50、ドイツとイタリアの統一:https://youtu.be/KZKhD0uJJ4k
51、フランス第二帝政と第三共和政/パクス=ブリタニカ:https://youtu.be/8WCH0IEokLw
52、東方問題とロシアの改革:https://youtu.be/XCehuGx7f8o
53、帝国主義:https://youtu.be/uKkMnT5FthI
54、ラテンアメリカ諸国の独立:https://youtu.be/6QiAG80wVyw
大学受験向け世界史情報ブログ
【難関大】
十字軍の経路については、たいていの教科書や資料集には載っています。ですが、たいていの場合、第1回から第7回まで一つの図にいっぺんにまとめられているので、いまいち特徴がつかみにくいということもあるかもしれません。ですが、これらの経路は時々早慶の問題などで出題されることもありますので、だいたいの特徴はとらえておく必要があります。十字軍のだいたいのポイントは以下のような感じです。
もっとも、十字軍のうち、第2回と第5回が出題の対象となることはあまりありません。最近は「フリードリヒ2世とイスラーム」といった視点も大事になってきているので、今後、第5回の出題頻度が増す可能性はゼロではありませんが、今のところあまり見ていません。また、十字軍の軍事活動自体が以前と比べて出題の機会を減らしてきている気もします。(背景などはまだまだ出そうですが…。) ですから、注意するとすれば第1回、第3回、第4回、第6回、第7回の経路に注意を払う必要があります。
これらのうち、一番わかりやすいのは第4回です。ヴェネツィアが主導し、最後はコンスタンティノープルを落としてラテン帝国を建てた十字軍なので、経路はヴェネツィア→コンスタンティノープルの1本道です。余談ですが、ラテン帝国の建国により滅亡したビザンツ帝国の諸侯は周辺に亡命政権を建て、そのうちのニケーア帝国のミカエル8世がビザンツ帝国を復興して最後の王朝となるパラエオロゴス朝(パレオロゴス朝)を建てていきます(1261年)。
次に比較的確認しやすいのは第6回・第7回の十字軍です。これらはどちらもフランスのルイ9世(聖王)によって行われ、アイユーブ朝からマムルーク朝に代替わりする時期の北アフリカに行っていますので、「フランス→北アフリカ」のラインを作っているものを選べばOKです。第6回はエジプトを、第7回ではチュニスを攻撃している点には注意が必要です。
意外に区別がつきにくいのが第1回・第3回・第6回十字軍の経路なのですが、わりとはっきりした区別のつけ方があります。
まず、第1回十字軍ですが、最終的にイェルサレムを占領してイェルサレム王国ほかのキリスト教国を建てることになるので、イェルサレムに到達しているのが第1回十字軍です。(ほかにイェルサレムに到達する十字軍は、アル=カーミルとの交渉でイェルサレムを一時的に返還されたフリードリヒ2世の第5回十字軍だけですが、上述の通りあまり出て来ません。) また、参加するのは神聖ローマ帝国とフランスの諸侯なので、現在のフランスやドイツの内陸部が起点となっていることも確認できます。
一方、第3回十字軍は一見すると第1回と区別がつきにくいのですが、イギリス王リチャード3世の参加した十字軍ですので、起点としてイギリスが入っているかどうかではっきり区別がつくと思います。
ついこの間の話になりますが、2023年12月に、山川出版社の『世界史用語集』(全国歴史教育研究協議会編、初版2023年12月)が新しくなり、現在(2024年度)の高3が使用している教科書「世界史探究」に準拠したものに変更されました。
その結果、旧来の教科書「世界史B」(昨年度の高3が使っていた教科書)に合わせて作られていた同社の「世界史用語集:改訂版」(全国歴史教育研究協議会編、第1版第1刷2018年12月)とはかなり表記の異なる箇所も見られることになりました。これは、教科書「世界史探究」と「世界史B」の記述内容にかなりの変更が見られたので当然といえば当然のことです。
