どうも、週末体調崩していたので更新が遅れました。東大の2014年解説の方も準備中ですが、ちょっと本業の方が忙しいものでもう少しかかります。一週間以内にはUPしたいなぁと思っておりますので、もう少し待ってくださいね。

さて、今日はそんなわけでとりあえず頭を絞らなくてもサクサク書けて、かつできる限りみなさんの役に立つようなことを書こうと思っていたのですが、思いついたのがコレです。

 

「受験までどんな風に何を勉強したらいいですか?」

 

今日はこれについて、大まかな指針を示せればなぁと思っています。ついでに、いくらかの勉強法についても簡単に紹介します。さて、よくあるこの質問なのですが、個別の対応をすることはそれほど難しくありません。普段からその人の力量や授業に対する姿勢、質問の際の勘の良さ(または鈍さ)、志望校、現在進めている勉強の内容などなど、いくつかの質問をこちらからすれば、「ああ、この子ならこれぐらいの勉強をこういう形で進めるのがベストじゃないかなぁ」という絵がある程度は描けるからです。

もっとも、理想を言えば、こうしたアドバイスは後のケアもあわせてすることが大切ですね。たとえば、5月の段階で理想だと思った進め方でも、夏休みをはさんでその人がどんな勉強をしたかによって、9月の段階では理想形ではなくなることもあります。予想以上に学習が進んでいればペースアップを、逆に予定の量がこなせなかったら仕切り直しの調整をしてあげる必要があるのですね。

本当は、この微調整を各受験生が独自に行えるのが最もよいのです。「自分はこれだけのことができるようになった」とか「自分にはまだこの部分が足りない」ということをできるだけ具体的に把握して、そのための対処を練るということの繰り返しを自然に行える受験生は強い。勉強の仕方というものを心得ていますし、こうした自己分析を正確に行える人はその時々の模試の結果にも揺れません。たとえ一時的に成績が落ち込んだとしても、「ここをしっかり補強すれば大丈夫」、「むしろ今回のテストで覚えていないところがはっきりしてよかった」など、自分の力を伸ばす(成績を上げる、ではないところがミソですね)ためのヴィジョンを持っていますから、必要以上には気にしないわけですね。ただ、そうした「しっかりした人」でもやはり我々「教えること」を専門にしている人間とは経験値の差がありますから、不足している情報というのはどうしてもあります。そこをどうやって補ってあげたらいいのかを考えることは、アドバイスをする時の醍醐味でもありますし、気をつかうところでもあります。

 

ただ、上の質問(受験まで何をしたらいいか)に「汎用の答え」を用意しろ、と言われるとこれはなかなか難しいですよね。その人が高1なのか、高3なのか、浪人生なのかによっても違いますし、4月なのか、夏休みなのか、11月なのかによっても変わりますし、目指す目標によっても大きく変わります。ですから、今日お話しするのはあくまでもいくつかのケースを仮定の話として想定した場合、「最低限これだけはやっておくとあとは五分五分で勝負できるんじゃない?」というくらいの内容を示すつもりでいます。主に対象は高校3年生、または来年の受験を見すえた高校2年生に向けてのお話だと思ってください。高校3年生であれば、「自分はそれだけの量をこなしているかな?」というのを目安にしてもらえればいいですし、高校2年生であれば来年のその時期に「あ、最低でもこのくらいのペースでやればいいんだな」といった目安として活用してもらえればと思います。

 

よく聞かれるのですが、「最大でどれくらいやればいいですか」という質問に対しては「ねぇよ、そんなものわw」とお答えします。勉強に上限なんてありませんよ。できるなら体壊さない程度にやれるだけやったらよろしいのです。当たり前のことですが、体壊してしまったら何にもなりませんからね。でも、本当に勉強に上限はないですよね…。マニュスクリプトはさすがに読めますが、曲がりなりにも歴史研究に携わってたくせに古英語もロクに読めなきゃラテン語もダメとか…ほんとに…落ち込むわぁ。やってもやってもキリがないのが学問というものですが、それでも当座の目標達成に必要なラインというものをクリアすることが大切です。高校世界史には幸い、ある一定の枠組みや上限が設定されています。まぁ、どんなにハイレベルな大学でも、『詳説世界史研究』1冊丸暗記できていれば、そうひどいことにはならないはずです。

さて、それではいくつかのケースにわけてどれくらいの量を消化すればいいかを考えてみましょう。具体的な勉強法などは別稿に譲ることにして、まずは分量としてどの程度を見ておけばいいのかを示しておきます。

 

