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カテゴリ: 早稲田大学過去問解説_出題傾向

早稲田大学教育学部の世界史は、早稲田の世界史の中でもかなり特徴のはっきりした試験です。

問題の中心となるのは、単純に用語を答える問題ではなく、「正しい説明はどれか」、「誤っている説明はどれか」、「二つの文章の正誤の組合せとして正しいものはどれか」、「年代順に並べた場合、何番目にくるか」といった正誤・判定型の問題です。

また、選択肢の誤りは完全なデタラメであるとは限りません。人物名は正しいが時代が違う、王朝名は正しいが制度が違う、条約名は正しいが締結国が違う、地名は正しいが位置関係が違う、といった文章の一部分だけをずらした誤文が数多く作られています。

そのため、早稲田教育の世界史では、「この用語を知っている」だけでは十分ではありません。その人物がいつ・どこで何をしたのか、その制度がどの王朝で行われたのか、出来事の前後関係がどうなっているのか、などまで正確に整理できていることが重要になります。


今回は、2022~2026年度の5年分について、大問テーマを並べるだけではなく、各設問で正解を導くために必要となった知識を「中核知識」として整理し、地域別・時代別の傾向を確認しました。


【早稲田大学教育学部世界史の基本構成】

2022~2026年度を見ると、基本的に大問4題・マーク式という構成が続いています。近年は50問前後を解く形式となっており、2026年度も第1問12問、第2問13問、第3問13問、第4問12問という構成です。2025年度も4大問で構成され、各大問に多数の選択問題が配置されています。

つまり、教育学部では、かなり多くの選択肢を、限られた時間内に正確に処理する力が必要になります。

また、「50問あるから50個の知識が必要」と考えるのは適切ではありません。一つの4択問題の中に、複数の人物・制度・地域・年代が含まれているため、実際には、一つの正解を得るために複数の知識を比較しながら判断する必要がある試験と考えるべきかと思います。

【2022~2026年度の大問テーマ】

まず、5年間の出題を大まかに整理すると次のようになります。

※以下の「大問テーマ」は大学が付けた正式名称ではなく、問題内容をもとに便宜的に整理したものです。


大問テーマ


(一国史よりも「テーマ史」の発想が重要)

5年間の問題を並べると、早稲田教育では単純な一国史だけでなく、「疫病」、「民族移動」、「交易」、「社会主義」、「移民」、「脱植民地化」、「経済活動」、「遊牧民」など、一つのテーマを通じて複数地域・複数時代をつなぐ問題がかなり目立ちます。

たとえば2023年度第1問では、古代ギリシアからヴァイキング、東方植民、ポルトガル・オランダ・イギリスの海外進出、アフリカやアメリカまで話が広がります。

つまり、「中国史」、「フランス史」、「オスマン帝国史」のような、国・地域ごとの通史だけでなく、「交易史」、「民族移動史」、「植民地化と脱植民地化」、「社会主義運動」のような、教科書の章を越えたテーマごとのつながりや整理を意識しつつ、学習を進める必要があります。

【設問ごとの「中核知識」をもとにした分析】
続いて、設問を解く際に決定的に必要となる「中核知識」について、時代・地域別などの分析を進めてみたいと思います。
今回の地域別・時代別分析では、単純に「1問=1件」と数えてはいません。早稲田教育では正誤問題が多いため、一つの設問の中に複数の知識が含まれます。

たとえば2023年度第4問の「遼」についての問題では、「契丹文字」、「キタイ」、「猛安・謀克」、「州県制」、「澶淵の盟」といった複数の知識が選択肢中に含まれています。一方で、この設問の正答を決める上での決定的な知識は、「猛安・謀克は遼ではなく金の制度」という知識があれば十分でした。本稿では、こうした知識を「中核知識」と呼んでいます。

そこで今回は、正答を確定、または決定的に誤答を排除するために必要な知識を「中核知識」として扱い、これについて分析します。一方で、残りの選択肢まですべて正誤を判定するために必要な知識は「周辺判定知識」として別途分析を加えています。

(集計ルール)

今回の分析では、次のような集計上のルールを用います。

〇 正答を確定するために必要となる知識を「中核知識」として扱う

〇 二つの文章を別々に正誤判定する問題では、それぞれを独立した知識として考える

〇 年代整序では、個々の年号よりも「出来事の前後関係」を一つの知識として扱う

〇 問題文の中で、すでに示されている情報は、原則として必要知識には含めない

〇 すべての選択肢を完全に判定するための追加知識は「周辺判定知識」とし、地域・時代の集計には原則加えない

〇 複数地域にまたがる場合は、正答判定の中心となる地域を主分類とする

〇 複数時代にまたがる場合は、正答判定の中心となる時期に分類する

〇 大学側が不適切と認定した問題は通常集計から除外する

〇 大学側が複数正解を認めた問題は注意して扱う

したがって、以下の数字は厳密な統計値というより、出題の大きな偏りを見るための概算です。また、以下の割合は配点の割合ではありません。正答判定に用いた中核知識を地域・時代別に分類した際のおおよその構成です。数%の違いよりも、「4割弱」、「2割強」、「1割強」といった大きな傾向を見るためのものとお考えください。

(地域別ではヨーロッパが4割弱)

中核知識を地域別に分類すると、おおよそ次のような構成になります。


地域別表
まず、ヨーロッパ史が最大です。2022年度第1問では中世ヨーロッパ、第2問では第一次世界大戦後のヨーロッパがまとまって問われています。2023年度第2問もスウェーデンとバルト海世界が中心で、三十年戦争、北方戦争、ナポレオン戦争、ウィーン会議、ロシア史、非同盟、NATOなどが問われています。

一方で、ヨーロッパ以外の地域が全体の6割程度を占める点には注意が必要です。ヨーロッパ史が比較的手厚く出ているからと言って、そこだけを重点的にやれば合格点に届くほど甘くはないということが分かります。


(中国・東アジアは2割強で、かつ時代的な広がりがある)

中国・東アジアは、5年間を通して非常に安定した形式で出題されています。

2022年度第4問

2023年度第4問

2025年度第4問

2026年度第4問


と、5年間のうち4年度でまとまった東アジア史が出題されています。たとえば、
2023年度第4問では「唐」、「吐蕃」、「新羅」、「渤海」、「遼」、「西夏」などが一つの大問にまとめられています。さらに設問では、「朝鮮半島統一」、「渤海」、「唐末」、「新羅」、「遼」、「燕雲十六州」、「西夏」などに関する事柄が問われています。

また、2025年度第4問は古代中国から、2026年度第4問は19世紀末~20世紀初頭の東アジアから出題されています。

このように、中国史については過去5年分を見るだけでも古代・中世・近世・近現代からまんべんなく出題されるため、どこかだけを重点的に学習するという方法は危険です。教育学部で中国史から2割強の出題がされていることを考えれば、中国史については古代から近現代まで全体を通して仕上げる必要がある分野と考えた方がよいでしょう。

(
イスラーム+中央ユーラシアも2割強)

西アジア・イスラーム世界と中央ユーラシアを合わせると、全体の2割強程度になります。これは、中国・東アジアに近い規模です。したがって、早稲田教育ではこの地域を「周辺分野」と考えない方がよいでしょう。

2022年度第3問では、現在のイラク周辺をシュメール・バビロニアからイスラーム時代、オスマン帝国、現代イラクまで追っています。

また、2023年度第3問では、トルコ民族の歴史について


○ 丁零

○ 突厥

○ ウイグル

○ トルコ人のイスラーム化

○ ガズナ朝

○ セルジューク朝

○ オスマン帝国

○ トルコ共和国


という長期的な流れが問われています。
実際の設問でも、ガズナ朝、セルジューク朝、ウマル=ハイヤーム、ムラービト朝、オスマン帝国、青年トルコ革命、セーヴル条約、トルコ共和国の世俗化などが続きます。

少し脱線しますが、これについては、2010年代の後半から、トルコ民族の歴史については東大・京大を中心にかなり集中して出題されていましたので、受験生の間ではトルコ史に対する意識・耐性が高まってきていました。そうした面もあって、次第でもトルコ民族史については出題頻度が高まってきています。

<主要国立大学の大論述でトルコ民族史が問われた例>
国公立トルコ史

また、こうしたトルコ民族史が出題されるようになった背景として、「トルコ民族史」が単なるイスラーム史の一部分ではなく、ユーラシアを横断する歴史として捉え直されるようになったことや、内陸アジア・中央ユーラシアを、東アジア史とイスラーム史の隙間ではなく、一つの歴史空間として見る傾向が強まってきたことなども挙げられるかと思います。つまり、トルコ民族史を追うと、中国・中央アジア・西アジア・ヨーロッパなどの地域を一本につなぐことができ、民族移動、宗教変容、国家形成、東西交流を数百年~千年以上の時間軸で見せることができるため、地域や時代をまたぐ歴史像を提示する上で非常に使い勝手が良いのです。使われ初めてから10年以上がたちますので、やや古びてきた感はありますが、今後もしばらくの間はテーマとして注意すべき内容ととらえた方が良いでしょう。