ただ、教科書の表記が変わったからと言って、すぐに現場が対応できるかといえば、もちろんそんなことはありません。そもそも、新しく教科書に載る語や表記や表現の変更になる語だけをとっても膨大な数にのぼりますので、実際には現行の高3でも旧表記のままで学習していたりする場合は少なくないと思います。そもそも、新しい用語集が出版されたのが2023年12月ですからね…。教科書新しくするなら用語集も同時に新しくしてくれないと(切実)、古い用語集を使わざるを得ないですから、旧用語集を高2のころからずっと使っていますという現高3も多いものと思われます。
また、「もう1年頑張ろう!」ということで再チャレンジを目指す昨年度の高3の場合には、そもそも「世界史B」で学習しているので、より不安も大きいかと思います。一応、大学入学共通テストでは旧課程と新課程について考慮はしてれているようです(詳しくは大学入試センターをご覧ください)が、模試や各大学の個別試験までは(対応してくれるところもあるかもしれませんが)その限りではないかと思いますので、やはり心配だという方も多いのではないでしょうか。
そこで、本稿では新しい山川の用語集は、旧版の用語集と比べてどこが違うのかということをチェックしてみることにしました。(ヒマなことをしよる。) で、チェックしてみた結論から申し上げますと「旧課程の世界史Bで学習していたとしても、基本的には新しい世界史探究に対応できるし、そんなには困らない」(多分)です。まぁ、いくつか新しい語は出てきていますし、表現や表記の異なるものがあったりしますが、その多くはこれまでにも「教科書や参考書などの片隅やコラム、新説などとして紹介されてきたもの」であったり、「そもそもの出題頻度がそれほど高いとは思えない語」などが大半な気がします。中には、それなりに重要でそれなりに出題されそうな語もありますが、それらも新しい問題集を解いたり模試を何回か受けたりしていくうちに多くは修正されていくもののような気がします。
ですから、これまでしっかり勉強していたのであれば「そこまで心配することはないかなー」と思うのですが、最近は史資料問題が増えてきているので、史資料に自分の知らない表記で書かれた場合にその後が何か判断がつくだろうか、という点はちょっと気を付けたい点ですね。特に衝撃的だったのはやはり「アクエンアテン(旧イクナートン)」でしたね。これが史料問題で旧名示さずに出てくると怖いですね。他には「アンラ=マンユ(アーリマン)」あたりも多少怖さがあります。まぁ、たぶん問題作る側もその辺は考慮して注意書きつけてくれるんじゃないかなぁとは思うのですが。
また、新語や表現の違いをチェックすることで新しい教科書「世界史探究」がどのあたりを重視し始めているのか、つまり「推し」ているのかなどがある程度見えてくるかな、とも思いました。そういう意味では、より学習を深めたり学力を高めたいと思うのであれば、お金に余裕さえあれば、旧版を持っていたとしても新版は「買い」かなと思います。
もちろん、これまで世界史は全く勉強していなかったという場合には、新課程で進めていく方が無難ではあります。ただ、話の流れだけを取るなら、正直「世界史探究」よりも「世界史B」の方が高校生には把握しやすいかなーと感じますけどね。「世界史探究」は、縦割りの地域史や各国史を脱却して各地域の関係性やダイナミズムをつかんで欲しいという意図は感じるし、大切なことだとも思うのですが、あっちに行ったりこっちに行ったりで最初に学習する人にとっては分かりづらいんではなかろうか、と。何と言うか、大学で期待されるような内容を高校生に持ってきちゃった感が否めません。「複数のものの関係性をつかむ」という行為は、まず初めにそれぞれを構成する個がどういうものかを把握しないと難しいのではないかと思うので、そういう意味では「世界史B」の構成の方がつかみやすい気がします。
