上智のTEAP利用型も、導入されてからずいぶん経ちまして前回の2025年でもう11年目です。月日の経つのは早い。さすがにこれだけ時間が経過すると、試験形式の方も落ち着いてきて、形がしっかり定まってきたように思います。現在の基本的な試験形式は以下の通りです。


・試験時間:90分

・設問数:小問5、論述2問(200字論述+300字~350字論述)


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2018年に試験時間がそれまでの60分から90分に変更され、そのあたりから設問数はほぼ5問で統一されるようになりました。論述問題については、最初の方こそ字数が安定しなかったものの、2020年以降は「200字論述+300字または350字論述」の形で安定しています。もちろん、突然の試験形式の変更などはありえますが、とりあえずはこの形で出題されることを期待して良さそうです。

上智TEAP利用型世界史の問題では、小問は相変わらずごく基本的な内容で、大学入学共通テストレベルの知識があれば解ける問題が大半です。5問とも全て選択式となっており、問題数が少ないことを考えても、取りこぼすことなく全問を正解したいところです。


一方で、最後についている論述問題についてはかなり手ごたえのある問題となっています。以下は、2015年~2025年までに出題された論述問題の設問概要一覧になります。

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以前、2021年までの問題を分析した記事で指摘しましたが、2019年までは史料読解の必要はありつつも基本的には世界史の知識と読み取った情報を整理してまとめれば十分であったのに対し、2020年と2021年の論述問題では解答者自身の見解や用意された文章の文脈を考慮する必要があるなど、解答者自身が自分の言葉で語る必要のある設問が続けて出題されるといった傾向の変化が見られました。

まさに、このあたりの時期から、論述問題のうち第2問目の300字~350字論述の方では、資料の読み取りに加えて受験生自身の受験生自身の歴史に対する視点や立論の仕方などを問うスタイルの問題が出されるようになりました。大学入試と言うよりは大学で出される論文試験に近いスタイルの問題と言って良いと思います。ただし、やや受験生の主観に左右されそうであった2020年の出題の仕方とは異なり、2021年以降の設問はあくまで世界史の知識と与えられた資料をもとに、受験生がどのように情報を整理するか・論を立てるかが問われており、基本に世界史に対する深い理解が必要となるスタイルの設問となっています。それにともない、200字論述の方はそれまでの少し凝った雰囲気がなくなり、世界史の基本的知識を説明させるスタイルの平易な出題が続いています。
こうした試験形式を見るに、小問と200字論述をしっかりと解き切る世界史の基礎力を身につけることは必須です。その上で、300字論述をある程度はまともにかけるようにするというのが、まずは目指すべき目標となるかと思います。

また、以前はかなり限定されたテーマについて述べるリード文が主体で、時代的にもはっきり何世紀をテーマにしているということが言えたのに対し、直近2年のリード文は世界史の個別テーマと言うよりは、より一般的なテーマをもとにして世界史的な意味や視座を問うというスタイルのリード文に変化してきています。そのため、厳密に何世紀頃のことをテーマにしているということは言えなくなりました。特に根拠はなく、カンではありますが、この傾向は今後も続きそうな気がします。依然として近現代史に対する理解が最重要であることには変わりがありませんが、これまで以上にリード文、資料の読解が重要となり、世界史の知識をベースとしつつも、国語力(読解力だけでなく文章作成能力も含めた)が要求される出題に徐々に内容がシフトしてきているように感じます。採点は大変かと思いますが、個人的には受験生の総合力を問う良い設問だと思います。(ただ、問題のバランス的にもう少し小問を増やしたりしてくれても良いかなぁとは思います。)

非常に対策が難しい問題ではありますが、練習・対策用としては上智TEAP利用型の過去問演習は必須です。それ以外に練習材料として使えるということであれば以前からお話ししている通り、東京外国語大学の過去問が良いと思います。扱っている時代、小問数、論述問題が資料読解を必要とする点、論述問題の字数など、類似している点も多く、やや設問の内容に方向性の違いはあるものの、良い練習材料になると思います。また、論述対策は必ずしもないのですが、ICUの人文・社会科学考査あたりは、少しレベルの高い人文社会学系の長い文章を読み、その内容をしっかり理解できているかを確認するトレーニングとしては有用な気がします。(ただし、文章のレベル自体は上智TEAP利用型よりも一段上の文章が多いので内容的には難しい。) 個人的には、材料は上智TEAP利用型と東京外国語大学の過去問で十分かと思いますが、自学自習はかなり難しいので、世界史について深い理解があり、国語力も兼ね備えた信頼できる指導者に解説・添削ともに指導してもらえるのであればそれに越したことはないと思います。学校の先生が「使える」のであればバリバリこき使うのもアリでしょうw