世界史を学び始めると、必ず登場するのが「時代区分」です。「原始」、「古代」、「中世」、「近世」、「近代」、「現代」といった区分は、歴史の流れを整理して理解するための目安として教科書などに当たり前のように登場します。

ですが、日本史の「奈良時代」、「平安時代」、「鎌倉時代」といった比較的境界が明確な(実際にはそんなに単純なものではないのですが)区分と異なり、世界史の時代区分は明確な境界になる時点がなかったり、地域差などもあったりして、「どこからどこまでが近世」で、「どこからどこまでが近代」なのかなどがつかみづらいということがあるようです。そのため、通史の解説を始めてしばらくたつと「中世ってどこからどこまでですか?」などの質問がかなり寄せられます。そこで、ここでは時代区分がどのような基準でされているかという、だいたいの見取り図を示してみようかなと思います。

もっとも、歴史の区切り方にはさまざまな学説があります。国や地域によって発展の過程が異なるため、完全に同じ時期で区切れるわけではありませんし、ある区切りが絶対的な基準であるわけでもありません。それでも、社会の仕組みの変化に注目すると、おおよその共通点を見つけることができますので、ここではそうした大きな枠組みを示しながら、できるだけ具体的な事例・時代と結びつけてお話していきたいと思います。(あくまでも大きな枠組みですので、一部単純化などがされていますが、ここでは学術的な厳密さよりもある程度の分かりやすさを優先させたいと思います。)

【原始】
(特徴)国家や階級がなく、狩猟・採集を中心とする共同体社会が形成された時代

「原始」とは、国家や身分制度が成立する以前の社会を指します。人々は主に狩猟や採集によって食料を得て、小規模な集団で生活していました。

この時代の特徴は以下のようなものです。

・国家が存在しない
・身分制度がない
・狩猟・採集中心の生活
・小規模な共同体で生活

各地域における具体的な例を示すのであれば、日本なら旧石器時代や縄文時代、中国なら仰韶文化や竜山文化などの殷成立以前の世界、ヨーロッパなら旧石器時代、新石器時代、巨石文化などが該当するのではないかと思います。

もっとも、時代区分については、日本史・東洋史・西洋史で区分の仕方が微妙に異なります。そもそも、原始・古代・中世・近世・近代・現代という時代区分自体が、もともとはヨーロッパ史の把握のためにつくられた時代区分ですので、この時代区分を東洋史や日本史の時代区分にそのまま当てはめられるわけでもありません。

もっと言ってしまうと、たとえば東洋史(中国を含み、朝鮮・日本・東南アジア・インド・イスラームの歴史など)では、地域ごとに時代区分が異なり、共通した時代区分はありません。(例:中国史であれば先史・古代国家形成期[殷・周]、秦漢時代、魏晋南北朝時代、隋唐時代、宋元時代、明清時代、近現代など / インド史であれば古代[インダス文明〜ヴァルダナ朝期]、中世[イスラームの浸透〜ムガル帝国ごろ]、近代[イギリス支配以降]、現代[独立後]など)

ですから、ここからお示しする例は、日本史や中国史(東洋史)については、あくまでも「強いて区分とするとすれば」というものを示したもので、「中世」とした場合でも見方によっては「古代」や「近世」に分類されることもあるくらいの、ある程度解釈に幅を持たせたものだと捉えていただくのが良いかと思います。

【古代】
(特徴)農耕に基づく国家が成立し、王権や身分秩序が形成された時代

古代になると、農業の発展を背景として国家が成立します。王や皇帝を中心とした政治が行われ、社会には身分制度が生まれます。

古代社会の特徴は次の通りです。

・国家が成立する
・王権や皇帝権力が存在
・身分制度が形成される(奴隷制なども)

各地域における具体的な例を示すのであれば、日本なら弥生時代後期~平安時代中期ごろまで、中国は諸説ありますが漢の滅亡後しばらくまで、ヨーロッパでは古代ギリシアや古代ローマなどが該当するのではないでしょうか。世界史の教科書などでは、西ローマ帝国の滅亡(476年)が、古代から中世への転換点とされることが多いように思います。

【中世】
(特徴)土地と主従関係を基礎に複層的・分権的な支配構造が広がった時代

中世という時代概念は、そもそもがヨーロッパ史において「古代」と「近代」の中間の時代を示すために生み出された語です。この時代は、(西)ヨーロッパ史については土地の支配関係と主従関係を基礎とした社会(封建社会)によって特徴づけられる時代です。また、王の権力は必ずしも強くなく、地方の有力者が大きな力を持つことも多く、さらに国内の権力関係は錯綜していて、たとえば「ローマ教皇」のような国の枠組みをこえて影響力を行使する存在なども見られます。