話を元に戻しますと。2026年度第3問も騎馬遊牧民と東西交流からの出題があります。したがって、中央ユーラシアやイスラーム史を苦手なまま放置すると、教育学部ではかなり危険だと考えた方がよいでしょう。

(東南アジアは平均割合以上に注意)

東南アジアは5年間平均では1割弱です。数字だけを見ると、ヨーロッパや中国より優先順位が低いように見えます。しかし2024年度第4問では、東南アジア史が一大問を占めています。マレー、インドネシア、ベトナム、カンボジア、タイ、フィリピンなどがまとまって出題されました。

つまり、5年間平均では少ない地域でも、一年度では大問一つ分になることがあるということです。地域別割合は、「捨てる地域を決めるため」ではなく、「どこを厚くすべきか」を考える材料として使うべきでしょう。

(時代別では20世紀以降が3割程度)

必要知識を時代別に見ると、おおよそ次のようになります。

時代別比重
最も多いのは20世紀以降です。


2022
年度にはヴェルサイユ体制、

2023年度には非同盟・NATO、

2024年度には社会主義や移民、

2025年度には脱植民地化、

2026年度には国連・冷戦・中東問題などが出題されています。


したがって、20世紀史は教育学部対策の重点分野と考えてよいでしょう。

(一方で、20世紀以前は約7割)

20世紀以降が3割程度ということは、逆に言えば「古代~19世紀」が約7割を占めることになります。

そのため、「早稲田は近現代が大事だから、古代・中世は後回しでよい」という勉強法は危険です。

特に中世は2割強あり、20世紀に次いで存在感があります。2023年度ではヴァイキング、東方植民、中世教会、テュルク史、唐と周辺民族など、中世関係の問題がかなり多く出ています。2026年度第3問も古代~中世の中央ユーラシア史が大きな部分を占めます。

したがって、「20世紀史をやや厚めにする」、「ただし古代・中世・近世にも穴を作らない」というのが現実的な対策になります。

(地域×時代で見ると、対策の重点は見えてくる)

大まかには次のような傾向があります。

時代_地域別

これは「その時代・地域しか出ない」という意味ではありません。5年間の出題を見たときに、特に意識しておきたい組合せです。

中国史は時代を絞りにくい分野ですが、中央ユーラシアについては、「匈奴などの古代遊牧民」→「突厥」→「ウイグル」→「モンゴル」→「トルコ系諸民族のイスラーム化」といった長い流れを整理しておくことは比較的効果的かと思われます。

【早稲田大学教育学部では「周辺判定知識」も大切】

早稲田教育では、正答を決めるための中核知識のほかに、残りの誤った選択肢まで完全に切るための周辺判定知識があります。

たとえば2023年度第4問の「遼」の問題では、正答を取るだけなら、「猛安・謀克制は金」と分かれば判断できる場合があります。しかし、全選択肢を完全に判定するには、「契丹文字」、「キタイ・カタイ」、「猛安・謀克制」、「州県制」、「澶淵の盟」まで確認する必要があります。

同様に2023年度第1問では、「クレタ文明」、「ドーリア人=スパルタ」、「シュリーマン=ミケーネ文明」といった複数の知識が選択肢に並びます。

つまり、早稲田教育は、「50問あるから50事項を覚えればよい」という試験ではありません。一問を丁寧に復習するだけでも、複数の周辺知識を確認することができます。

こうした問題の特徴から考えると、早稲田教育の過去問演習で最ももったいないことは、「正解した問題は復習しない」ということです。たまたま一つの選択肢だけ知っていて正解した可能性があるためです。

過去問を復習するときには、「aはどこが間違っているか」、「bはなぜ正しいか」、「cはどこを直せば正しくなるか」、「dは何と何を混同させているか」などまで踏み込んで確認するとよいでしょう。

たとえば2023年度第1問のポルトガル海外進出を復習すれば、「ヴァスコ=ダ=ガマとインド航路」、「アルブケルケとゴア」、「マラッカ」、「マカオ」、「セウタ」などをまとめて確認できます。こうした誤文訂正を繰り返すことで、一問の過去問を複数の知識の復習に利用して、知識の層を増やしていくことが大切です。

【年代整序は「年号」ではなく「前後関係」が重要】

早稲田大学の教育学部では、出来事を年代順に並べる問題も見られます。

たとえば2023年度第4問では、「新羅による加耶諸国の併合」、「百済滅亡」、「白村江の戦い」、「高句麗滅亡」の順序が問われました。すべての西暦を完璧に覚えていればもちろん解けますが、新羅による加耶諸国の併合の年号まで覚えているというのは現実的ではありません。むしろ、「百済滅亡→白村江→高句麗滅亡」という歴史的な流れを理解していることが、正解に近づくためには重要です。

年号は数字だけで覚えるのではなく、事件と事件の前後関係までセットで整理するとよいでしょう。

【地理知識もかなり重要】

教育学部の正誤問題では、地理知識もかなり役立ちます。

中央ユーラシア、バルカン半島、西アジア、東南アジア、中国周辺地域などでは、「その国・都市・民族がどこに位置していたのか」を知らないと、選択肢を切りにくい問題があります。

特に、中央ユーラシア・バルカン半島・西アジア・東南アジア・中国周辺民族・列強の植民地分割については、資料集の地図で確認しておく価値があります。

早稲田の正誤問題では、「名前は知っているが、どこにあるのか分からない」という状態はかなり危険です。

【早稲田大学教育学部「世界史」で優先したい分野】

5年間の分析から考えると、まず重要なのはヨーロッパ史です。

中でも、「中世」、「19世紀」、「20世紀」は特に注意したいところです。

次に、中国・東アジア史です。こちらは特定時代ではなく、古代から近現代まで全体を押さえる必要があります。


さらに、イスラーム世界・中央ユーラシアです。
両者を合わせると2割強程度となり、中国・東アジアに近い規模になります。

また、時代別では20世紀史、特に冷戦・社会主義・脱植民地化・国際機関などは重点的に確認しておく価値があります。

ただし、割合が低い地域・時代を捨てることはおすすめできません。東南アジアのように、5年間平均ではそれほど高くない地域が一年度では大問一つを丸ごと占めることがあるためです。

【まとめ】

2022~2026年度の早稲田大学教育学部世界史を、個別設問で正解を導くための知識を基準に分析すると、いくつかの特徴が見えてきます。


(地域別)

○ ヨーロッパが4割弱

○ 中国・東アジアが2割強

○ 西アジア・イスラーム+中央ユーラシアが2割強

という構造が大きな柱。

(時代別)

○ 20世紀以降が3割程度で最も多い

○ 20世紀以前も約7割が出題される


そのため、
「ヨーロッパ近現代だけを重点的に勉強する」という対策では不十分です。中国史は全時代について、イスラーム・中央ユーラシアも重要で、各地域を網羅的に学習することが求められます。

早稲田大学教育学部の世界史は、細かな知識をただ大量に覚える試験というより、教科書レベルの知識を正確な関係性の中で整理し、それを正誤判定に使えるかを厳しく確認する試験と考えるべきかと思います。
一問一問のレベルはそう難解なものはありません。ただし、時代的・地域的に「ヤマをはる」ことは不可能に近いため、かなりの量の知識を備えて試験に臨む必要があります。

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早稲田大学文化構想学部の世界史は、単に「文化史が多い」、「細かい知識が出る」といった言葉だけでは捉えにくい試験です。

 

2022~2026年度の5年間の問題を設問単位で分析すると、文化構想学部では、通史知識を土台としながら、文化・社会・経済・交易・情報などのテーマによって複数の時代や地域を横断して問う問題が目立ちます。

 

以下では、2022~2026年度の問題をもとに詳しく見ていきます。

 

【早稲田大学文化構想学部「世界史」の基本構成】

2022~2026年度の大問数・設問数を整理すると、次のようになります。 

ChatGPT Image 2026年8月31日 10_16_01

2022年度は8大問構成ですが、2023~2026年度は4年連続で5大問構成となっています。

したがって、近年の文化構想学部では、5大問構成が基本となっていると考えてよいでしょう。

 

一方、設問数は33~39問程度で変動しています。

特に2026年度では、大問Ⅱだけで15設問あります。つまり、大問数は5題で安定していても、一つひとつの大問の規模は年度やテーマによってかなり異なります。

 

【記述問題の割合は約36.6%】

2022~2026年度の183設問のうち、67設問で何らかの記述が要求されています。

割合にすると、「67÷183=36.6%」です。

つまり、設問単位で見れば、3問に1問を超える割合で自力記述が必要になります。

 

※なお、2026年度大問Ⅰ設問1のように、同一設問内で記述と選択の両方を求める問題も含めているため、ここでは「記述式67問」ではなく、「何らかの記述を要求する67設問」としています。

 

一方で、2022~2026年度では長文論述はありません。

その代わりに短答記述が多く、選択肢を見て判断できるというレベルでは不十分です。

 

