【定期考査】
中国の官吏任用制は導入時期とセットでおさえておくと実際の問題を解くときに対応しやすくなります。
郷挙里選‐前漢(武帝)
九品中正法‐魏
科挙(選挙)‐隋
もちろん、官吏任用制に関してはたとえばそれぞれの制度の内容の違いや、九品中正法が門閥貴族を生み出す結果につながったこと(cf.「上品に寒門なく、下品に勢族なし」)や、「科挙」という名称が定着するのは唐の時代で隋のころは官吏任用を意味する「選挙」の語で呼ばれたことなど、細かい関連事項もあるのですが、これらのことをしっかり把握するには、意外に諸制度ならびに当時の社会に対する深い理解が必要になることが多いのです。そのため、関連事項まで出題するとなると事前の解説や問題自体が難しくなりすぎてしまいがちで、出題する側からすると出しにくく扱いにくい気がします。(難関校では出題されると思います。また、事前の授業がしっかりできている場合or受験者の側に深い理解を問いたい場合には少し突っ込んだ設問を作ることも可能だと思います。)
一方、「前漢から始まった官吏任用制はなんですか」、「隋で実質的に開始されたといわれる官吏任用制はなんですか」といった出題は一問一答的で出題しやすいですし、ある程度の正答率を期待することができます。(設問としての質が良いかどうかは置いておいて。) また、正誤問題などでも時期と名称をずらせば良いだけなので使いやすいですね。
基本的には隋の頃までの官吏任用制について、特に「郷挙里選・九品中正法(九品官人法)・科挙(選挙)がどの時代に導入されたか」が出題されることが多いのですが、これよりやや頻度が落ちる&出題の文脈が異なるものの、確認しておいた方が良い官吏任用制関連の知識には以下のようなものがあります。
・殿試‐北宋(趙匡胤:太祖)の頃に導入された皇帝による直接試問
・科挙の停止‐元の時代(モンゴル人優位の支配体制下で停止、14世紀初めに復活)
・科挙の廃止‐清末の光緒新政の中で廃止(1905)
これらのうちですと北宋の殿試と趙匡胤の名前は比較的よく出題される気がします。
また、単純に中国の官吏任用制自体に限ると上に書いたものが最低限おさえるべき知識になるのですが、これらの官吏任用制は当時の社会階層の形成(ex. 門閥貴族、士大夫など)や、文化の形成と変遷(ex. 六朝文化、唐代の古文復興運動など)、政治的動向(ex. 前漢武帝期の儒学の官学化、董仲舒、北宋の文治主義など)、海外への影響(朝鮮やベトナムへの導入、ヨーロッパ啓蒙思想家への影響など)など、非常に広い範囲に関連付けられるテーマでもあります。こうした広がりまで把握できているのであれば、かなり世界史に対する理解は深まっていると思います。たとえば、東京大学の2000年大論述などはこのあたりの関連事項の把握が進んでいると取り組みやすいものになりますね。