用に限らず、たとえば地図を覚えるときにも当てはまります。下の例を見てみましょう。(ちなみに、この地図はHANDが無料の白地図サイトから保存したフランスの地図を加工して作ったもので、本書の内容とは無関係です。)

 

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Aはダメな例、Bが良い例です。一目瞭然だと思いますが、Bの方は名前を覚えると同時にその都市がある「場所」の情報も一緒に視覚情報として取り入れることができます。何かを覚えて、自分の知識として消化する場合、こうした何気ない小さなことが大きな差となってあらわれることがありますので、「なかなか覚えられないな」という風に感じている人は、自分の学習方法に何か改善できる点があるのではないかと疑ってみましょう。

 

[本書が向いている人]

・世界史を習い始めたが、自分で「世界史B」の教科書レベルの内容をある程度まとめて、覚えてみたいという人。(高1、高2)←とくにオススメ!

・様々な理由から、「世界史B」の教科書レベルの通史をざっとおさらいをしたいという人(高2、高3)

・あまり細かい説明はどうでもいいので、とりあえず必要最低限のつながりと用語だけ頭に叩き込んでおきたいという人。

・センター試験レベルの世界史に最低限対応できる力を急遽(2か月~半年程度)で身につけたいという人。

・東大、早慶クラスは正直あまり考えていないという人。

・『詳説世界史研究』を用いて自学自習しているが、その前提となる書き込み用教材が欲しいという人。←かなりオススメ!(ただし、余白はあまりないのですごく細かくなる覚悟を)

・学校や塾の先生がめんどくさがりであまり副教材を作ってくれない&板書もしょぼくてまとめのしようがない、という人。←特にオススメ!

 

[本書をあまりオススメしない人]

・東大、早慶レベルの世界史に真っ向から立ち向かって高得点をゲットしたい人。

・話の細かい流れ、説明がないと満足できない人、覚えにくい人。

・図表や地理情報も含めて世界史を理解したい人。

・すでに偏差65以上の成績を模試で取ることができる人。

・学校や塾の先生から十分なレベルのプリントなどの副教材を与えられている人。

・学校や塾の先生の板書が充実していて、それをまとめれば教科書レベルの内容はきちんとわかるようになっている人。

・『詳説世界史研究』を用いて自学自習が進められている人。

 


『段階式世界史論述のトレーニング(改訂版)』

Z会出版編集部編、Z会出版、2012年版) 


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今回紹介するのはZ会出版の『段階式論述のトレーニング』です。

 この参考書のウリは各章ごとに字数の異なる論述問題が複数掲載されていて、第1章の50字~90字の論述に始まり、最終的には300字以上の本格的な論述に挑戦できるという段階式の論述トレーニングがこなせるという点です。 

私自身も時々高3向けの論述対策授業を行う際にいくつかピックアップして練習用に使うなどしていますが、評価を一言でいうのであれば、「平均的。わりと使い勝手は良い」というものですね。先にことわっておきますと、「平均的」というのは悪い評価ではありません。むしろほめ言葉ですね。内容ガタガタな参考書や問題集が巷に出回りまくっている中で、受験用に使えるだけの平均的な内容を持っているというだけでも十分使える問題集であると思います。当たり前のことですが、参考書や問題集というものは、その使用する目的によって必要な内容、情報量が異なります。どんなによくできた内容でも、東大や一橋受験者用の参考書を中学生に用いさせるということになればそれは「向かない」し、マーチクラスの受験には最適な参考書であったとしても、早慶を絶対条件としている受験者には「向かない」こともあるでしょう

であるから、ある一面をもって「悪書である」と決めつけるよりもどういう人にとってどのように適していて、逆に適していないかを評価したほうが有意義です。結局、問題となるのは「使用者にとって合っているかどうか」です。ちなみに、本書の全体の構成は以下のようになっています。(本書目次より)

 

 第1章:入門編(50字~90字の論述)、全15

 第2章:実力養成編(100字~150字の論述)、全25

 第3章:実戦演習編①(200字前後の論述)、全20

 第4章:実戦演習編②(300字以上の論述)、全15

 