この時代の特徴は次の通りです。

• フューダリズム(封建制度)など土地を媒介とした主従関係が成立
• 基本的には分権的な支配構造
• 宗教の影響力が大きい

ただし、こうした特徴は基本的には西ヨーロッパの状況をつかむためのもので、地域によっては当てはまりません。たとえば、ビザンツ帝国はある時点までは集権的ですし、イスラーム世界や中国・インドなどもその在り方は多様で、必ずしもヨーロッパ的なフューダリズムが当てはまる社会ではありません。

一方で、地域ごとに形は異なっても、「土地を媒介とした支配関係」や「分権的な支配構造」など、一部では共通点も見出せることがあるため、そこからヨーロッパではない地域の歴史を「中世」としてとらえる場合もあります。これは、日本史でいえば平安時代後期~室町・戦国時代の頃にあたります。中国史については、「中世」という区分が成立するかはやや微妙なところですが、後述の通り唐末から宋代にかけてが近世へ変化する時期ととらえることが多いので、その前の魏晋南北朝期から唐代のあたりを「中世的移行期」または「古代後期」としてとらえているように思います。

参考までに、いくつかの代表的な世界史教科書を見ると、秦・漢から唐末までを一つの章のなかにまとめ、宋代以降を別の章にまとめるという形をとっているものが多いかと思いますので、唐代から宋代へ変わる時期が一つの区分と考えてよいかと思います。基本的には内藤湖南の「唐宋変革論」がベースになっていますが、近年は明確な断絶・変革があったというよりは唐末〜宋初を連続的変化として捉え、漸進的に構造が変化していったととらえる方が理解しやすいかと思います。

(西)ヨーロッパで言えば、中世は西ローマ帝国の滅亡以降のフランク王国による支配拡大や、ローマカトリック教会の組織化、封建制の成立によって徐々に形成され、15世紀末~16世紀にかけての「ルネサンス(後期)・大航海時代・宗教改革」あたりが中世と近世の境界線だと考えてよいかと思います。

【近世】
(特徴)中央集権的な国家が成立し、身分秩序のもとで商品経済が発展した時代

近世になると、王権が強まり、中央集権国家が成立します。また、商業や貨幣経済が発展し、都市や商人の力が強くなります。

この時代の主な特徴は次の通りです。

・中央集権国家の成立
・身分制度の維持
・商品経済の発展
・海外交易の拡大

中世の社会の枠組みを残しながらも、経済や国家、社会の仕組みが大きく変化していく時代です。日本史で言えば、安土桃山時代~江戸時代、中国史で言えば宋代~清末あたりではないでしょうか。もっとも、中国の場合、宋代と明・清の時代ではかなり大きな差がありますので、宋代を近世の始まりとしつつ、明・清は近世後期ともいうべき別の社会へと段階的に変わっているととらえるべきかと思います。ヨーロッパで言えば、主に主権国家が形成される絶対王政期が該当するかと思いますが、市民革命の時期が違ったり、東欧では啓蒙専制君主が出現したり農奴支配が西欧と比べて強いなど、国や地域によってかなりの差があります。何かのきっかけで君主の権力に大きな制限が課されたり、市民の発言力が増したり、農奴の解放が進んだりしてくる時期が近世の終わり(近代の始まり)と考えると地域ごとの近世・近代を把握しやすいのではないかと思います。

【近代】
(特徴) 市民革命と産業革命を背景に、資本主義と国民国家が成立した時代

近代は、市民革命と産業革命を背景として成立した社会です。身分制度が崩れ、資本主義経済と国民国家が広がります。

この時代の主な特徴は次のようなものです。

・市民革命の発生
・産業革命(生産の近代化)
・資本主義経済の成立
・国民国家の形成

先に示した通り、君主などのもとに主権が集まり主権国家が形成されるとともに、君主大権が増大し、常備軍や官僚制の整備による地方貴族の廷臣化などが進んだ社会を「近世」だとすれば、君主の権力に大きな制限が課されたり、市民や農奴の発言力が増したり、生産の機械化や自動化(近代化)による新たな社会経済体制(資本主義経済)が成立する時期を「近代」と考えるべきかと思います。

このあたり、日本史では非常に分かりやすく、江戸幕府の崩壊と明治維新が日本の近代化の始まりと考えてよいでしょう。ある程度日本の近代の始まりが分かりやすいのは、海外との交渉が制限されていた社会から外圧により急激な変化を遂げたことや、当時の日本人が「西洋」を手本に「近代化」を遂げようと考えて活動していたことなどが影響しているのかもしれません。もっとも、日本でも産業面での近代化は急速に進みますが、こうした近代化は「市民革命」を通したものではなく、国家主導の「上からの近代化」でした。また、憲法の制定や議会の設置に至るまでには自由民権運動などを経ておよそ20年を要しますので、分野によって「近代化」の程度には違いがありますし、必ずしもヨーロッパ的な「市民革命」と「産業革命」によって近代が成立したわけではない点には注意が必要です。同様に、中国で言えば近代は清末の諸改革(洋務運動~光緒新政)あたりから始まって進んでいきますが、この間も皇帝による専制支配という前近代的な要素は残されています。その後、辛亥革命や中華民国の成立などを通して漸進的に近代化が進んだと考えるべきでしょう。