脱線しましたが、本稿では新版と旧版の山川用語集をチェックして、新語や表現に変化のあった語をいくつかの項目にまとめました。ただ、目的は「世界史B」と「世界探究」の記載の微妙な違い・傾向把握をすることにあるので、チェックした全ての用語は載せず、個人的に気になる語や注意したいなと思う語(「傾向把握の上で重要かな」と感じたものや、「これまでと比べて、これからちょこちょこ出題頻度が増えてくるかもしれないなー」と感じたもの)のみをまとめてあります。その中でも特に気になる語については赤字で示しました。(私の主観的なもので、用語集の色分けとは無関係です。)
また、チェックしたのは見出し語(用語)のみで、用語の解説や中身については基本ノータッチです。また山川用語集の「例のアレ」(用語の後ろにある①~⑦:「世界史探究」教科書7冊のうち何冊に登場するかをしめしたもの)についてはガン無視しましたw 自分、そもそもあれあんまり重視していないので…。出るもんは①だろうがわりと問題に出るし、出ないもんは⑦でも滅多に問題に出ませんもん。出題傾向はたくさん実際の問題にあたって経験値積んだ方が、より実態に近い感覚が身につく気がします。でも「例のアレ」のことは大好きですw
チェックした用語のうち気になるものは、以下のような項目ごとにまとめてみました。順番については、各項目内では基本古い方から新しい方に流れていますが、編集の過程で多少順番が前後しているところがあります。
1、新語
2、旧版と表記の仕方が完全に変わっている語
3、旧版に存在したが、表現の仕方や初出の時代・文脈などに大きな変更がある語
4、旧版と表記が変わっているが、旧版表記も併記されている語
5、旧版ではいくつかの項目が設定されていた箇所を、一つのまとまりとしてまとめたもの
6、概念としては知られていたが、あらためて一つの語として登場させて意識づけを図ったと思われる語
7、旧版の語が消えるなどして、全体的に記述量や説明量が減少している箇所
8、第19章「冷戦の終結と今日の世界」における目立った新語・新表現
ご注意いただきたいのは、「一応チェックはしましたが、見逃しや間違いはあるかもしれないということ」と、「出るかも出ないかもとか、問題があるとかないとかは、基本私の主観なのであって何の根拠も保証もないこと」ですw また、個々の語やまとまりについて気になったことや注意が必要なことがある場合には、ところどころ解説を入れてあります。
【① 新語】
:上にも書いた通り、ここで紹介する新語は個人的に気になった一部のみで、これ以外にもたくさんあります。ざっと見て、新語だけでも100以上はありました。ただ、そのうちの多くは必ずしも「見たことも聞いたこともない!」というタイプのものではなく、これまでも教科書の中で別の表現で書かれていたり、資料集には載っていたり、参考書や問題集には言及されているものだったりしました。
・ウルのスタンダード
・黄老の政治思想
・「インド化」
・武人政権《朝鮮・日本》
・銀経済《ユーラシア大陸》
・オルトク商人
・チンギス統原理
・スンダ海峡ルート
・「コロンブス交換」
・エスナーフ
・絹製品《イラン産》
:従来、絹については中国産・シルクロード関連やビザンツ関連では書かれていたが、イランのものが用語集で強調されてはいなかった
・農村経済の活発化《ムガル帝国期》
・松前藩
・「四つの口」
・中世からの連続性《ルネサンス》
・スペイン1812年憲法(カディス憲法)
・通信革命
・公衆衛生
・アラビア語による文芸復興運動
・輸出入の逆転《インド》
・回民の蜂起
:旧版は「回民」のみで、蜂起に関する記載は無し
・アジア域内交易
・アヘンの輸入代替化
・甲午改革
・閔妃殺害事件
・満洲
:旧版は満州(洲)の項目のみ「洲」の字が示されるのみで、その他はすべて「満州」表記であったが、新版ではこれが全て「満洲」表記にあらためられている。