【記述問題では人物・地名・国家・地域関係が約64%】

記述を要求する67設問について、問われた内容を分類すると以下のようになります。 

ChatGPT Image 2026年8月31日 10_15_25

人物が18問、地名・国家・王朝・地域・施設等25問を合わせると、「43/67=64.2%」となります。

ですから、記述を要求する設問では、「誰か」、「どこか」、「どの国・王朝か」などを自力で答える力が特に重要だと分かります。

具体的には、2022年度にネフェルティティ、王莽、趙佗、衛満、マンサ=ムーサ、ルイ=フィリップ、ルイ=ブランなどが直接記述になっています。また、2024年度にはバガン、ペロポネソス、上都、山西、天津、マレーシア、シンガポール、景徳鎮など、地理関係の記述が多く見られます。


これらを考えると、早稲田の他の学部と同様に「人物名→事績」だけでなく、「事績→人物名」、「事件→場所」、「文化→地域」、「交易→都市」といった関連付けて情報を引き出す力が必要となります。連想ゲーム的な力を、瞬発力を伴って身につけることが大切になってきます。

 

【文化史は全体を通して重要】

文化構想学部では、三星堆文化、フェミニズム、『エリュトゥラー海案内記』、ダダイズム、シノワズリ、『イリアス』、『史記』、チュノム、高麗版大蔵経など、文化・思想・文字・作品に関連する事柄について、幅広く直接記述させています。

 

早稲田の文化構想学部は最後の大問がまるっと文化史であることは有名ですが、最後の大問に限らず、文化史に対する深い理解は重要となるでしょう。したがって文化史についても、「選択肢を見れば分かる」ではなく、「名称を正確に書ける」ところまで仕上げる必要があります。

 

【文化構想学部では「テーマ史型」の大問が多い】

早稲田の文化構想学部では、1つのテーマを軸に複数時代・複数地域を横断する「テーマ史型」の出題が多く出題されています。

 

・ 2023年度

○ 中国の貨幣・税制史

:単なる明代史ではなく、貨幣・経済制度というテーマを通して中国史を縦断する問題

○ インド洋交易史

:インド洋という海域を軸に、古代からイスラーム世界、ヨーロッパとの接触までをつなぐ問題

 

・2024年度

○ 感染症史

 :古代ギリシア、ローマ帝国、ユスティニアヌス帝期、黒死病、近代、現代の感染症史

(Covid-19もリード文に登場、現代の問題から長期的な歴史を考える構成)

 

・2025年度

○ 文学・思想史

:古代ギリシア・ローマ文化、中世、ルネサンス、人文主義、近代思想という長い流れを扱う

 

・2026年度

○ メディア・情報

:古代ローマの貨幣、印刷、宗教改革、啓蒙思想、新聞・大衆社会、近現代政治、原発事故

 

このように文化構想学部では、古代史・中世史・近代史という通常の単元区分を越えて、一つのテーマで世界史を再構成する問題が目立ちます。

 

文化構想学部という名称から文化史の多さに注目しがちですが、実際にはそれだけではなく、出題テーマには、美術・文学・思想・宗教・文字・メディアといった文化史的要素の他に、貨幣・税制・海域交易・貿易・社会政策・感染症・植民地支配・民族問題といった視点を含んで出題されます。

そのため、文化・社会・経済・交易・情報などをテーマに、世界史を横断的に問う試験が出されていると考えた方がよいでしょう。

 

また、文化構想学部では、経済史・交易史が軽視できません。

2023年度には、中国の貨幣制度・銀・一条鞭法・インド洋交易などがまとまって出題されています。

2024年度には、中国茶と国際貿易が大問のテーマとなり、茶輸入量などの統計表まで使用されています。さらに最後の大問では、中国陶磁器のヨーロッパへの輸出と、その文化的受容であるシノワズリが扱われています。

 

したがって、貨幣・税制・交易路・港市・商品移動などについては普段から意識して学習しておく方が良いでしょう。特に、「何が、どこからどこへ移動したのか」を意識して学習することが大切です。

 

【中国・東アジアは最重要地域の一つ】

2022~2026年度では、中国・東アジア関係が毎年のように登場しています。

 

・2022年度
○ 三星堆文化、王莽、趙佗、衛満、辛亥革命

 

・2023年度
○ 中国貨幣制度、一条鞭法

 

・2024年度
○ 元・モンゴル、中国茶、山西、天津、景徳鎮、シノワズリ

 

・2025年度
○ 秦、韓・魏・趙、日南郡、李成桂

 

・2026年度
○ 『史記』、漢字、チュノム、高麗版大蔵経

 

ここで気を付けておきたいとことしては、早稲田の文化構想学部では中国を単なる中国王朝政治史としては出題していません。文化構想学部では、「中国―朝鮮」、「中国―ベトナム」、「中国―ロシア」、「中国―ヨーロッパ」などの関係を繰り返し扱っています。中国史では、政治史+文化伝播+対外関係+交易をまとめて学習することが重要です。

 

また、特に朝鮮やベトナムなどの周辺諸国との関係は軽視できません。

朝鮮関係では、「衛満」、「李成桂」、「高麗版大蔵経」などが直接記述になっていますし、ベトナム関係でも、「趙佗」、「日南郡」、「チュノム」などが問われています。趙佗あたりはかなり無茶な設問です。

 

さらに、朝鮮史とベトナム史では、中国との関係のあり方は同じではありません。ベトナムでは、中国王朝による支配と独立、中国文化の受容、独自文化の形成という流れが重要です。一方、朝鮮半島では、中国王朝との外交関係や戦争、文化受容、王朝の変遷などを整理しておく必要があります。したがって、朝鮮史・ベトナム史を中国史の最後に少し確認する程度で終わらせず、それぞれの歴史的展開を区別して学習するとよいでしょう。

 

【地域と地域の接点に注意する】

文化構想学部では、

 

・ 朝鮮

・ ベトナム

・ 東南アジア

・ 中央ユーラシア

・ インド洋

・ ペルシア湾

・ パレスチナ

 

など、複数の地域・文明が接触する場所が繰り返し登場します。

これらの地域は、交易・宗教伝播・文化受容・植民地支配・民族問題などと関連する形で扱われています。したがって、主要国の歴史だけではなく、地域と地域をつなぐ場所を意識して学ぶことも重要です。

 

【特定の時代に限定されない(古代から現代まで幅広い出題)】

文化構想学部では、特定の時代だけを重点的に勉強するのは危険です。

ざっと見ただけでも、時代ごとに以下のような内容が出題されています。

 

(古代)

・ 古代エジプト

・ 古代中国

・ 古代ギリシア、ローマ

・ 考古資料

 

(中世)

・ モンゴル

・ イスラーム

・ 十字軍

・ 東西交流

 

(近世)

・ 大航海時代

・ 貨幣、銀

・ 印刷

・ 宗教改革

・ 海上交易

 

(近現代)

・ 革命

・ 社会政策

・ 植民地支配

・ 思想

・ 民族問題

・ メディア

・ エネルギー

 

したがって、時代そのものを丸ごと手薄にできる部分はほとんどありません。

特に、現代史についてはかなりしっかり出てくるので注意が必要です。

2026年度では、スリーマイル島原子力発電所、PLO、インティファーダなどが直接記述になっています。また、2024年度では、Covid-19までを題材として感染症の歴史が長期的に扱われています。したがって、第二次世界大戦後の歴史について、冷戦・中東問題といった王道はもちろん、環境・エネルギーや民族問題までふくめて、しっかりと通史を完成させる必要があります。

 

【図版・地図などの視覚資料を使用】

文化構想学部では、資料問題も非常に重要です。

2022~2026年度の5年間すべてで、図版・地図などの視覚資料が使われています。

その内容は、「考古資料」、「遺跡」、「宗教建築」、「美術作品」、「世界地図」、「文字」、「版画」、「ポスター」など多岐にわたります。

 

2026年度では、世界地図そのものから古代文明・地域を判断させています。また、大問Ⅲでは、実際の文字図版を提示して判定させています。したがって、文化構想学部では資料集そのものを使った対策が重要です。

 

さらに、図表だけでなく統計資料も出題されます。2024年度大問Ⅲでは、「イングランドの茶輸入量」、「ロシアの茶輸入量」、「インド茶の輸出先」など、複数の統計資料が使用されています。これは数字だけを読み取る問題ではありません。世界の出来事がいつ起こったのかや、国際関係、経済の仕組みを把握して、統計の変化から正しく情報を読み取る力を要求されます。つまり、世界史の知識を土台に、経済の仕組みなどをしっかり「分かって」いなければ解けません。全ての設問がこうしたタイプの設問ではありませんが、こうした設問も出るのだということはつかんでおく必要があるでしょう。

 

