【2020年早稲田大学政治経済 Ⅳ-B-7(論述問題)】
こちらの解説は早稲田大学政治経済2020の問題解説(http://history-link-bottega.com/archives/cat_397528.html)にも同じものを掲載しています。
(1、設問概要)
・世界恐慌時の米「大統領の実施した経済政策(ニューディール政策)」の具体的内容
・その政策は合衆国において支配的であった考え方とどのように異なるものであったか
・「大統領の名(フランクリン=ローズヴェルト)」を示す
・160字以内
→問題より、経済政策がニューディール政策であることと、大統領がフランクリン=ローズヴェルトであることはすぐにわかるので、これらは明記しておきたい。
(2、ニューディール政策の「具体的内容」を整理)
①価格調整[デフレ対策=インフレ誘導]のための生産制限
・AAA(農業調整法)‐農業生産制限
・NIRA(全国産業復興法)‐工業生産制限
②労働者保護
・NIRA‐全国復興局(NRA)設立と、最低賃金、週40時間労働制を定める
労働組合結成と団体交渉権を認める
③失業者対策
・TVA‐テネシー川流域開発公社
(・NIRAも公共事業局を設立して道路、学校、病院などの公共事業を促進)
(3、合衆国において支配的だった考え方との相違)
①従来‐自由競争を進め、独占を禁止する(革新主義または自由主義的資本主義)
②ニューディール政策‐修正資本主義(ケインズ)
・国家の経済への介入
・自由競争の抑制
・不況下のカルテルの公認
→世界恐慌までの従来の合衆国における支配的な考え方が正確に示せるかどうかで少し差がついたかもしれませんが、その他の要素は基本的なものなので全体としては受験生が高得点を狙える論述問題だったと思います。古典派経済学の自由放任などを書いても必ずしも誤りではないですが、19世紀末から20世紀初めのアメリカで独占資本に対する一定の制限がかけられたことや、シャーマン反トラスト法(1890)、クレイトン反トラスト法(1914)などの知識は高校世界史の知識でも出てくる内容なので、これについてはどこかで言及したいところです(独占を禁止するということは、完全な「自由放任」ではない)。また、よく勉強している受験生であればセオドア=ローズヴェルトからの「革新主義(または進歩主義:高度な資本主義発達により生じた弊害を抑えるために野放しの自由放任主義を改めて独占の制限や抑制、労働者の保護を進めようとした考え方)」などについての知識もあるかもしれません。
【解答例】
フランクリン=ローズヴェルトのニューディール政策は、農業調整法や全国産業復興法で生産や価格を調整し、労働条件を規制して労働者の保護を進め、失業対策としてTVAなどの公共事業拡大を行うなど、修正資本主義の影響を受け国家が経済に強力に介入するもので、独占を禁止して自由競争を保障する従来の自由主義的資本主義を転換するものだった。(160字)
コメント
コメント一覧 (9)
先生、ここ最近のニュースを見ていて、チベット問題やウイグル問題、台湾や香港の問題、南沙諸島や尖閣諸島、旧満州地域や一帯一路とコロナウイルスの関係などほとんどすべてが中国に関係していることに気づきました。
そこで、資料集や教科書を読み漁っているのですが、ウイグルなど内陸アジア史についてはなかなかまとまっているものがなく、また中国の周辺史という切り口でまとまっているものがなく困っています。おすすめのプリント論述問題がございましたら教えていただきたいです!
内陸アジア史についてですが、教科書や参考書のあちこちに散在していて、つながりをつかむことは容易ではないと思います。ただ、基本的な事項(高校世界史レベルでの)については『詳説世界史研究』をはじめ様々な個所に載っておりますので、それらを読み、つなぎ合わせていくことになると思います。私自身も、内陸アジア史については、あるまとまった本を読んだというよりは周辺史(ヨーロッパ・アジア・イスラームなど)の研究や教科書・参考書を大量に読むうちに身につけた気がしますので、内陸アジア史についての研究書などについてはあまり存じ上げません。
ちょっとした歴史学入門向けのシリーズに『世界史リブレット』のシリーズがあります。こちらのシリーズは各時代、分野の歴史学の専門家が一般の方でもわかるように各研究のエッセンスを簡単にまとめたシリーズで、歴史学の入門書的な位置づけのものです。ページ数も100ページ弱と薄い小冊子状の本になりますので、とっかかりやすいのではないかと思います。おそらくご関心に近いものとして『内陸アジア史の展開』あたりをご覧になってはどうかと思います。
https://www.yamakawa.co.jp/product/34110
また、実際に目を通したわけではないので何とも言えませんが、その周辺史としては『中央アジアのイスラーム』あたりもありかもしれません。
https://www.yamakawa.co.jp/product/34700
中央アジアではありませんが、中国と周辺民族としては『中国史の中の諸民族』も何かしらの示唆をあたえてくれるかもしれません。
https://www.yamakawa.co.jp/product/34610
また、もう少ししっかりとした量を読みたいということであれば、同じく入門書ではありますが、山川出版社の新版世界各国史のうち、『中央ユーラシア史』や中央公論社の世界の歴史のうち『7、宋と中央ユーラシア』、『20、近代イスラームの挑戦』ですとか、岩波講座世界歴史の『11、中央ユーラシアの統合』などはいかがでしょうか。
https://www.yamakawa.co.jp/product/41340
http://www.chuko.co.jp/search.php?name1=%E4%B8%96%E7%95%8C%E3%81%AE%E6%AD%B4%E5%8F%B2&name2=&name3=&name4=&name5=&name6=&name7=&name8=&
https://www.iwanami.co.jp/book/b476029.html
これらでもかなり十分な知識が得られるのではないかと思いますが、もしこれらをお読みになって、もっと深く知りたいとお考えになる場合には、各書籍の文章中の注などから、どの情報がどの出典に拠っているかを確認し、関心の高い分野の専門書をお読みになると良いと思います。
問題集についても、内陸アジアを中心にまとめたものについては存じ上げませんので、各種問題集から該当箇所をピックアップしていただくのが良いかと思います。
詳細なご返信、本当にありがとうございます!感謝の思いでいっぱいです!
先生、2021年の大論述はどの地域があやしいとお考えですか。2010年以降、アジアの出題割合が急増しているのが気になります...
ん~、大論述というと、どちらの大論述になりましょう?東大ですか?それとも早稲田法または一橋でしょうか。
東大ですかw
東大については正直まったく予想などは立てていない、というよりたてられないです、すみません(汗)
お力になれずにすみません(汗)