・「日本の工業化」、「金本位制確立《日本》」、「アジア間交易」
:全般に、19世紀日本の経済状況のディテールに関する新語が並ぶ(ただし、①~②程度)
・立憲派
・「茶プランテーション」、「本国費」、「綿紡績業《インド》」
:全般的に、19世紀インド統治・経済に関する新語が並ぶ(②~③程度)
・トルコ民族主義
・「スペイン風邪」
・1919年革命
:エジプトのサアド=ザグルールによる闘争が追記
・関税自主権の回復《中国》
・ムスリム同胞団の非合法化
・輸入代替工業化
・戒厳令《台湾》
やはり、経済的な交流、システムがこれまで以上に丁寧に説明されるようになった箇所が個人的には気になります。また、特殊なところでは台湾の戒厳令が現代史の方でも登場してきますので気になりますね。その他については、これまでにも見られたもののうち、あまり受験生には「問題に出る用語」として意識されていなかったものが、用語としてしっかり示された場合などは気になりますね。すでに「グレートゲーム」などは周知されているのでいいかなと思いますが、「ウルのスタンダード」あたりは人によっては意外に盲点になる気がします。
【2、旧版と表記の仕方が完全に変わっている語】
(または似た言葉はあるが内容に大きな変化がある語)
:これまでにも登場していた語のうち、大きく表記が変更になった語がいくつか見られました。それらのうち、気になったものを挙げてみます。
・アメンヘテプ4世(アクエンアテン)
:旧版ではアメンホテプ4世(イクナートン)で、大きく異なります。
・写本絵画
:旧版の「ミニアチュール」の語は基本的に消えたが、「細密画」の語はところどころに残っています。もともとヨーロッパに由来する「細密画」や「ミニアチュール」の語をイスラーム世界の写本絵画にあてはめることが適切ではないと考えられたものと思われます。
・中央ユーラシア型国家
:旧版に「中央ユーラシア」はありますが、騎馬遊牧民が形成した国家形態としての中央ユーラシア型国家の説明とは全く異なりますので、新語として扱うべきものです。
・ガージャール朝
:旧版ではカージャール朝です。カッコで(カージャール朝)ともなかったので、一応今後は注意が必要かと思います。
【3、旧版に存在したが、表現の仕方や初出の時代・文脈などに大きな変更がある語】
:用語としては旧版からありましたが、「世界史探究」の全体的な傾向を踏まえて、表現の仕方・説明文・登場する時代や文脈などに変更がある語がいくつか存在します。それらのうち、気になったものを挙げてみます。
・荘園
:これまでは唐の時代で出てきていたものが、魏晋南北朝時代にまでさかのぼって出てきており、唐の時代でも再度登場します。全体的に「世界史探究」では魏晋南北朝時代と隋・唐時代の連続性を強調する記述に変わっていますので、それにともなう変化であることには注意が必要です。
・香薬(香辛料・香料)
:新しい表現で、記述に変化が見られます。おそらく、「香辛料」としてしまうと胡椒をはじめとするスパイスだけを想像していまい、乳香や没薬といった樹木の樹脂からとれる香料を想像しにくいところから表現を変化させたのではないかと勝手に推測しています。
・三仏斉
:内容が大きく変化しました。旧版の記述では原則としてシュリーヴィジャヤを含むもの(または同一のもの)ととらえられていた記述が、新版では基本的には別のもの(シュリーヴィジャヤのあとをうけたもの)としてとらえられており、「ザーバジュ」というアラブ側の呼称なども紹介されています。
・「塩・茶の専売」(宋代)、「塩の専売《元代》」
:これまでは前漢の武帝の塩・鉄・酒の専売や、唐末の黄巣の乱にからんでの塩の専売という文脈で書かれていた塩の専売が、宋代や元代についても別の文脈で登場しており、宋代については茶の専売についても言及されています。
【4、旧版と表記が変わっているが、旧版表記も併記されている語】
