長らくご無沙汰をしております。前回の記事をあげてからもう半月もたっていますね…、申し訳ないです。本業の方がもう無茶苦茶忙しかったもので。そのくせ、「どうせ書くならちょっとは手間暇かけたものを…」とか考えていたものですから、遅くなってしまいました。見捨てずにご覧くださり、ありがとうございます。
さて、もう11月も半ばになり、センター試験が近づいてまいりました。この時期になると毎年のことですが「センターの勉強の仕方ってどうしたらいいですか?」とか「頑張って勉強しているのですが、半分くらいしか取れなくて、どうしたらいいかわからないんです…」などの質問や相談が増えてきます。
ところが、センターの勉強って、実際のところどこまでやったらいいのか判断がつかないことが多いんですよね。『詳説世界史研究』では詳しすぎると思うし、かといって学校で使うような教科書だけでは不安だし…。文系の受験生であれば二次試験を見越して思い切り深く勉強するというのもありかと思いますが、「理系でセンターだけ社会が必要で…」といった受験生の場合はなおのことどこまでやればどれだけ点数がとれるのか判断がつきません。学校や塾の先生は経験上から「まぁ、教科書をやって、過去問を解いていればそれなりにとれますよ、大丈夫!」というけれども、数値として実際に分析した人はそう多くないと思います。(もっとも、センターに限って言えば、それが基本の学習法になるわけですが)
そこで、今回はテーマを絞ってセンターの過去問を分析してみることにしました。そのテーマとは、「ぶっちゃけ、『世界史B(東京書籍)』の教科書の太字部分だけを覚えたとしたら何点くらいセンター世界史でとることが可能なのか?」ですw 何というか、ものすごくしょーもないというか、省エネな発想のテーマだなぁと思うのですが、実際にデータ化してみないと自信をもって勉強できないと思うんですよ。2次試験であれば「詳説世界史研究をがっつりやりこめばまず大丈夫」という確信が持てるわけですが、センターを勉強するときの「世界史B(各社)」にはそうした確信めいたものが欠けている気がします。自信をもって勉強できる、自分の目標に確信が持てる、というのはモチベーションをキープする上でとても大切なことだと思いますので、あえて調べてみることにしました。これで「教科書だけやっておけば間違いなくセンター試験は大丈夫!」なんていう結果が出ちゃうとそれ以上勉強しようとしないめんどくさがりな部分を助長しちゃいそうな気もするのですが、まぁそこは自己責任でいいかなとw
今回の分析手順ですが、以下の作業を行いました。
① センター過去問3年分(本試験のみ)を分析し、「どの知識があればその問題を解くことができるか」に絞って検討した。その際、「この知識があれば問答無用でその設問は解ける」という知識を「確定条件」とした。また複数の知識が必要な設問については「これらの知識がそろえばその設問が解ける」という知識を抽出し、これらを「複数条件」として表を作成した。
② 作成した表を見ながら、その知識が「世界史B(東京書籍)」に太字で示されているかどうかを一つ一つチェックした。
③ 太字で示されている知識のみでほぼ説くことができる問題に〇をつけ、その合計点を出した。
④ ①~③の手順で作った表を単元別、テーマ別で整理し、どの単元、どのテーマからの出題が多いかを別の表にまとめた。
以上になります。やってみて本当に、心から思ったことは「過去問10年分とかにしないでよかった…orz」ということです。本当に、心折れるかと思いました。腰が痛いです。
ただ、注意していただきたいのは、手間暇かけている割にこのデータは必ずしも信用のおけるものではありません。特に、以下の点には注意をしていただきたいと思います。
① 「太字で出ている部分だけ」を「丸暗記」すれば解ける、というものではない。
:これはどういうことかと言いますと、たとえば、2016年の設問1の分析では、「大陸封鎖令を出したのはナポレオン1世(3世ではない)」、「社会主義者鎮圧法の時はヴィルヘルム1世(2世でない)」、「則天武后が変更してつけた国号は周(新ではない)」という三つの知識が示してあり、これらには太字で載っていたことを示すピンク色が私の作成した表(後ほど示します)には示してあります。これは、実際に教科書を見たところ、「大陸封鎖令」、「社会主義者鎮圧法」、「則天武后」、「周」などが太字で示してあったからですので、間違いではないのですが、かといってこれらの用語を「丸暗記」すれば解けるということではありません。教科書には「社会主義者鎮圧法が出された時の皇帝はヴィルヘルム1世である」と太字で書かれているわけではありませんので、こうした太字の知識の周辺にある「内容、意味、意義、関係性、時代、時系列」などは自分で把握する必要がある、ということです。もっとも、これらの多くは太字の知識の周辺にしっかり書かれていますので、そこまで心配する必要もありません。要は「用語の丸暗記ではなくて、内容もしっかり理解しないと解けないよ」ということです。