収録されている問題は各大学の過去問から集められたものですが、その元ネタになっている大学を挙げると、東大、名大、大阪大、一橋大、京都大、筑波大、千葉大、埼玉大、北大、新潟大、東京学芸大、東京都立大(首都大学東京)、京都府立大、岡山大、早稲田大、慶応大、明治大、成城大、津田塾大…etc.ということで、実にバラエティーに富んでいます。逆に言えば、個々の大学の問題数はそれほど多くないです。また、多くの問題において改変が加えられています。これは「問題だけを抜粋したため本文がない」、「そのままの形では難しすぎる」など様々な理由から改変されているものでしょうが、かなり大幅に改変された問題もあるので、本書を繰り返し解いただけでそれがそのまま志望校の2次対策になる、などとは考えないほうがいいと思います。ただ、ややもすると取っつきにくい論述問題が比較的ソフトに配置されており、解説などもデザイン的に見やすく、論述を全然したことがないけど練習したいという論述入門用のテキストとしては割によくできた良書であると思います。

 

[長所]

・字数ごとに分けられているので、目的にあった問題を選ぶことができる。

 

・比較的解説が詳しい。

:問題冊子がP.2-P.2830ページ弱であるのに対し、解説部分がP.20-P.283までの約260ページに及ぶ。また、解説の内容も時折教科書レベル以上の内容が入ってきます。バルト帝国のくだりでクリスティーナとオクセンシェルナを出してくるあたりなかなかいいじゃないですか。クリスティーナについてはしっかりデカルトやグロティウスとの交流についても言及されていたりしますので、「解説読んだけど新しい知識が全然出てこないなぁ」ということも少ないかなと思います。

 

・問題部分と解説部分が分けられている(別の冊子になっている)ので使いやすい。

:これ結構大事。特に、問題解こうとしているときに問題集が分厚すぎて開いたのに「…パサッ」っていういわゆる赤本状態にならないのはとても助かる。ユーザー視点を大事にしているのは好評価。

 

・とにかく見やすい。

:論述の問題集は字がびっしりでそれ自体が読み物になってしまっているややお堅いイメージのする問題集が多いのだが、本書はその内容に比してポップな感じがして読んでいて楽w

 

・図表なども適度に簡素化されているので簡単な整理をするのには向いている。

 

・とりあえず、いろいろな大学の論述問題に触れることができる。

 

・「これが書けたら何点、合計何点」という採点基準が示してあるので、何となく点数をつけた気にはなれる。

 

・コンパクトなので、「やりきれる」!

:これは結構重要。よく、問題集を買ったはいいけど、結局最初の何ページか手をつけただけで断念しちゃった、ということがあるものですが、本書はその見やすさ、コンパクトさ、使い勝手のよさで「とりあえず、1日1題くらいはやろうかな」という気にさせるので、普段は三日坊主で終わっちゃうという人でも何とか最後までやりきろうという気になるのではないでしょうか。何でもそうですが、「とりあえずきちんと1冊仕上げる」というのは案外しっかりとした力になります。価格(1200円)を考えても目的次第で元は十分に取れる気がします。

 

[短所]

・実は、字数ごとに分けられていること自体にあまり意味を感じないw 解説部分を見てもそのあたりの意識は薄いらしいです。せっかく字数ごとに分けるのであれば「60字論述はこう攻める!」とか「300字以上の論述を攻略!」など、字数に特化した論述の組み立て方などにもっとこだわって欲しかった。

 

・字数にこだわっているためにテーマや問題の選択の仕方がちょっとぬるい。また、問題の並べ方も「この並べ方でいいのか?」と思わせるところが多々あります。第1章の問題を試しにあげると、「ユダヤ教→上座部仏教と大乗仏教→クシャーナ朝→封建制と郡県制→仏図澄と鳩摩羅什→冊封体制→アクバルとアウラングゼーブ→価格革命→イタリア戦争の誘因…」となりますが、正直、「オイッ(笑)」って感じですw まぁ、「あー、比較やらせたいんだろうなー」という意図は感じるのですが、60字論述の比較やってもねぇ。「Aはこうでした、それに対してBはこうでした。」で終わりですからねw超基礎じゃんw「中学受験の国語かよ!」って突っ込みたくなります。 問題の並びも「冊封体制」から「ムガル帝国」にとんで「価格革命」ですからね。カオスっぷりは筋肉少女帯も真っ青ですw「何となく役に立ちそうな問題をピックアップしてみました」という感じで、どの部分のどの力を強化したいのかというテーマ性が見えません。そうした意味で、東大の大論述対策などを本格的に志向している受験生には本書は向きませんね。せいぜい小論述対策や、様々なテーマのざっとした復習向き。

 