:旧版と表記が変わっていますが、カッコ内で旧版表記が併記されている語です。旧バージョンで書いたとしても特に問題はないと思われます。いくつか例を挙げてみます。
・アンラ=マンユ(アーリマン)
・モンゴルの君主名や称号
:たとえば、新版では「オゴデイ(オゴタイ)」などとなっていて、モンゴルの君主の名前は微妙に変えられています。また「カン(ハン)」と「カアン(ハーン、大ハーン)」の違いなどが明記されるなど、モンゴル関係は細かな変化が見られます。
・全国三部会(三部会)
:旧版では「全国三部会ともいう」となっていました。新版では説明の中で地方三部会が明記されていますので、それとの違いを明確に示すことを意図したものと思われます。
・「スルタンの奴隷」(カプクル・デウシルメ制)
:旧版にあった「デウシルメ」の代わりに登場しましたが、旧版では「スルタンの奴隷」という呼称はありませんでしたので新語となります。また「カプクル」も新語です。
・行商(公行)
・カトリック対抗(対抗宗教改革)
:旧版では「対抗宗教改革(反宗教改革)」となっていましたが、また新しい表現となりました。
・教案(仇教運動)
:旧版では「教案」という語は全く示されていなかったので新語となります。
【5、旧版ではいくつかの項目が設定されていた箇所を、一つのまとまりとしてまとめたもの】
:「世界史探究」では、全体的な流れや関係性を把握させたいという記述が目立つことから、用語集の方でも細かい知識・用語は極力説明文のなかにおさめてしまい、用語数を削減しようという傾向が見て取れました。具体的な例をいくつか挙げてみます。
・ルイ14世の対外戦争
:旧版では独自の項目として登場していた「南ネーデルラント継承戦争」、「オランダ戦争」、「ファルツ戦争」が消え、説明書きの中でまとめて紹介されました。従来よりも、これらの戦争がルイ14世の対外戦争の一環であったことがはっきりわかる記述にするとともに、個々の用語の量や重要性を減らして簡略化することを意図したと思われます。
・対仏大同盟
:旧版では第1回、第2回、第3回対仏大同盟が別項目で示されていましたが、一つにまとめられて簡略化されました。ただ、こちらについてはそれぞれの回の対仏大同盟が当時の政治状況と密接に関連していたこともあり、記述が簡略化されたからと言って個々の設問の内容が簡略化されるかといわれると疑問です。今後も結構細かい内容まで突っ込んだ設問が私大などでは出題される気がします。
・ナポレオン3世の対外戦争
:旧版では「クリミア戦争」、「アロー戦争」、「イタリア統一戦争」、「インドシナ出兵」などが別項として表示されていましたが、一つにまとめられました。(ただし、クリミア戦争、アロー戦争、イタリア統一戦争などは、新版でも別の文脈では独自の項目として出て来ます。)
・産業革命の波及
:旧版では「ベルギー産業革命」、「フランス産業革命」、「ドイツ産業革命」、「アメリカ産業革命」、「ロシア産業革命」、「日本産業革命」とそれぞれ項目が建てられていたものが、一つにまとめられて簡略化され、説明文の中で解説されることになりました。
【6、概念としては知られていたが、あらためて一つの語として登場させて意識づけを図ったと思われる語】
:これまでも教科書の中で文章として表記されてきたものを、あえて一つの用語として提示し、説明することで、特定の視点やとらえ方があるんだよということを意識づけさせようとしたと思われる語が散見されました。個人的には非常に良い改善だと思います。いくつか例を挙げてみます。
・西域の文化(ポロ競技・胡服・粉食)
・古文の復興《唐》
・ポーランド王兼任《ロシア》
:旧版では「ポーランド王国」の項目の中で説明されていた内容が強調されました。
・都市交通網の整備
:旧版には「地下鉄」という項目で少し言及されています。
・マムルークの一掃
:旧版では「マムルーク」の項目の中で解説されていました。
・ロシア領トルキスタン
