慶應義塾大学では経済学部と商学部で多数の論述問題が出題されます。特に、経済学部については難関国公立と同じくらいの分量の論述問題が出題されるので注意が必要です。それでは、経済学部・商学部の数年間の論述問題の概要と出題傾向についてご紹介します。
【本記事についての注意事項】
・分析対象は、いわゆる「論述問題(文章で書かせる問題)」が対象です。その他の記述問題や選択問題は分析の対象ではありません。
・人間なので、見逃し等があるかもしれません。多少雑な点があるかもしれませんが、大目に見てやってください。
・字数は、慶応経済学部では厳密には「〇〇字」と指定されません。また、商学部でも字数指定のあるものとないものがあります。そのため、字数指定のない問題については、公開されている模範解答などから、おおよその字数を出しています。
・時代区分については、おおよその時代区分です。特定できないものについては、数量分析の際の数としてはカウントしていません。
・時代のまたがるものについては、またがる両方の時代について「1」としてカウントしています。 (例:「16世紀~20世紀」→「15~17世紀」で1、「18世紀~21世紀」でも1)
【慶應義塾大学経済学部 論述問題出題テーマ概要(2014-2025)】
【慶應義塾大学経済学部 論述問題時代区分別分類(2014-2025)】
(慶應義塾大学経済学部論述問題分析)
経済学部の試験は、現在は80分、150点ですが、大学広報によると2027年度(再来年度)以降の試験では、世界史を利用する経済学部B方式で外国語が100分200点満点、地理歴史が100分200点満点に変更になるとのことです。(現行が英200点、小論70点、地理歴史150点の割合。)世界史の占める割合が大きくなりますので、論述問題の分量やレベルは上がることはあっても下がることはなさそうです。
経済学部の試験は、現在は80分、150点ですが、大学広報によると2027年度(再来年度)以降の試験では、世界史を利用する経済学部B方式で外国語が100分200点満点、地理歴史が100分200点満点に変更になるとのことです。(現行が英200点、小論70点、地理歴史150点の割合。)世界史の占める割合が大きくなりますので、論述問題の分量やレベルは上がることはあっても下がることはなさそうです。
経済学部の論述問題は明確な字数制限がなく、解答欄におさまる範囲で答えさせる設問です。30字~60字程度の小論述と90字~160字程度の中論述が1回の試験につき10題前後出題されます。合計の文字数は一部の年に550字前後という少なめの年もありますが、全体としては650字前後を要求する年が多く、かなりの分量を書く必要があるため、時間配分に注意が必要です。時間不足を防ぐためにも、「しっかりと書ける論述問題については後回しにせず、先にしっかりと書いておく」、「判断に迷ったり、内容が難しいと感じる設問は一通り解ける問題を解いたところで時間をかけて取り組む」など、メリハリのある解答づくりを心掛ける必要があります。
問題数と要求される字数は多いですが、内容的には平易なものが多いです。慶應義塾大学の経済学部は、論述以外の小問のレベルが高いので、論述問題はむしろ得点源とできる可能性もあるため、加点要素をしっかりと組み込んだ解答づくりを心掛けたいところ。
一方で、一部の論述問題では深い世界史の知識や思考力を要求されるものも出題されます。特にデータや資料を提示してそれを読み取らせ、内容または背景を説明させる設問は「情報の読み取りと整理」、「思考力」、「歴史的知識」の全てを要求する総合力を問う設問であるため、丁寧に解答づくりを進める必要があります。(例:2025年、問7③・問11②・問13①②など) 日頃から資料や図表に触れて読み取りに慣れておくことも必要です。
また、2025年の論述問題では、おそらく今後の試験形式の変更を意識したと思われるこれまでとは少々毛並みの違う設問が出題されました。架空の「慶應みらい君」という生徒が史資料をベースに調査するという設定から、みらい君がこれらの史資料から読み取ることができたと推察される内容についてまとめよという内容のもので、世界史の基本的理解を問うと同時に、適切に史資料を活用して読み取る能力があるかどうかを問う設問が出されています。おそらく、実験的に出題されたものではないかと思いますが、もしこのスタイルの設問の導入について、大学側が「イケる」と判断した場合には、こうしたタイプの出題も増えてくると思われます。対策としては、まずは世界史について深い理解を養っておくことと、探究型学習などを通して思考力を養っておくことが大切になります。
世界史の出題については、経済学部は一般試験向けの要項などで「1500年以降を中心とする」と言い切っていますので、論述問題の時代区分も当然近世以降が中心となります。特に、19世紀~20世紀史の出題頻度が突出しており、全体の6割近くを占めます。ただ、17世紀・18世紀史からの出題はそこまで多くはなく、むしろ16世紀史の出題率が高い(約20%)です。こと論述に限っては、16世紀・19世紀・20世紀で全体の約8割を占める計算になりますので、これらの時代の事柄については、内容・背景・展開・影響などを中心にしっかり理解を深めておくことが重要です。
また、論述に限らずデータ読み取り型問題の範囲としては、16世紀以降の近現代史、中でも英・仏・独・米や中国史は出題頻度が高いです。また、当然のことではありますが、経済分野からの出題が多くなっています。まとまったデータや推計が残されているのは主要国・近現代が中心ですので、この傾向はおそらく今後も大きな変化はないと思われます。オーソドックスな分野からの出題になるため、基本的な事柄はきちんと書けるようにしておきたいところです。
【慶應義塾大学商学部 論述問題出題テーマ概要(2014-2025)】
(慶應義塾大学商学部論述問題分析)
慶応の商学部の論述は形式が一定せず、字数指定があることもあれば、字数という形で指定されないこともあります。いずれの場合も要求される字数は15字~60字以内と短めです。内容的にもごく基本的なものが多く、特別な対策は必要ない気がします。近現代史からの出題が多いところは経済学部の論述と変わりありません。
まれに、世界史の知識からやや離れた、思考力を問う問題が出題されることがあります(例:2017年の論述問題や2020年の大問1の問6など)が、こうした設問については、出題頻度・量・配点を考えた場合に、これだけのために特別な対策をするのはさすがにコスパが悪すぎるように思います。普段からものをよく考える習慣をつけることや、ニュースなど世間の動向に一定の気を配ること、常識的な知識を身につけることが大切なのではないでしょうか。
まれに、世界史の知識からやや離れた、思考力を問う問題が出題されることがあります(例:2017年の論述問題や2020年の大問1の問6など)が、こうした設問については、出題頻度・量・配点を考えた場合に、これだけのために特別な対策をするのはさすがにコスパが悪すぎるように思います。普段からものをよく考える習慣をつけることや、ニュースなど世間の動向に一定の気を配ること、常識的な知識を身につけることが大切なのではないでしょうか。
また、商学部は論述問題は割合として気にするほど多くはないので、むしろ論述以外の小問をしっかり得点できるかの方が大切であると思われます。世界史の基本的な知識をおさえ、理解を深めていくことが大切です。
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