【特記:最後の大問の分析:文化・美術・表象・メディア史】

文化構想学部で特に注目したいのが、最後の大問です。

2022~2026年度では、5年連続で最後の大問は文化・美術・表象・メディアに関係する設問となっています。


ChatGPT Image 2026年8月31日 10_15_33

また、最後の大問の設問数は21問となり、全体に対しては「21÷183=11.5%」と約12%となります。これは配点ではなく設問単位での割合ですが、全設問のおよそ9問に1問にあたります。

 

これを多いと取るか、少ないと取るかは人によるかと思いますが、最後の大問以外でも文化史関係の設問が出てくることを考えると、文化史を手つかずのままにしたり、手薄な状態で文化構想学部に挑むのは避けた方が良いと思います。

 

また、2022~2026年度の全てで、最後の大問に図版が使われています。

 

・2022年度:女性アーティストの絵画など

・2023年度:ロマン主義を中心とする複数の作品

・2024年度:フランソワ=ブーシェの「中国の庭」

・2025年度:モネの「印象・日の出」

・2026年度:敦煌の木版画、デューラー、ロートレックなどの版画作品

 

最後の大問では、「普通に受験勉強をやっていてもまず目にすることがない作品と作者」が出てくる一方で、「しっかり資料集なども見ておけば作者と作品名は分かってしかるべきもの」も出てきます。

 

このうち、後者の作者と作品名をおさえておくのは基本です。この基本をおさえておくだけでも、かなり有利に働くことは間違いありません。普段から、特に美術作品については作者・作品名だけでなく、実際に写真などをみて視覚的に把握しておくことが求められます。たとえば、2026年大問Ⅴの図3の絵は、ロートレックの絵を見たことがあれば、即座に「ロートレックだ」と選べますが、そうでない場合には設問の難度が跳ね上がります。

 

ただし、作品と作者を一致させるだけでは不十分な設問もあります。たとえば、ある作品の生み出された時期がいつ頃のことなのかを把握し、作品・文化を社会・交流・技術などの歴史的背景と関連づけてつかんでおかないと解けない設問もかなり見られます。普段から、文化史を政治・社会史から切り離さない、むしろ結びつける意識をもっておくことが大切だと言えるでしょう。

 

さらに、最後の大問は時代・地域が固定されていません。近年の設問を見た場合、近代ヨーロッパ美術は依然として重要ではありますが、それだけ重点的に覚えるという対策は必ずしも適切ではありません。中国、朝鮮、インド、ヨーロッパなど幅広い地域から出題され、時代も古代・中世・近世・近現代にまたがります。

 

むしろ、固定されているのは時代や地域ではなく、文化・美術・表象・メディアを歴史的背景と結びつけて問うという出題傾向です。直近5年間の出題を整理すると、「女性をどのように描くか」、「戦争をどのように描くか」、「外国文化をどのように受容するか」、「異文化が美術にどのような影響を与えたか」、「画像をどのように複製し伝えるか」といった視点が見えてきます。

 

【早稲田文化構想学部「世界史」の勉強法】

これまでの分析を踏まえると、早稲田大学文化構想学部の対策としては、次のようなものが挙げられるかと思います。

 

① 古代から現代まで通史を抜けなく仕上げる

:文化構想学部では古代から現代まで幅広く出題されます。特に戦後史・現代史まで省略しないことが重要です。

 

② 人名・地名・国家・文化事項を自力で書けるようにする

:全183設問中67設問、36.6%で何らかの記述が要求されています。

 

③ 中国・東アジアとヨーロッパは重点的に学習する

:中国では朝鮮・ベトナムとの関係、ヨーロッパでは文化・思想・社会史まで含めて整理する必要があります。

 

④ 東南アジア・イスラーム・中央ユーラシアも手薄にしない

:文化交流や海域交易の問題で重要になります。

 

⑤ テーマ別に知識をつなぎ直す

:通史を完成させた後、あるテーマに基づいて全体を見なおす視点を持っておくと良いでしょう。各種問題集の「テーマ史」の項目がある場合には練習しておきましょう。

 

⑥ 資料集を積極的に使う

:考古資料、美術作品、建築、文字、地図などを実際に見て確認してください。作品名だけでなく、

「時代」、「地域」、「関連国家」、「宗教」、「社会背景」、まで確認すると効果的です。問題集に取り組む際には、地図や図表が全く出てこない問題集だけで済ませることは避けた方が良いでしょう。

 

⑦ 文化・美術・表象・メディアなどは手厚く学習しておく

:最後の大問の対策のため、作者・作品だけでなく、社会背景、文化交流、技法、印刷・複製などまで確認しておくとよいでしょう。

 

⑧ 過去問では周辺知識まで広げる

:文化構想学部では、同じ答えがそのまま再出題されるとは限りません。同じテーマを別の角度から出される可能性を意識して復習しましょう。

 

文化構想学部で特に重要なのは、単語を孤立して覚えないことです。

 

たとえば人物なら、

「人物―時代―地域―事績」

 

地名なら、

「場所―国家―交易―文化」

 

文化史なら、

「作品―時代―地域―社会―文化交流」

 

というように、複数の知識を関連づけて整理しておく必要があります。

 

早稲田大学文化構想学部の世界史では、通史を土台として、短答記述、テーマ史、文化・社会・経済・交易、地域間交流、資料問題、そして最後の文化・美術・表象・メディア系大問への対策を組み合わせることが、得点を安定させるための基本的な戦略といえるかと思います。

【2027年早稲田大学文化構想学部「世界史」出題予想】
文化構想学部は、上記の通り特定の時代や分野を絞ることは非常に難しいです。
そのため、予想と言っても正直当てずっぽうの域を出ませんw まぁ、それは他の学部も同じなのですが。

それでも、2022~2026年度では、文化・社会・経済・交易・情報などを軸に複数時代・複数地域を横断する問題が目立ち、最後の大問は5年連続で文化・美術・表象・メディア系から出題され、図版を使用しています。この前提で、2027年度の出題候補を優先順位順に挙げるとするならば、次のようになります。


① 文化・美術・表象・メディアを扱う大問(最後の大問)

:これは比較的確度が高い予想です。直近5年間の最後の大問と同様に、2027年度も「文化史+図版+歴史的背景」という形式で出題される可能性はかなり高いです。時代的に徐々に古い時代から最近の歴史まできていますので、可能性としては

A、全く別のテーマ・角度からの出題
B、さらに現代に寄せた出題
C、むしろ過去に戻る出題

が考えられますが、AとCの場合には正直全く予測が立たないため、Bについて考えてみたいと思います。


あり得る候補としては、
写真・映画・広告・新聞・雑誌・建築・都市文化・博覧会・大衆文化あたりを警戒したいところです。2026年度で印刷・版画・ポスターまで進んでいるため、その延長として写真・映画・広告など19~20世紀の視覚メディアは相性のよいテーマではないかと思います。

これらのテーマを横断したところに特に注意するのであれば、
近代都市と新しい視覚文化の組み合わせなどは気になるところです。用語で言えば、「パリ」、「パリ改造」、「オスマン」、「ベル=エポック」、「万国博覧会」、「エッフェル塔」、「百貨店」、「ロートレック」、「アール=ヌーヴォー」、「ミュシャ」、「クリムト」、「ガレ」、「ラリック」、「ガウディ」、「ラジオ」、「チャップリン」などは一つの大問にまとめやすいです。


たとえば、19世紀の都市改造→万国博覧会→鉄・ガラス建築→百貨店→広告ポスター→写真→映画→大衆社会などにつなげるというのは文化構想学部の設問の雰囲気とも合致しているように思います。


② 複数時代を貫く「テーマ史型」

:2023年度以降、「貨幣・税制」、「インド洋交易」、「感染症」、「文学・思想」、「メディア・情報」など、テーマを軸に時代を横断する問題が続いていますので、同様のテーマ史は想定しやすいです。


新しいテーマ候補としては、


・交通・移動の世界史

・都市の世界史

・移民・人口移動

・教育・学校

・奴隷・労働

・食文化・嗜好品

・環境・資源

・旅行・巡礼

・帝国と植民地

・通信・情報


などが考えられます。

より具体化するのであれば、

○ 交通・移動

:たとえば、ローマ街道→シルクロード→インド洋航路→大航海→運河→鉄道→蒸気船→航空という横断型大問が作れます。文化構想学部の「複数時代+複数地域」型とは非常に相性がよく、作りやすい設問です。


○ 都市史

:たとえば、アテネ、ローマ、バグダード、長安、ヴェネツィア、ロンドン、パリ、ニューヨークなどを、政治・交易・文化・都市計画・大衆社会でつなぐ問題などは、美術・地図・都市図版も使いやすいため、文化構想学部向きです。


○ 嗜好品・商品移動

:2024年度に茶が大きく扱われたことから、砂糖・コーヒー・茶・タバコ・香辛料・綿花・陶磁器のような商品史も有力です。単なる商品知識ではなく、生産地→交易→植民地→消費文化まで整理しておくとよいでしょう。