:ロシアの南下の文脈では一つにまとめられました。ただし、新版でも「ブハラ=ハン国」・「ヒヴァ=ハン国」・「コーカンド=ハン国」は別の箇所(ティムール朝の滅亡の箇所)で独自の項目として示されています。
【7、旧版の語が消えるなどして、全体的に記述量や説明量が減少している箇所】
:6とは逆に、旧版よりも用語や説明が減少している箇所が何カ所かありました。ものによっては今後重要度が減少したり、特定の用語が出題から姿を消していく可能性があります。いくつか例を示します。
・19世紀社会主義の形成と発展を示した箇所
:ラサール、ベーベル、バクーニン、皇帝狙撃事件などが見出し語としては消えるなど簡略化されました。
・イギリスのインド支配におけるいくつかの用語
:ラクシュミー=バーイーやインド省などの用語が消えましたが、新語が増えるなど重要度の低下は特に見られません。
・フランスによるベトナム支配の過程を示した箇所
:トンキンやアンナンなど細かな地名が消え、インドシナ出兵も「ナポレオン3世の対外戦争」の説明文の中にまとめられるなど、全体に簡略化されました。こちらも、ベトナム植民地化の過程の重要度が減じたというわけではなく、従来と比べるとトンキンやアンナンなどの個々の地名にはこだわらなくなる可能性があるという程度かなと思います。
【8、第19章「冷戦の終結と今日の世界」における目立った新語・新表現】
:19章については、現代史に関する部分になります。正直こちらについては入れ替わりが激しいので、時事的要素の強いものだと思っておいた方が良いかと思います。例えば、旧版には存在しなかった「トランプ」や「バイデン」の語は、教科書に登場する前から実際の入試の場面では登場していますので、同様に用語集には載っていないけれども、ニュースなどを通して知っておいた方が良い用語は日々変わってきていると思った方が良いと思います。また、逆に今回は用語として登場しているけれども、しばらくしたら消えていたという用語もあるかと思います。
新語のうち、個人的に気になる項目は「従属理論」ですかね。ウォーラーステインの近代世界システム論と関連する語ですし、ついこの間東大でオリエンタリズムやサイードなんかが出てきたことを考えると突然「ポッ」と出てきたとしてもおかしくはありません。
「問題が作りやすそうだな」と感じる項目としては、「従属理論」のほかに「南巡講話」、「戒厳令解除」、「ロヒンギャ問題」、「フェアトレード」、「シリア内戦」、「LGBT」あたりでしょうか。特に、台湾は最近HOTですし、戒厳令については上記の通り、新用語として2カ所出て来ましたのでちょっと気になります。地域や時代の流れをとらえるという意味では「経済の自由化《インド》」、「社会主義体制の崩壊《アフリカ》」は重要なテーマを含んだ良い項目だと思います。
また、時事的知識として当然おさえておくべき内容としては「トランプ」、「バイデン」、「習近平」やロシアのウクライナ侵攻がらみ、それから「人工知能(AI)」や「持続可能な開発目標(SDGs)」あたりでしょうか。今は猫も杓子もSDGsで、学校でも散々「探究!探究!」って言ってる中で良く出て来ますから、多分、今の中高生はご存じでしょうね。「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)」なんかは今の受験生は当然ご存じでしょうが、5年後、10年後になるとインパクトが薄れていくかもなので、その頃の受験生は意外に苦労するかもしれませんね。
旧版から表記が変更された語については、ほとんどのものは大きな違いは見られませんでしたが、「女性参政権獲得運動」だけはやはり気になりました。旧版でも存在した女性参政権(アメリカ・イギリスなど)の他に別項として現代史に設けられています。東大2018年大論述をはじめとして、女性の権利拡大や参政権獲得に関する設問はあちこちで出題頻度を増しているので、引き続き注意が必要ですね。