ヨーロッパについては、「市民革命」と「産業革命」が一つの指標となります。イギリスの産業革命、アメリカ独立革命、フランス革命、ドイツやイタリアの統一などがヨーロッパにおける近代の始まりととらえてよいかと思います。もっとも、こちらもやはり国や分野によっては前近代的な要素を残していた場合があることには注意が必要です。たとえば、イギリスについては2度の革命(ピューリタン革命と名誉革命)により、国王にかわって議会が政治の主導権を握るに至りますが、当時の国王が政治的に無力だったかといえば決してそんなことはなく、特に外交政策や貴族院に対しては非常に大きな力を持っていました。また、産業革命も当時は始まっていませんし、社会構造も革命以前と以後でそこまで大きな差がなかったという指摘もあります。

このように、近世から近代へといたるのは、一夜にして急激に変わるのではなく、様々な変化が徐々に起こることを通してのことであることは理解しておくべきです。ただ、何が「近世的」で、何が「近代的」であるのかという要素を把握することで、その国や地域がどの程度の段階にあるのかということをイメージすることは可能かと思います。

【現代】
(特徴) 民主主義と高度な資本主義経済を基盤に、国際的な相互依存が強まった時代

現代は、基本的には20世紀以降の社会を指します。民主主義が広がり、経済は高度な資本主義の段階に入ります。また、国際的な結びつきも強くなります。ただし、社会主義国家や権威主義国家の成立に見られるように、資本主義と民主主義が絶対的な条件ではない点には注意が必要です。ある意味、今日本で教えられている現代史というのは冷戦期の西側諸国的な視点で形成された現代史という側面が強いのかもしれません。

この時代の特徴は次の通りです。

・民主主義の普及
・世界経済の一体化
・国際機関の発展
・情報化社会

ただし、「20世紀以降」といってもどの段階から「現代」とするかは国や視点によって異なります。高校の歴史では、世界史・日本史ともに第二次世界大戦以降を現代史ととらえる視点が多いように思います。たとえば、日本史においては第二次世界大戦後のいわゆる「戦後史」を現代ととらえるのが一般的かと思います。これは、日本国憲法の成立により国家体制に大きな変革があったことや、高度経済成長を通した社会経済の変化などからこのような区分になっています。同様に考えれば、中国についても中華人民共和国成立以降の歴史を現代史ととらえるのが普通かと思います。ヨーロッパについても第二次世界大戦後の世界を現代史ととらえてよいかと思います。

もっとも、現代史というのは「現在に直接つながる時代を対象とする歴史」、または「現在の世界の仕組み(政治・経済・社会)の基盤が形成された時代」のことですから、21世紀に入って四半世紀が経過した今では、「現代史」に対する捉え方も今後変化してくるかもしれません。たとえば、ヨーロッパ史の分野では1989年の東欧革命以前を「近代」、それ以降を「現代」ととらえる見方が出てきています。また、日本においても、たとえば私が高校生の頃には冷戦史は紛れもない「現代史」でしたが、2026年の今の時代において冷戦期が「現代」かと問われれば、別の見方も存在するかもしれません。

【おわりに】
世界史の時代区分をおおまかに整理すると以下のようになります。(これまでにご説明してきた通り、かなり西ヨーロッパ史中心的な視点でのまとめとなっている点には注意してください。)
 時代区分とその特徴
世界史の時代区分は、出来事そのものではなく「社会の仕組み」に注目して作られた分類です。そのため、「分かりにくい」と感じられることも多いようですが、日本史の伝統的な時代区分のように、出来事(遷都・新しい政治体制の成立など)を時代区分の目印として使う場合とは異なり、時代を特徴づけるいくつかの要素があるのだと考えてあらためて見直すと、それぞれの時代の違いがどのようなものだったかということがより立体的に見えてくるのではないかと思います。また、こうした要素や枠組みに対する理解を深めておくと、世界史だけでなく日本史を学ぶときにも、社会の変化やそれぞれの出来事を大きな流れの中で位置づけやすくなるのではないでしょうか。

世界史を学ぶ最初のステップ、または世界史をある程度学習した後の発展的なステップとして、今回の「時代区分」の話が何かのお役に立てば良いなと思います。