○ 宗教の伝播

:宗教史も、文化構想学部では「教祖と教義」だけで止めずに、伝播・建築・美術・書物・巡礼・地域交流などと結び付けて扱いやすい分野です。


○ 帝国・植民地と文化交流

:これもテーマ史として非常に作りやすい分野です。候補としては、スペイン・ポルトガル、イギリス帝国、フランス植民地帝国や、植民地としてのインド・東南アジア・アフリカ、植民地主義と文化、独立運動などは広域の設問が設定しやすいように思います。

こんなところでしょうか。もっとも、先にもお話した通り、「もし考えるとすれば」ならです。あまりあてにしないでくださいw

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早稲田大学文学部の世界史は、出題上の特徴が比較的明確な試験です。

 

2022~2026年度の5年間の問題を設問単位で分析すると、単に「細かい知識が多い」、「文化史が出やすい」といった印象論だけではなく、いくつかの傾向が確認できます。

 

特に重要な点としては、

 

・ 短答記述が約3割を占める

・ 中国・東アジア史が毎年まとまって出題される

・ 文化史・宗教史が試験全体を通して繰り返し出題される

・ 最後の大問は5年連続で文化史系

・ 最後の大問では5年連続で図版が使用されている

・ 人名・地名を自力で書く力が必要

・ 年代・地理・文化を関連づける問題が多い

・ 過去問で出た知識が数年後に再出題されることがある

 

などです。

 

以下、2022~2026年度の問題をもとに詳しく見ていきます。

 

【早稲田大学文学部世界史の基本構成】

2022~2026年度の大問数・設問数をまとめると、次のようになります。

ChatGPT Image 2026年8月29日 23_32_03

5年間の合計は、215問です。このうち、「選択式149問=69.3%」、「短答記述66問=30.7%」となっています。大問数にいくらかの変動はありますが、全体の設問数は41問~46問と40程度で安定しています。大問ひとつあたりの設問数は2022年度の約5.1問から、2025年度には8.2問となっています。直線的な変化とまでは言えませんが、近年は大問数が少なくなる一方、1大問あたりの設問数が増える傾向が見られます。

 

2022~2026年度の文学部には論述はありません。その代わりに多いのが短答記述です。5年間で66問、全設問の30.7%を占めています。また、内容的にも単に基本用語だけを書かせるわけではありません。たとえば2026年度では、

 

・ マスタバ

・ メロエ

・ 澶淵の盟

・ 神宗

・ 大祚栄

・ カーナティック戦争

 

などが記述解答となっており、それなりの難度の言葉でも書かせに来ています。

 

マスタバあたりは一応文学部の2015年問題で出題がありますが、かなり無理があります。こういうものを大問1の問1に持ってきて受験生の心を砕きに来るあたり、早稲田の文学部は受験生のメンタルを試しているのではないかと疑いたくなります。

 

ただまぁ、早稲田大学の考古学系は昔からエジプト調査・考古学研究の系譜は強いので(さくじいとか)、エジプト系はハードル高くなりがちなのかもしれません。

 

脱線しましたが、早稲田の文学部は、他の学部同様に「選択肢を見れば分かる」レベルで止めるのではなく「自力で用語を再生できる」レベルまで知識を引き上げることが重要です。

 

【短答記述問題の割合について】

5年間で短答記述として出題された66問を、今回の分析では「人名」、「地名・都市・地域等」、「その他」に分類しました。結果は以下の通りです。

 

人名:25問(37.9%)

地名・都市・地域等:17問(25.8%)

その他:24問(36.4%)

 

人名と地名のみで短答記述全体の63.6%となります。つまり、「誰か」または「どこか」を自力で答える問題が多く出題されることが分かります。2025年度だけを見ても、班超、光緒帝、フェルナンド、チョーサー、ウィクリフ、ダーウィン、ユスティニアヌスなどが直接記述になっています。

人物については、「人物名→事績」だけでなく、「事績→人物名」の方向でも答えられるようにしておく必要があります。

 

【中国・東アジア史は5年連続でまとまって出題】

早稲田大学文学部では、中国・東アジア史も重要です。

中国・東アジアを主軸とする問題を分類して数えたところ、

 

2022年度:6問

2023年度:12問

2024年度:11問

2025年度:11問

2026年度:8問

 

となり、合計48問でした。全215問の約22.3%が中国や東アジアを主軸とすつ大問からの出題となります。

 

文学部の中国・東アジア史で重要なのは、単純な王朝通史だけではないという点です。

2023年度大問Ⅱでは、六朝文化、中国文化の朝鮮半島・日本への伝播、唐代の国際交流などが扱われています。本文でも、漢字・儒教・漢訳仏教・律令などを通して東アジア文化圏が形成されたという視点が示されています。

 

さらに同年度の大問Ⅴでは、

 

・ 全真教

・ 白蓮教

・ 中国におけるイスラーム

・ カトリック

・ 祖先祭祀

・ 顧炎武

 

などが問われています。

これを見るに、中国の歴史については政治史だけでなく文化史・宗教史・思想史や対外関係などもまとめて学習することが重要です。

 

【文化史・宗教史は試験全体を通して繰り返し出題】

早稲田大学文学部の世界史で特徴的なのが文化史です。

最後の大問に文化史が出題されていることに目が向きがちですが、他の大問にも数多く文化史が出題されています。文化史・宗教史は試験の一部だけに限定された分野ではなく、試験全体を通して繰り返し登場する分野と考えた方がよいでしょう。

 

特に、各年度の最後の大問では必ず文化史が図版つきで出題されています。

 

2022~2026年度の最後の大問のテーマを整理すると、次のようになります。

ChatGPT Image 2026年8月30日 00_51_31

また、最後の文化史大問は特定の時代に固定されておりません。たとえば、

 

2023年度

:「ユダヤ教→ビザンツ帝国→ガンダーラ・マトゥラー」と展開

(偶像崇拝禁止、イコノクラスム、仏像成立を一つのテーマで結ぶ)

 

2024年度

:古代の戦争表現からノルマン征服、バイユー=タペストリーへと展開

 

2025年度

:ビザンツ世界から近現代の政治的・公共的な美術表現へ広げる

 

2026年度

:宗教美術、オランダ絵画、近代の写真などを扱う

 

そのため、「ルネサンスだけ重点的に覚える」などの局所的な対策では不十分です。むしろ、古代から近現代までの主要な文化事項を、宗教・政治・都市などの背景と結びつけて理解することが重要です。また、図版の多用などを考えるに作品名と作者名だけを覚えるのではなく、作品・図版を目で見て把握し、時代・地域・宗教・政治的背景と関連づけて確認する必要があります。

 

資料集を見る際には、「この作品は何か」だけではなく、「いつの時代か」、「どの地域か」、「どの国家や宗教と関係するか」、「どの歴史的出来事と結びつくか」まで確認しながら学習する必要があるでしょう。

 

さらに、問われる文化史の範囲はかなり広くとられています。重要なのは、「宗教・宗教制度」、「美術・建築・図像」、「思想・哲学」、「文学・著作」、「科学・学術」、「文字・書物・印刷」などです。たとえば2023年度では、グーテンベルクの活版印刷から宗教改革、禁書、さらにイエズス会による中国での漢訳出版まで一続きのテーマとして扱っています。また同年度のイスラーム史では、ギリシア学術の受容、イスラーム科学、農作物や砂糖の伝播などが扱われています。つまり文学部では、文化がどのように形成され、伝わり、受容され、統制されたかという視点も重要です。

 

【宗教史や文化交流史などの重要性】

早稲田大学文学部の出題では宗教関係の出題も目立ちます。

たとえば2023年度だけでも、

 

・ 仏教

・ 全真教

・ 白蓮教

・ イスラーム

・ カトリック

・ 教皇権

・ 修道院

・ 宗教改革

・ イコノクラスム

・ 仏像成立

 

などが扱われています。

中国王朝の宗教政策そのものを扱った大問もあり、本文では度牒・賜額・宗教勢力の公認や統制などが説明されています。したがって、宗教史を文化史の補足程度に扱わない方が良いでしょう。イスラーム史も繰り返し出題されているため、王朝だけでなく、宗教制度・学術・建築・交易などと結びつけて学ぶ必要があります。

 

また、文明間の交流を扱った問題も目立ちます。2023年度大問Ⅱでは、漢字・儒教・漢訳仏教・律令などの中国文化が東アジアへ広がる過程が扱われています。同年度大問Ⅳでは、イエズス会士による西洋文明の東アジアへの伝達が扱われています。したがって、各地域史を完全に分離して覚えるのではなく、「どこからどこへ何が伝わったか」を意識して整理することが大切です。

 

【年代問題は年号暗記だけでは対応しにくい】

早稲田文学部では、出来事の前後関係を判断させる問題も見られます。

2023年度では六朝文化について、「王羲之」、「陶淵明」、「顧愷之」、「昭明太子」を年代順に判断させています。また百年戦争関連でも、「クレシーの戦い」、「黒死病」、「ジャックリーの乱」「オルレアンの戦い」の前後関係を判断させています。こうした設問を年号暗記だけで対応することは難しいため、個々の年号だけでなく、同じテーマに属する人物・事件を時系列で整理しておくことが大切です。