[4月から勉強を開始する場合]

   すでにある程度の通史の履修(半分以上)を終えており、世界史の基礎的知識は頭の中に入っている。

A 目指すのは東大、一橋など論述がメインの難関国公立だ。

 →9月までを目処に以下のものを終わらせましょう。

 ・志望校過去問を過去20カ年にわたり、週1ペースで研究しましょう。

   (月4回だとして、5か月で[夏明けごろ]20カ年分が一周できます)

   ・『詳説世界史研究』、または同レベルの情報量を持つ参考書やプリントを使っての暗記作業。

   ・難関私大向けの問題集(記述式)を少なくとも1冊、できれば2冊。

    :具体的には、簡単なところで『東書の世界史B問題集』、『山川の世界史問題集』、『Z会の世界史100題』あたりは単元ごとに分かれているので使い勝手が良くていいですね。

   ・センター向けのマーク式問題集を1冊。

    :それほどの分量はいりません。駿台の青本(実戦問題集)1周程度で十分かと。

  B 目指すのは早稲田・慶応などの難関私大だ。

    →過去問演習は夏休みに入ってから少しずつで十分です。それまではとにかく通史の把握と暗記に力をさきましょう。9月までに以下のものを終わらせるつもりで。

    ・『詳説世界史研究』、または同レベルの情報量を持つ参考書やプリントを使っての暗記作業。

    ・難関私大向けの問題集(記述式)を2冊(基礎編と応用編)。

     :できれば2周以上行いたい。

    ・センター向けのマーク式問題集を1冊。

     :2度解く必要はないが、見直しに力を入れること。

  C マーチ志望、またはセンターレベルの問題で8割程度をとりたい。

    →9月までに以下のものをつかって通史を抑えましょう。

    ・『詳説世界史B』クラスの学校教科書1冊を丸暗記。余裕があるようであれば『詳説世界史研究』に切り替えも可。

    ・質の良い記述式問題集を1冊、じっくりと仕上げること。

     :解くだけで終わらせず、解きながら特に気になる箇所のまとめや、後で見直せるように問題へのチェックを怠らないこと。できれば、2周、3周と繰り返すと良いですね。

    ・センター向けのマーク式問題集を1冊。

     :同じく、見直しに力を入れること。

 

  全体を通しての注意点

1、見直しが命。

:問題は素早く解く。(論述は除く。大問1問に10分かけるようでは遅い。)見直しにはたっぷり時間をかける。(イメージとしては、大問4つを3040分で解いたら見直しには1時間半。)

2、東大の場合、日本史がメインの時は世界史にかける時間はそこまでこだわらなくてもよい場合もあります。たとえば、『詳説世界史研究』ではなく、『詳説世界史B』をはじめとする教科書で基礎を把握し、残りは問題を解く中で補っていくなど。ただし、これは社会であまり点数を期待していない(英・数・国で点を取りに行く)タイプの受験生に限ります。

3、早稲田や慶応でも、論述のある学部については東大などに準じた形の学習が理想。

    :特に、早稲田の法学部は本格的な論述対策が必要。慶応の場合はもう少し短い形の論述が多いが、経済の論述はデータ解析などの特殊型が主なので、やはり過去問にあたることが望ましい。他にも、短い論述の対策としては前に紹介したZ会の『段階式世界史論述のトレーニング』などや、東大の小論述で練習を積んでおくとよいでしょう。

4、マーチ志望、センター対策の場合はとにかく基礎力(=知識量)をつけること。

:各予備校の模試で偏差62くらいの成績が出るまでは正直なところ基礎的な知識が不足しています。A、B、Cランクの知識で言えばBランクの知識が完全には頭に入っていないです。A、B、Cランクの知識とは、Aランクが一番基礎だとすると「名誉革命」、「ファラオ」、「カノッサの屈辱」、「ハンムラビ法典」、「始皇帝」、「長安」あたりはAランク。Bランクというと「ユトレヒト条約」、「立法議会(仏)」、「鎬京」、「一条鞭法」、「ソロンの改革」あたり。Cランクというと「カルロヴィッツ条約」、「ラシュタット条約」、「アイン=ジャールートの戦い」、「マウントバッテン」、「コムネノス朝」あたりでしょうか。多少手加減はしてる感がありますが。覚えにくいものは挙げればきりがないですね。「ラクナウ協定」とか「呼韓邪単于」とか。要は、ストーリーを構築するうえで必要な要素である、国、王朝、君主、基本的国制、都、戦争、条約、経済・文化のうちメジャーなもの、などを代表的な国や王朝についてうろ覚えでなくしっかり覚えているかどうかということです。マーチやセンター受けるだけならチョーラ朝とパーンディヤ朝の細かい区別をガッツリ覚えている必要はないですし、五代十国のあたりの細かな知識(石敬瑭とか)もいりません。でも、「唐」とか「宋」とか「明」とか言われた時に、建国者や代表的な皇帝、都がうろ覚えでは困る。つまり、そういうことです。