・問題も正直ぬるい。解いていて「ぬぅ、これは手ごわい敵だぜハァハァ」みたいなことになることはまず、ありません。たしかに、東大や一橋の問題も出ていますが、比較的マイルドな設問が出ている気がします。(一橋とかモノによっては凶悪ですからね…。)これはおそらく各地域の広域見取り図を描かせたいんだろうなぁという気がするので(第4章の部分ではインドのイスラーム化とか、東南アジアとか、ドナウ帝国とか、中国、中東など、それなりに地域や時代をばらして一般の大学入試で「好まれそう」なところが散らしてある印象)、必ずしも悪いわけではないのですが、正直普段から東大や一橋、京大の過去問にガッツガツで取り組んでますよ、という人には物足りない感はあると思います。同じ理由で、いわゆる難関校の直前対策にも向かないですね。

 

・問題数が少ない。これは長所との裏返しですが「小論述中心の構成で全部で7080問しかない」というのは少ないですね。東大の赤本5年分も解いたら小論述だけで結構な数になるし、一橋の過去問5年分解いたら400字論述が3問×5年分で15問でしょ?やはり、難関大の論述を本格的にやろう、という人には「おなかいっぱい」にはならない問題集ではないでしょうか。

 

・採点基準は必ずしもあてになりません。全然ダメダメとは言いませんが「何でこれが3点あるんだろう」とか「おいおい、これ書かないでいいのか」とか言う部分は多々あります。おそらく、無理に「〇〇点、合計で〇点」と基準付けしてしまったせいで、本来加点要素として示すべき部分が要素として抜け落ちてしまっていたりしていますね。他にも高得点を取れるような書き方はあるはずなのにそうした可能性をつぶしてしまうスタイルの採点基準になってしまっています(ちなみに、赤本などもそうした部分はあります。そもそもあの情報量では圧倒的に足りない)。ですから、もし本書を使う場合には「なるほど、こういう風に仕上げることもできるのね」とか「とりあえずこういう採点基準が想定できるのね」くらいの理解でとどめておいて、他の構築の仕方、視点、採点基準の可能性を排除しないほうがいいでしょう。この問題集を「崇拝」してしまうと手痛いしっぺ返しをくらうと思います。むしろ、この参考書を土台として「より洗練するなら自分ではどうするかな…」というように吟味したほうがいいでしょう。何度も言いますが、モノは使いようです。「んだよ、こんなことも書いてねーのか、使えねーな。これに気付くオレ、スゲー( ̄▽ ̄)」という姿勢では使いようによっては使えるものの可能性を潰してしまいかねません。新人潰しをする上司とか、成績は振るわないけどやる気のある生徒を潰す先生みたいな真似はHANDは避けたいですw

 

・解説も本当はもう少し掘り下げたい。特に、背景にある歴史観であるとか、東大が求めるような大テーマといった視点に乏しい気がします。「比較問題をとりあえず並べてみました」、「地域ごとにとりあえずあげてみました」という感じで、個々の設問を配置している意図もあまり感じられない。多分、編集した側は「こういう風に問題置いてあるんだから、当然こういう視点を持って解けよな」という漠然とした意識は持っているのでしょうが、それを読者に伝えなくては伝わりませんね。ある意味、「論述はコミュニケーション」という基礎を踏み外してしまっている部分もありますが、個々の問題についてはできるだけ見やすく、わかりやすく説明しようという意思は感じられるので、まぁドンマイかなとw

 

・東京外大がない!

:これがHANDが最もムキーになるところです。正直、複数の大学のっけるんだったら外大置いておいてくれw

 

 以上、長所と短所をあげてみました。「平均的すぎることが長所にもなり、短所にもなっているという問題集」と言ってしまうとその特徴がよく表せるのではないかなと思います。ただ、繰り返しになりますが入門書としては悪くない。HANDが本書を薦めるとすれば「高2の半ばから終わりかけで、世界史通史を半分以上進めている生徒が初めて論述問題に挑戦!」という人や「高3の夏休みに入るんだけど、センター試験用に何となく主要なトピックの流れをお話としてつかんでおきたいなー」という人、「とりあえず、論述問題って解いたことないから練習したいな」という人などでしょうか。

 

[オススメの人]

・高2でとりあえず世界史をある程度(近世・近代あたりまで。ウェストファリア条約あたり~フランス革命あたりまでやってあればとりあえずはok)学習したので、主要なトピックをザッと見てみたい