② 出題頻度を単元別、テーマ別に示したものはものすごくテキトーな数え方
:これは仕方のないところでもあります。例えば、同じく2016年の設問2は「漢の武帝の時代に砂糖の専売は行われていない(行われたのは塩・鉄・酒)」、「十分の一税は(聖職者に対してではなく)農民に課せられたものである」という二つの知識があれば解ける設問ですが、この二つの知識は何に分類すべきでしょうか。武帝の政策ですから政治と言えば政治ですが、専売制ということは経済的な要素も入ってきます。また、十分の一税は税金ですから社会・経済に含むべきものかと思いますが、一方で宗教的な要素も濃いです。こうしたものを分類するにあたって、基本的にその分類は私の主観と気分で決めていますので、かなりアバウトな基準で分類されています。(ちなみに、それぞれ「政治」と「社会経済」に分類しました。)
また、たとえば「義浄」の「南海寄帰内法伝」などにいたっては、そもそもこれを宗教に分類するのか文化に分類するのかだけではなく、中国文明の方に分類するのかインド文明の方に分類するのかでも問題となります。「両方数えればいいじゃない」とおっしゃるかもしれませんが、そんなめんどくさ…いえ、そうしますと設問によって多くの要素を含むものと、一つの要素しか含まないものがあり、総計するとかえって全体の傾向を把握しづらいものにしてしまう可能性があります( -`д-´)キリッ。
以上の理由から、かなり強引に分類しましたので、数字はかなりアバウトなもので、あくまでも大まかな傾向を示すにすぎないのだ、ということには注意をしてご覧いただければと思います。
[2014年~2016年世界史本試験:各設問を解くのに必要な知識一覧]
以上のように、「世界史B(東京書籍)」の太字の知識で手に入る知識をピンク色で示した上で、ほぼそれだけで解ける問題をチェックしたところ、2016年は77点、2015年は65点、2014年は72点取れることがわかりました。案外少ないと感じるかも知れませんが、この計算は「確実にその知識だけで解ける」設問に絞っており、「太字の知識だけで2択までは絞れる問題」などは計算に入れておりません。当然、2択まで絞れる問題の中にはいくつか実際に得点できる問題もあることから、実際に太字の知識のみでとれる点数はもう少し多くなるはずです。また、教科書で太字の部分を覚える際には当然周辺の知識も入ってくることから、おそらく「世界史B」の教科書だけでもしっかり勉強すれば8割以上とれる、というのは間違いではないと思います。「確実に95点以上を狙いたい」という人はともかく、「とりあえず急ぎで何とか8割以上をキープしたい」という人には「教科書+過去問(またはさらに+実戦問題集)」といった勉強法はアリなのではないでしょうか。
さて、それでは直近3年のセンター試験はどういった単元と内容から出題されているのでしょう。それを示してみたのが下の表です。
こちらは、私が感じていた以上に近現代史が厚くなっているということが見て取れました。その他は、伝統的な古代世界と、中世・近代ヨーロッパあたりが多いですね。もっとも、これは設問の数ではなく、「設問を解くのに必要となった知識」がどこの分野に属するものかを分類したものになりますから、この割合がそのまま点数の割合になるわけではありません。ただ、全体的にテーマとしては政治・制度史が中心で、各国の成り立ちや、君主、行政制度、拡大発展と衰退といったメインパートから出題されることが多いようです。
以上の分析から結論を導きますと、「世界史B(東京書籍)」の太字の知識だけでもセンターで7~8割はとれるだけの要素はあるらしい、ということが言えると思います。あとは、自分がどの程度の点数を欲しているのか、文系なのか理系なのか、急いでいるのか余裕があるのかなどによって勉強方法を変えていくとよいのではないでしょうか。より高得点を狙いたいというのであれば、2次試験も見越してはじめから『詳説世界史研究』をみっちり(もっとも、今から開始して来年の春、というのでは分量的に厳しいです。すでにこのスタイルで勉強してきている人向けですね。)とか、または「世界史B」教科書ベースでセンター過去問だけでなく早慶クラスの過去問や問題集を合わせて進めるとか、いろいろやり方はあると思います。自分自身にとって一番素敵だと思える勉強スタイルで頑張ってください!