 

【知識だけでなく、関連性を問う視点が重要】

分析したところ、短答記述66問のうち17問は地名・都市・地域等に分類される問題でした。実際に出題されたものを列挙すると

 

・ 南京

・ 揚州

・ シチリア

・ カラコルム

・ ブランデンブルク

・ キール

・ ポンペイ

・ ヘースティングズ

・ レヒフェルト

・ テノチティトラン

・ メロエ

・ イェルサレム

 

などが記述解答になっています。こうした問題に対処するためには、「事件→場所」、「人物→地域」、「文化財→所在地」という方向でも答えられるようにしておくことが重要です。

 

また、事柄についても比較的細かな事項が出題される一方で、基本事項も多く問われます。たとえばグーテンベルクについても、単に「活版印刷」と覚えるだけではなく、『四十二行聖書』や印刷機などについて複数の説明を比較して判断する問題になっています。したがって、細かな用語を大量に増やすことだけを優先するより、主要事項の関連知識を一段広く、正確に固めることが重要です。

 

【過去問で出た知識が再び出題されることがある】

過去問研究も重要です。5年間を比較すると、同じ知識そのものが再び正答になった例があります。代表的なのが、澶淵の盟です。2022年度大問Ⅳ設問5で「澶淵の盟」が正答となり、2026年度大問Ⅱ設問3でも再び同じ語が記述解答になっています。また、ワクフも2024年度大問Ⅴ設問5で出題され、その後2026年度大問Ⅲ設問1で再び正答になっています。したがって、「一度出た用語はもう出ない」とは考えない方がよいでしょう。

 

また、上記のように完全に同じ答えが再出題されるだけではありません。2023年度では、14世紀のオクスフォード大学で教皇権を批判した神学者について、その人物に関する説明を選ばせています。2025年度では、ウィクリフそのものを直接記述させています。

また、「2023年度:イコン・イコノクラスム」、「2025年度:ユスティニアヌス」、「2026年度:ハギア=ソフィア聖堂」というように、ビザンツ帝国の宗教・文化に関する知識も別の角度から繰り返されています。したがって過去問に取り組む際は、正解だけを覚えるのではなく、その周辺知識まで広げて復習することが重要です。

 

【早稲田文学部世界史の勉強法】

以上の分析を踏まえると、対策は次のように進めるのが効果的です。

 

① 教科書・標準的な参考書を使って通史を抜けなく固める

:細かな問題もありますが、まず主要事項を正確に理解していることが重要です。

 

② 人名・地名・事件名を自力で書く練習をする

:短答記述は全体の30.7%を占め、本記事の分類ではその63.6%が人名・地名系です。

 

③ 中国・東アジア史を重点的に学習する

:中国・東アジアを主軸と分類した大問だけでも、全215問中48問、22.3%を占めています。

 

④ 文化史・宗教史を後回しにしない

:最後の大問は5年連続で文化史系であり、図版も5年連続で使用されています。

 

⑤ 資料集を使って図版・地図を確認する

:絵画・彫刻・建築・宗教美術を、時代・地域・歴史的背景と関連づけて確認しておくとよいでしょう。

 

⑥ 年代はテーマごとの前後関係で整理する

:政治史だけでなく文化史人物も年代整序の対象になっています。

 

⑦ 過去問の正答から周辺知識を広げる

:澶淵の盟やワクフのように、実際に同じ知識が数年後に再出題された例があります。

 

早稲田大学文学部の世界史では、通史を土台として、中国・東アジア史、文化史・宗教史、短答記述、資料集を使った図版・地理対策を重点的に仕上げることが、得点を安定させるための基本的な対策といえるでしょう。

ただし、こちらの出題傾向はあくまで直近5年間の傾向を分析したもので、それ以前の問題なども含めればまた別の傾向が見える可能性もあります。また、出題傾向はあくまで傾向であって、次年度以降の出題を保証するものではありません。重点的に対策する箇所は意識しつつも、そこだけの対策で満足しない方が良いでしょう。

【
2027年早稲田大学文学部「世界史」の出題予想】
あくまでも出題傾向は傾向なので、絶対に出るとは言えませんが、仮に自分が2027年の早稲田大学文学部の世界史試験を受けることになった場合、特に気を付けておきたい箇所をあげるのであれば、以下のような内容になるかと思います。

① 明・清代の社会・経済・対外交易
中国史は毎年重要です。
近年は思想・宗教・宋の国際関係などが中心で、明・清の社会経済史にはまとまった出題余地があります。

② 鄭和・朝貢貿易・海禁
東アジア+交流史+地理を組み合わせやすく、文学部型のテーマになりやすいと思います。

③ 広州・マカオ・東アジア海域交易
2023年度でも広州・揚州・泉州など港市とムスリム商人を扱っており、都市・交易の再利用性が高いです。


④ 清朝の対外関係とアヘン戦争前後

中国史の中で2022~26年度の大問主題として近代中国は比較的手薄です。

⑤ 洋務運動・変法運動・辛亥革命
中国思想・政治改革・西洋知識受容という文学部好みのテーマに接続しやすい内容です。

⑥ 宋学・朱子学と東アジアへの伝播
中国思想史+朝鮮・日本への文化伝播を結びつけられます。
2023年にも東アジア文化圏形成は大きく扱われました。

⑦ 石窟寺院(敦煌・雲岡・龍門)、北魏
2023年に莫高窟が実際に問われており、仏教・美術・地理を同時に問える内容です。

⑧ ビザンツ美術・イコン・モザイク
2023・2025・2026年度に関連知識が繰り返し登場しています。

⑨ ロマネスク・ゴシック建築
最終文化史大問の図版題材として使いやすく、建築物から時代・宗教・都市を問えます。


⑩ ルネサンス美術と人文主義
図版を用いた文化史の典型です。作者・作品だけでなく都市・パトロン・思想まで広げられます。

⑪ 宗教改革と印刷文化
2023年に「グーテンベルク→宗教改革→禁書→中国への漢訳出版」までひと続きで出題されました。
文学部の「知識伝播」型を代表する内容です。

⑫ イエズス会と東西文化交流
イエズス会宣教師、徐光啓、西洋科学、漢訳など。中国史とヨーロッパ文化史をつなげやすいです。
また、意外に苦手にしている受験生も多く、一定の問題レベルが確保できる内容です。

⑬ イスラーム建築や社会制度(モスク・マドラサ・ワクフなど)
ワクフは2024・2026年に再出題されています。
宗教制度+建築+都市という出題が可能です。

⑭ イスラーム科学とギリシア学術の継承
2023年度でイブン=ルシュド、フワーリズミーなどを扱い、文学部の交流史の中心的な例です。

⑮ 12世紀ルネサンス
⑭と接続しやすい内容です。


2027年度の文学部では、単語単位で「これが出る」という確度は高くありませんが、中国・東アジア、宗教、文化交流、建築・図像の4本柱から出題される可能性は、直近5年間の傾向から相対的に高いと考えます。特に絞るなら「明・清~近代中国」と「宗教建築・美術史」の2つのテーマは気にかかります。

ただし、繰り返しますがあくまでも出題傾向、しかも直近5年分の分析からのものですので、当たればラッキーレベルの予想です。

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早稲田大学商学部の世界史は、単純に「細かい知識をたくさん覚えればよい」というタイプの試験ではありません。

 

2022~2026年度の5年間について、通常問題245問と論述5題を一問ずつ確認すると、人物・制度・年代・地理・文化史などの知識を、互いに正確に結びつけて使う力が強く求められていることが分かります。

 

また、大問ごとの地域や形式にもかなり安定した傾向があります。

 

ここでは、2022~2026年度の過去問分析をもとに、早稲田大学商学部の世界史でどのような問題が出題されているのか、どのような対策が有効なのかを、具体的な数値とともに整理します。

なお、本記事では、大問Ⅳの空欄1つを1問として数え、論述は通常問題とは別に検証しています。

 

【早稲田大学商学部・世界史の基本構成】

近年の世界史は、毎年ほぼ次の構成になっています。 

ChatGPT Image 2026年8月29日 06_38_54

論述問題以外の問題(通常問題)245問のうち、180問が選択式、65問が記述式空欄です。

割合にすると、選択式が73.5%、記述式空欄が26.5%となります。つまり、通常問題のおよそ4問に1問は、選択肢を見て答えるのではなく、世界史の用語を自力で思い出して書かなければなりません。

 

そのため、早稲田商対策では、「選択肢を見れば分かる」という状態だけでは不十分です。重要用語については、自力で再生できるところまで仕上げる必要があります。

 

また、2022~2026年度の大問テーマを並べると、かなり明確な傾向が見えてきます。

ChatGPT Image 2026年8月29日 06_46_02
この表から分かることは以下の通りです。

 