・論述問題に取り組んだことがない、苦手なので、練習したい。(論述入門者)

・センターレベルの知識を一問一答ではなくてお話の流れとしてさらっと確認したい

・自分が持っている堅い知識(覚えたての知識、用語だけを知っているような知識)をもう少しソフトにしたい(簡単なストーリー仕立てにしたい)

・東大論述ばっかりやってたから古代史とか中世史がだいぶ抜けちゃってるので、息抜きがてらサラッと復習しておきたい。

・マーチあたりが志望なんだけど、単なる一問一答形式の問題集じゃなくて、話の流れをおさえてみたいな。(解説部分が多いくらいなので、一種の「読み物」として使うこともできます。)

 

[オススメしない人]

・ガッツリ難関国公立対策です!の人(東大、一橋、京大etc.

・ガッツリ難関私大対策です!の人(早稲田、慶応。あ、でも慶応は使いようによってはアリかも。論述自体が短いので。ただ、経済史の数はそこまで多くない)

・ガッツリ東京外大志望です!(赤本買いましょうw でも5年分しかないんだよね…)

・上にあげた難関大の2次試験まで1~2か月前の直前対策です!(正直、その段階でこの問題集やってたんじゃとてもじゃないけど間に合いません)

 


 よく教え子と話をしていると、「自分で勉強を進めようと思っているんだけれども、何を用意すればわからない」とか、「問題集はどういうものを使ったらいいですか?」とか、「論述対策には何を使ったらいいですか?」という声を聞くことがある。こういう時の私自身の答えは、本当は「自分で本屋に行って自分に適していると思えるものを選びなさい」というものだ。例えば、書評では「これはいい!」という風にされている本でも、その子自身にとってはまだ難解すぎてわからないといったことはあるものだし、逆に「こんなテキトーなことを書いている本はダメだ!」とされているものであっても、入門書やとりあえず話の流れだけでも理解しておきたいという人にとっては案外役に立ったりということがあるからだ。

 そこで、こちら「HAND’s BOOK(参考書・問題集)」では、実際にHANDが高校受験から教壇で用いるものまで、これまでに使用してきた問題集・参考書の特徴や、長所・短所を紹介していきたいと思う。

 

改定版『詳説世界史研究』

(木下康彦・木村靖二・吉田寅編、山川出版社、2016年)
 
23

(★:5、難易度:5、◎がそれぞれの最高評価です)

 

 まずご紹介するのがこちら『詳説世界史研究』だ。東大をはじめとする難関国公立や早慶あたりを受験する高3生であれば持っている人の方が多いと思う。正直、これらの大学を受験するのであれば必携の書だ。私がこの本を手に取ったのは高校1年か高校2年の初め頃だったと思うが、当時は価格ももう少し高くて「うわっ!高っ!」と本屋でうなったものだが、立ち読みしているうちに「むむ…むむむ…プリントや教科書に書いてないけどそうか、これはこういうことだったのか…!」ということがわかるにつれ、なけなしの一万円を握りしめて買った記憶がある。だが、買っただけの甲斐は間違いなくあった。それ以降、この『詳説世界史』は自分が世界史の基本を確認する際に常に側にあったまさに「座右の書」だ。もう何冊買ったかわからないw(最初に買ったものを確かめてみたら1995年発行とある。その後、何度か買い直したがとりあえず手元にあるだけで版の異なるものが4冊ほどある。)それでは、この参考書の特徴を示しておこう。

 

[長所]

・情報量が多い。(2016年発行版で598P!)

・歴史的な事実だけでなく、その背景や影響などタテ・ヨコのつながりに強い

・歴史学でも最先端の知見が盛り込まれていることが多い

・コラム欄が充実している

・長年版を重ねているので教科書なみに誤りが少ない

 

[短所]

・情報量が多い分、情報を絞って勉強したい人間にはかえって負担となる

・地図、図表は良質なものが多いが数が少ない

・一般的な教科書と比べればマシだが、思想史の説明が弱い

:全体的な流れは把握できるが、異なる文化的流れ同士のつながりや、個々の思想家の思想のディテールが見えない

 

こんなところだろうか。まず、長所の第一に挙げた「情報量が多い」だが、ためしに本HPの「東大への世界史①」であつかったイタリア戦争について、東京書籍の『世界史B』とこの『詳説世界史』の記述を比較してみると以下のようになる。