 

   まだ世界史の世の字も入っていない気がする。

:どこを目指すにしても、まずは基礎力が絶対的に不足しています。基本的には①のCのケースをベースとして、急いで世界史の基礎知識の充足をはかりましょう。まだ十分間に合います。入り口として使うものが「詳説世界史B」レベルの教科書ではキツイという場合には、「自分に合う」と感じる教科書や参考書を使っても構いません。ただ、そうした場合でも、できるだけ情報量は多いものを使う方がよいと思います。「覚えていない」と感じていても、実際には何度も見ているうちに体や感覚が「何となく」覚えて、それが選択問題なので効果を発揮したりします。ですが、そもそも情報がゼロではそうした感覚も養いようがありません。「基礎部分だけを覚える」と目標を定めるにしても、まずは一通りの情報に目を通すこと、そして問題集を解くときには解説から目をそらさないことがとても重要です。

 

[10月以降、勉強を進めるのであれば]

   すでに4月から東大などの国公立、早稲田慶応向けの勉強を十分に進めてきた。

・過去問演習を繰り返します。

  :国公立の場合、演習量を増やすのは12月に入ってからでも構いません。直近510年分程度を手厚く、繰り返し演習してみましょう。他校の過去問にもそろそろとりかかかるべきかと思います。基本的には問題演習をベースとして、不足した情報を自分のまとめ教材に書き込む、それを暗記する、苦手箇所をチェックする…を反復することです。その際、必ず自分がどこで間違えたのかや、何点くらいとれたか(配点がわからないときは単純に問題数でパーセンテージ計算でもよい)をチェックしておくことです。1度解いて終わらせず、必ず後で再度解いて前回と比べてみるという作業が必要になります。論述問題については、時間がない場合、あまりにも昔の問題を繰り返す場合には、メモや表、マインドマップの作成で代用しても構いません。とにかく、きちんとした形で「自分の頭を使って整理」をし、「それが正しかったかを確認」する作業を行うことが大切です。

 ・本格的にセンターに取り組みます。

  :センター型の問題集やセンター過去問に取り組みましょう。基本的な目安としては、「実戦問題集2周+過去問5年分×3周(または過去問10年分×3周)」あたりが基本の目安です。これを、大学過去問と同じような手順で進めましょう。ここでも、見直しが命です。

 ・特に見直しておきたい部分だけ、単元別の問題集で復習したり、再度まとめノートをつくるなどする。

  :もうすでに、「書いてまとめる」作業は9月までの段階で終わっています。書いている時間はもうありませんが、どうしても再度関係性を把握したい場合などについてはまとめノートを作ってみるのも良いでしょう。

 ・9月までに解いた問題集の見直しを行う。それが十分にできている場合に限り、力試しに他の問題集を解き進めてみる。

 

 だいたいこんなところですね。1日に社会に取れる時間は2時間といったところでしょう。「週に過去問×2、センター×2、問題集の大問×4程度を解いて、残り二日はまとめの時間」くらいが妥当なのではないでしょうか。(もちろん、やる気になればもっとできますが、他教科との兼ね合い次第ですね。)それでも、「月に過去問×8、センター×8、問題集の単元×4を解いたう上でまとめ」くらいはできますから、12月の冬休み直前ごろまでには「過去問20年分(10年分×2)、センター20年分(10年分×2)、問題集の単元×12にプラスしてまとめや暗記をする時間」がとれることになりますね。あとは、連休や冬休みを利用してペースを巻いていけば、通常のペースで勉強したとしてもかなりの分量の勉強をこなすことができるはずです。その上で、センターが終わる前後からさらに2次試験に向けて大学過去問を繰り返すという作業になります。授業がある場合はその授業を効果的に使うと消費時間が節約できます。大切なことは、継続して、定期的に、大学過去問とセンター過去問やマーク問題集を交互に進めていくことです。いっぺんにやろうとすると必ずムラができます。