① 大問Ⅰは5年連続で西ユーラシア系

:2022~2026年度では、大問Ⅰは直近の5年では連続で西ユーラシアを中心とするテーマになっています。ただし、一国の通史をそのまま問うのではなく、政治・経済・文化・宗教・地理をまたいで出題される点が重要です。たとえば、2023年度では、中世ヨーロッパの農業・都市・十字軍・シャンパーニュ大市・ハンザ同盟などを一つの大問の中で横断的に扱っています。

 

② 大問Ⅱは5年連続で中国・東アジア系

:さらに明確なのが大問Ⅱです。大問Ⅱでは、

2022年度:モンゴル帝国と中国社会

2023年度:清朝の版図拡大と多民族統治

2024年度:中国・東アジア史

2025年度:中国とアジア海域交易

2026年度:唐の興亡

 

となっています。

2023年度では、女真・モンゴル・チベット・新疆・朝貢関係など、清朝を多民族帝国として理解しているかが問われています。

 

5年間の出題のうち、大問Ⅱで出題されている問題は「12問×5年=60問」あります。そのため、少なくとも2022~2026年度については、中国・東アジア史は優先度の高い対策分野と考えてよいでしょう。

ただし、大問内では中国周辺地域にも広がるため、60問すべてが純粋な中国史問題という意味ではない点には注意が必要です。

 

大問Ⅰ・Ⅱだけで通常問題の約半分あります。つまり、通常問題の約半分を占める大問Ⅰ・Ⅱで、西ユーラシア系と中国・東アジア系という地域配置が5年連続していることになります。

 

一方で、大問Ⅲはテーマ史的な出題が多く、年度によってテーマが大きく変わります。

2023年度では「革命」を軸に、アジア・アメリカ・イギリス・フランス・ロシアまで横断しています。複数の革命を年代順に並べる問題も出題されています。2025年度は戦争・軍事技術と国家形成、2026年度は帝国主義・植民地支配・抵抗が中心です。

したがって大問Ⅲは、一国の通史よりも、同じテーマを複数地域・複数時代にまたがって理解しているかを見る大問と考えるとよいでしょう。

 

また、大問Ⅳは早稲田商で特徴的な長期テーマ史となり、13問の記述式空欄と100~120字程度の論述問題という形になっています。論述5題まで含めると、5年間で大問Ⅳには70問相当が配置されています。そのため、大問Ⅳは「最後に論述が1問ある大問」ではなく、試験全体の4分の1以上を占める大規模なテーマ史問題として対策すべきです。

2023年度では、古代アテネの民主政からアメリカの参政権、さらに現代のSNSまで一つのテーマでつながっています。このように、大問Ⅳでは、現代までつながる問題が毎年見られる傾向があります。たとえば、

 

2022年度:ファーウェイ

2023年度:CTBT・イラク戦争・SNS

2024年度:TPPなど現代の国際政治・経済

2025年度:基軸通貨・女性解放

2026年度:フェンタニル・現代の政党対立

 

などが出題されています。

したがって、早稲田商では、世界史の学習を第二次世界大戦や冷戦終結で止めないことが重要です。ただし、単なる時事雑学ではなく、歴史的なテーマの延長として現代を理解することが求められています。また、最低限のニュースなどは確認しておきましょう。

 

【年代は「年号暗記」だけでなく時系列が重要】

年代・時系列に関係する問題は5年間すべてで確認できます。

 

これらの問題では、単純な年号だけでなく、複数の出来事の前後関係を判断する問題も見られます。たとえば、2023年度の問題では、「立法議会→国民公会→ジロンド派追放→バブーフ処刑」というフランス革命期の政治過程が問われています。また、アジアや南北アメリカの革命を年代順に判断する問題もあります。

 

このため、「1789年=フランス革命」のような一点的暗記だけでなく、同じテーマに属する出来事の前後関係を整理することが重要です。

 

【地理上の知識も5年すべてで必要】

地理知識を必要とする問題も5年間すべてに見られます。例として、

 

・エルベ川とハンブルク

・リューベックとハンザ同盟

・ハンザ商館としてのベルゲン

・アルタン=ハンとフフホト

・東晋、南朝の都としての建康

・洛陽と竜門石窟

・安南都護府の位置(ベトナム北部)

・ニューアムステルダム(ニューヨーク)

 

などがあります。2023年度では、エルベ川・リューベック・ベルゲンが直接問われています。

したがって、早稲田商対策では、世界史用語集だけでなく歴史地図や資料集を併用するなど、地理的把握をしっかりしておくことが必要です。

ただし、
アルタン=ハンとフフホトなどはやや無茶な要求ですので、こうした「他の受験生も解けなそうな問題」まで気に病むことはありません。

 

【人物は「名前+事績」で覚える】

5年間を通して、人物と事績・著作・制度を結びつける問題が繰り返されています。

たとえば、

 

・トゥキディデス:『歴史』(ペロポネソス戦争)

・法顕:『仏国記』

・楊炎;両税法

・顧炎武:『日知録』

・マルグレーテ:カルマル同盟

 

などです。

 

そのため、早稲田商では人物名を必ず関連事項と結び付けて覚える習慣をつけることが重要です。設問自体は基本的かつ脊髄反射的な一問一答的発想で答えられるものが多く、複雑な思考を必要とするものではありません。

 

【文化史が比較的重要】

商学部という名称から経済史中心の試験を想像するかもしれませんが、実際には文化・宗教・学術系の出題もかなり見られます。2022年度はルネサンス、2025年度はキリスト教・教会史、2026年度は文字の発達・伝播が大問テーマになっています。

 

つまり、少なくとも5年間のうち3年分で、文化・宗教・学術系の内容が大問の中心になっています。そのため、文化史や宗教史を受験直前まで後回しにする学習法は避けた方が良いでしょう。

  

【過去問で出た事項が別角度から再び出題】

5年間の比較では、同じ人物・制度・テーマが別年度に異なる角度から再び問われる例も確認できます。たとえば、以下のようなものが確認できます。 

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重要なことは、「一度出題された重要人物・制度・テーマが、別角度から再び問われることがある」という点です。特に、2024年度で選択問題として扱われたカンザス=ネブラスカ法は、2026年度にはミズーリ妥協との違いと南北対立への影響を説明する論述の中心事項になっています。

 

したがって、過去問演習の際には、答えだけを覚えるのではなく、「年代」、「内容」、「原因」、「結果」、「関連人物」、「関連事件」などの周辺事項や関連事項まで確認する価値があります。

 

【論述問題は5年連続で100~120字】

論述問題を比較すると、形式と要求にかなり明確な傾向があります。 

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2022年度では、アメリカ金融機関からの借入、累積債務、原油価格低下、アメリカの金利上昇をメキシコ債務危機につなげています。

 

2023年度では、ジャクソン当選の背景について、西部開拓・自営農民・産業資本主義・労働者・白人男子普通選挙を因果的につないでいます。

 

2024年度では、サン=ステファノ条約から列強の反発、ベルリン条約、ロシアの影響力後退までを説明しています。

 

2025年度は新移民の特徴から反発、1924年移民法による規制までを説明しています。

 

2026年度も、ミズーリ妥協とカンザス=ネブラスカ法の違いから奴隷制拡大問題、共和党結集、南北緊張へつなげています。

 

論述問題の傾向としては、「原因→変化→結果」あるいは、「制度A→制度Bとの違い→その影響」などが出題の中心となる傾向があるため、こうした関係を短くまとめる練習が有効です。

 

また、過去5年間の出題に関する限りでは、「2023年度:ジャクソン」、「2025年度:新移民」、「2026年度:奴隷制問題」と3題が明確なアメリカ史であるため、アメリカ史については重点的に確認しておきたいところです。(2022年度のメキシコ債務危機も、アメリカの金融機関や金利政策との関係が重要でしたので、そこまで含めれば8割がたがアメリカ史という見方も可能です。)

 

また、論述以外の通常問題でも、独立・ハミルトン・ニューヨーク・奴隷制・黒人参政権・政党政治・現代社会の分断などが繰り返されています。中国・東アジア史に加えて、アメリカ史も重点的に学習したい分野と考えてよいと思います。

【2027年早稲田大学商学部「世界史」出題予想】

あくまでも出題傾向は傾向なので、絶対に出るとは言えませんが、仮に自分が2027年の早稲田大学商学部の世界史試験を受けることになった場合、特に気を付けておきたい箇所をあげるのであれば、以下のような内容になるかと思います。

① 宋代の政治・経済・社会
中国史の中で直近5年の独立テーマとしては手薄です。
また、「唐→五代」までを2026年に扱ったため、その次の時代として自然な箇所です。