 
詳説世界史1
  

これは表面的な違いだが、さらに詳説世界史のみに記述のあることを列挙してみよう。

 

・シャルル8

・ナポリ王位継承権の要求(戦争原因)

・ルイ12

・フランスのミラノ公国占領

・カルロス1世がイタリアに侵入した年(1521

・神聖ローマによるローマ略奪(1527)についての顛末

 (「サッコ=ディ=ローマ」と呼ばれる事件であるが、詳説世界史でも用語としては出てこない。)

・クレピーの和約(1544

・フランソワ1世の死(1547)とアンリ2

 

これだけの情報が『詳説世界史』の方にしか出てこないのである。いかに情報量に違いがあるかがお分かりになるだろうか。ただし、これは東書の『世界史B』が質的に劣っていて、『詳説世界史』の方が優れているということではない。東書の『世界史B』も執筆陣を見れば歴史学の世界ではメジャーリーグを通り越して殿堂入りを果たしておられるような先生方ばかりだし、各コラムをはじめ説明の仕方も最新の歴史学の成果が盛り込まれている。ただ単に、高校の集団授業で用いる際に必要な情報量をきちんと備えているのが東書の『世界史B』であり、個人で細かな情報を確認することを目的として作られているのが『詳説世界史』であるという、用途の違いからきているものだ。だから、私は高校の授業で『詳説世界史』を用いることは推奨しない。『詳説世界史』では情報量が多すぎて高校の世界史の授業では全てをカバーすることが難しいし、内容についていけない子が出てきた場合に自学自習させるテキストとしても不適切であると思うからだ。

 だが、実際には早稲田や慶応でも教科書レベルの知識では追いつけない内容を聞いてくる。たとえば、早稲田大学2015年度大問2設問4を見てみると以下のようなものである。

 

 下線部④に関し、カルタゴの滅亡を目撃した歴史家を以下のア~エから一つ選びなさい。(下線部④は「三回にわたるポエニ戦争によりカルタゴを滅ぼしたローマ」である)

 ア ポリビオス

 イ リウィウス

 ウ タキトゥス

 エ プリニウス

 

 ちなみに、正解はアのポリビオスなのだが、この設問は教科書の情報からだけではどうやっても解くことが困難である。ポリビオスの生没年が一応は小さくあるが、文化人の生没年を逐一正確に把握する受験生はいたとしても稀だろう。また、他の文化人も一応ラテン文学の全盛期の時期の人物たちとしてひとくくりにはしてあるが、おそらくこれを読んだとしても情報量が少なすぎていつ頃の時期なのかをきちんと把握するのは困難である。対して、『詳説世界史』の記述からはリウィウスとタキトゥスについては「アウグストゥス時代になって」であるとか「帝政期に」といった形で繰り返しかれらが前期帝政時代の人間であるということが示されるし、プリニウスについてはページ下の注釈に「79年にウェスウィウス山が噴火したとき被災者の救出に赴き、みずからは調査を続けてついに犠牲となった」とあるので、前期帝政期であることは確認できるから、解けるかどうかはともかくとして、事実として確認をすることはできる(ちなみに、赤本には本設問は「難問」として解説してある。無理もない)。つまり、『詳説世界史』は早慶レベルの過去問演習の後の答え合わせの際に参照するには、教科書よりも優れていることが多い。対して、マーチクラスやセンターレベルの過去問を解き進める上では、『詳説世界史』の情報量の多さはかえって邪魔になるかもしれない。以上をまとめると、以下のようになる。

 

[向いている人]

・東大をはじめとする難関国立大、早慶などの世界史で高得点を取りたい人。

・教科書に書いていないことが気になる人や教科書・プリントの矛盾点などを見つけると気になって仕方がない人。

・単に歴史用語を覚えるだけではなく、その原因や背景といったことまで細かく理解したい人。

・世界史の基礎知識はすでにある程度入っている人。

・模試の世界史ではコンスタントに偏差65程度はこえてくるという人。

 

[オススメしない人]

・まだ世界史の基礎が全く身についていない人。

・取り急ぎ、主要な歴史用語や流れだけを確認したい人。

・東大、早慶といった難関校の世界史を解く必要がない人。

・センターレベルの世界史ができれば十分という人。

・論述は必要だが、正直そこまで細かい知識は必要ないという人。

・あまり細かい字がたくさん並んでいると吐き気をもよおす人。

・模試の世界史では偏差50くらいが限度という人。 

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