正直に言えば、この段階では塾はおすすめしません。塾は「わからないことを紐解く」、「知らないスキルを教わる」ための場所で、「自分の中に情報をインプットし、定着させる場所」であることは稀です。通常、人はスキルを教わってもすぐには活用できません。それを活用できるようになるにはいくらかの時間が必要になるわけで、10月を過ぎた段階でスキルを与えられるくらいなら、一つでも多く自分の中に情報をインプットする時間を確保するべきです。ただし、以下の条件に合う人、または塾に通っていることで自分の力が着実にレベルアップし、役に立っているという人はこの限りではありません。

 

 ・すでに「暗記」の段階は概ね終了したので、あとは「考えを練る」ことや「解答にいたる思考のプロセスやエッセンス」の方を特に重点的に学習したい。

 ・ある程度は「暗記」できている。そのため、塾で授業を聞いたり、問題を解いたりしているうちに自分が忘れていた箇所を自然に思い出すことができ、自分で勉強するよりも効率がいい。

 ・正直、全く理解できない部分があるので、とにかくそのわからない部分をすっきりさせないと前に進めないので塾で解説してほしい。

 

このような場合には、ある程度インプットのための時間を捨てても塾に通う意味はあるかと思います。

 

   9月までさぼっちゃって、まだ全然準備できてないよ…。

:これは正直やばいです。ちょっと荒療治が必要になります。

 

・まず、センター向けの練習(過去問・実戦問題集・マーク式問題集)は定期的に解く・見直しをする時間を作りましょう。

・用いる教科書はやはり「詳説世界史B」クラスの学校教科書が良いでしょう。その上で、試験に頻出の「お前、ここは覚えていないとさすがにやばいだろう」というところだけはみっちり覚えましょう。具体的には、古代ローマ・ギリシアとか、中国で言えば秦・漢・唐・宋・明・清あたり、近代史で言えば絶対王政・啓蒙専制君主・英仏米革命・ナポレオン・帝国主義、現代史なら一次大戦・世界恐慌・二次大戦あたりでしょうか。基準がわからなければ、学校の先生や塾の先生、世界史のよくできる友達に「ここだけは覚えろ章」をピックアップしてもらいましょう。そして、その他の部分は太字だけ覚えて話の流れを理解したらあとはシカトしましょう。

・その上で(あるいはそれと並行して)、「ここだけは落としたくない」大学の過去問を重点的に学習しましょう。各大学には大学ごとの、さらに学部がわかれている場合には学部ごとの設問の特徴のようなものが多かれ少なかれ存在します。それをしっかり把握していると、余分な労力を極力使わずに必要な部分だけをピックアップして強化することもある程度は可能です。ただし、その場合以下の3点に注意してください。

 

 A:「落としたくない大学」とは第一志望の大学とは限りません。たとえば、「第一志望に合格できなければ浪人も辞さず!」と思っている場合には第一志望の大学に重点をおいて勉強するので良いのですが、もし「どうしても現役で!」と考えている場合にはたとえば「この大学だったら行ってもいい第2志望、第3志望の大学の過去問を重点的に学習」という安全策もなくはないです。9月までの段階で全然勉強していないという前提であればむしろアリでしょう。

 B:科目ごとの相性にも気をつけましょう。たとえば、ある大学の社会の過去問を重点的に勉強して、「よし!世界史はばっちり!」と思ったらその大学の英語がどうしても苦手で、「別の大学の世界史をやっておけばよかった…」なんていうことは十分にあり得ます。どの大学の過去問を重点的に学習すればよいのかということは、世界史だけではなく、総合的に判断しましょう。

 C:以上の戦略はセンターについては度外視していることを忘れないでください。もし、一部の単元や項目だけに特化した学習の仕方をするのであれば、それとは別にセンター向けの勉強を少し厚めにやっておきましょう。もちろん、センターを受験しないというのであれば、その限りではありません。

 いずれにしても、この方法で身につくのは世界史のほんの一部に過ぎません。ちょっと視点を変えた問題や、過去問とは全く違う傾向の問題が出てきたときには完全にお手上げです。余裕が出てきたら、できる限り他の学校、単元、問題集にも手を出して、インプットの幅を広げることを忘れないでください。

 

 さて、以上になりますが、いかがでしたでしょうか。かなり簡潔にまとめたので十分に書けなかった部分もあります。特に、具体的な勉強法ですね。問題集はこんなふうに進めようとか、できなかったところのチェックはこうするとあとでわかりやすいとか…時間のある時にその辺の工夫もあげていければと思います。人によって状況は様々でしょうが、その時その時で適した学習法は異なってくるかと思います。遮二無二学習を進めることが何より大切ですが、少し余裕ができたら自分のすべきことを整理してみる時間も大切だと思います、頑張ってください!