② 王安石の新法
①と同じですが、宋史の中心事項であり、かつ財政・経済政策という商学部との相性も良いです。


③ 宋と遼・西夏・金の国際関係
中国を周辺諸民族との関係から扱う商学部の出題スタイルに合うと思います。

④ 宋代の商業・都市・紙幣
交子・会子、開封・臨安、海上交易など「経済史」と接続しやすい箇所です。

⑤ 明末清初~清代の経済・貿易
2023年の清朝は帝国統治中心だったため、経済面は再利用余地が大きいかと思います。


⑥ 朝貢・冊封と東アジア国際秩序
2024~26年の東アジア史を横につなぐテーマとして出題しやすい内容です。

⑦ アメリカ独立革命と合衆国憲法
大問Ⅳの最重要基礎事項です。2022・23・26年にも関連事項が繰り返し登場しています。

⑧ ハミルトンと連邦派
2022年にハミルトンが直接出題済みです。連邦派と、それに対抗する集権主義などがありえます。

⑨ ジャクソニアン=デモクラシー
2023年度論述そのものの周辺領域で、過去問知識の再利用候補です。


⑩ 南北戦争・奴隷制・再建期
2026年に中心テーマ化されたため、周辺事項を別角度で再利用する可能性があります。

⑪ ミズーリ協定・カンザス=ネブラスカ法
同じく、2026年度論述の核心です。商学部は過去問事項を数年後に再利用することがあります。

⑫ アメリカの工業化・独占資本・反トラスト法
2022・24・25年度の経済史・金融史との接続性が高い内容です。

⑬ ニューディール政策
アメリカ経済史の王道の大テーマですが、直近の大問Ⅳでは主役になっていません

⑭ ブレトン=ウッズ体制・ドル基軸通貨体制
2025年に「基軸通貨」、2022年にGATT・ケネディ=ラウンドが出ており再整理価値が高い。
また、最近の円安などの話題とも合います。

⑮ GATT・WTOと自由貿易
商学部との親和性が非常に高いです。

⑯ プラザ合意
出題されるとされるとすれば単問と思いますが、
最近の為替をめぐる動きとも合います。

⑰ 
産業革命とイギリス経済

2024年度は帝国主義・金融資本、2026年度も帝国主義を扱ったため、その前提となる産業革命は重要です。


商学部は一つのテーマから前後数世紀へかなり広く設問を振るため、予想事項を中心に周辺知識まで広げておくことが重要です。特に「宋史」と「アメリカ経済史」の2本は、2027年度入試では注意したい箇所です。

 

【早稲田大学商学部・世界史の対策:まとめ】

2022~2026年度の数量分析と問題内容の精査から、特に次の点を重視したいところです。

 

1. 中国・東アジア史を優先度の高い分野として仕上げる

2. 大問Ⅰ対策として西ユーラシア史を広く押さえる

3. アメリカ史は近現代まで丁寧に学習する

4. 文化史・宗教史を後回しにしない

5. 重要用語は選択肢で分かるだけでなく自力で書けるようにする

6. 年代は単独年号だけでなく時系列でも整理する

7. 歴史地図を使って都市・地域を確認する

8. 人物は事績・著作・制度とセットで覚える

9. 過去問で出た事項は周辺知識まで復習する

10. 論述では原因・変化・結果を100字前後でまとめる練習をする

 

直近5年間についてみた場合、大問構成や出題分野にはかなり安定した特徴が見られます。

 

一方で、テーマそのものは幅広く、同じ人物・制度・事件も異なる角度から問われることがあります。

そのため、「頻出用語だけを覚える」のではなく、「頻出する知識のつながり方」を理解することが、早稲田大学商学部の世界史対策では特に重要だと考えられます。

 

ただし、こちらの出題傾向はあくまで直近5年間の傾向を分析したもので、それ以前の問題なども含めればまた別の傾向が見える可能性もあります。また、出題傾向はあくまで傾向であって、次年度以降の出題を保証するものではありません。重点的に対策する箇所は意識しつつも、そこだけの対策で満足しない方が良いでしょう。

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今回は早稲田大学文学部の簡単な出題傾向分析をしてみました。とりあえず、過去5年分について、各大問ごとの主要テーマと、出題ごとの範囲分析を行いました。毎度のことですが、分類はやや粗い部分もあるかと思いますので、必ずしも厳密なものではありません。たとえば、選択肢が複数あって、それら選択肢が「古代~現代」にわたっている場合などは分類がしにくいのですね。ただ、早稲田の文学部はわりとそのへんはっきりしていて、一つの設問の中に複数の範囲が含まれるような問題はあまり出題されていません。それでも複数の範囲にわたっている場合には、大問の主要テーマ、出題の内容、解答などから照らして妥当だと思われる範囲に振り分けています。

(大問ごとの主要テーマ)
早稲田文学部出題傾向分析2
:大問1でこれでもかと古代オリエント~地中海世界が出てきますので、古代オリエント、古代ギリシア、ヘレニズムあたりは必須です。一方で、アケメネス朝や古代ローマはあまり出題頻度が高くないような印象を受けます。よく出てくるのは、シュメール人以降の古代オリエントにおける諸民族の興亡や活動、古代エジプト関連の出題でしょうか。
他によく出題されるのは中国史の中でも秦・漢・魏晋南北朝・隋・唐・五代・元・明~清初でしょうか。意外に宋がらみはそんなに出題されていない(皆無ではないですが)印象があります。また、中国の近現代史(清朝末期以降)もあまり出ている印象はありません。明朝ではイエズス会宣教師がらみの出題がわりと高い頻度で出てくる印象です。
また、ヨーロッパ中世史も高い頻度で出題されます。2019年こそフランク王国が出てきましたが、それ以外はおおむね10世紀以降、西ヨーロッパの教会制度が整備されて以降の歴史が多く出題されている印象です。また、ヨーロッパ近世史の方ではイギリス・フランス関連の歴史はよく出てきます。特にルイ14世期の周辺の歴史は必須かと思います。中世については、フランク~ルネサンスまでの歴史をドイツ・イタリア・フランス・イギリスなどを中心に(一部、ビザンツ関連の出題がありますが、基本問題です。)学習し、近世史についてはルネサンス・大航海時代・宗教改革のあたりからスペイン継承戦争のあたりまでを手厚く学習しておくと良いでしょう。
近代史・現代史についてはわりとテーマが散っている印象です。それほど難しい問題は出題されず、全て基本問題の範囲内であるように思います。ヨーロッパによるアジア・アフリカの植民地化と民族運動、二つの世界大戦、冷戦に関連して、代表的なテーマを抑えておくとよいでしょう。

(各設問の出題範囲分析)
早稲田文学部出題傾向分析1
:設問ごとに、解答がどの範囲に関係しているものかを分析したのが上の表になります。範囲については山川出版社『詳説世界史研究』2017年度版の章立てを利用しました。もっと細かく分けても良かったのですが、煩雑になってしまうので。また、厄介なことに2017年版『詳説世界史研究』は19世紀・20世紀の文化史をごそっと削ってしまったので、載っていないものもありました。(なんとシュールレアリスムが索引に載っていない!セザンヌやピカソすらない![一応、ピカソはゲルニカの注のところに名前だけ出ていましたが、キュビズム云々は影も形もない。] それなのに「世紀末文化とベルエポック」とかいう項目があったりする[汗]。)こうした掲載されていないものについては、山川用語集の掲載場所から妥当だと思われる範囲に振り分けています。
過去5年間についてですが、ご覧の通り先史時代からの出題はありません。また、意外に19世紀以降の歴史はそれほど出題頻度が高くありません。(2023年に「近代ヨーロッパ・アメリカ世界の成立」で8題出ているのも、ナポレオン関連(テルミドールのクーデタ~ブリュメールのクーデタまで)がごそっと出たためで、どちらかというとフランス革命の延長線上にあるものと考えられます。また、イスラーム史についても申し訳程度にしか出てきていません。(イスラーム史は昨年度に限って言えばいつもよりもやや多かったです。また、この5年でカーリミー商人がたしか2回出て来ました。)
特に出題頻度の高かった(全体に対する割合が10%を超えてきたものは黄色で示しました)範囲は、大問ごとの主要テーマの方で印象として語ったように、やはり「オリエントと地中海世界」、「内陸アジア世界・東アジア世界の形成」、「ヨーロッパ世界の形成と発展」、「近世ヨーロッパ世界の形成」からの出題が多かったです。

(その他)
:早稲田大学文学部の世界史では、2019年までは数十字の論述問題が出題されていましたが、2020年以降は論述問題の出題はありません。(ちなみに、2019年の問題はアカプルコ貿易が中国[明]の社会経済に及ぼした影響について90字で書かせるものでした。[指定語句はラテンアメリカ・マニラ・一条鞭法]) また、これまで大問は8題(まれに9題)の構成でしたが、2023年のみ7題での構成となっています。どこかの大問で文化史についての出題が毎年出て来ますが、印象派など近現代の美術史を多く出題する文化構想学部の出題とは異なり、文学部の文化史問題はわりと多くの時代から、まんべんなく、基本事項を聞いてくるもので、特別な対策は不要であるように思います。「あまりにも文化史ができない」という人だけ、各時代の文化史の基本事項を簡単におさらいしておくと良いでしょう。

以上、簡単な分析をしてまいりましたが、これらはあくまで過去5年分程度の簡単な分析にすぎません。「出題傾向」などというものは時としてガラっと変わってしまうこともありますので、その辺のところをよくご理解の上、参考になるものがあればお使いください。
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