(記事に誤りがありましたので、訂正いたしました。[2017.2.16、訂正箇所:大問Ⅰ、設問1] ご指摘ありがとうございました!)
次々に出てきましたので、とりあえず早稲田の文構について解いてみました。理屈は抜きにして大問ごとの表をお見せした上で、注意すべき点と萌えた点について述べていきたいと思います。色分けは同志社の時と同じく、水色:基本問題、白:標準問題、ピンク:やや難、黄色:難しい、としています。問題文自体は各予備校HPなどからDL可能ですので、そちらをご参照ください。(早稲田の問題については、問題概要を示すとその比重が大きくなりすぎ、「解き方」や「考え方」を示すという趣旨から外れると判断しましたので割愛します)
(大問Ⅰ・Ⅱ)
やっちゃいましたね。初っ端から飛ばしてしまいましたよ。いきなり第一問からミスってしまいました(汗) 最初この「ハンムラビ法典碑には( A )神を崇拝するハンムラビ王の姿」が描かれているとあるAには「太陽神シャマシュ」から「シャマシュ神」が入るものだと思って、ずいぶん難しい問題をだすものだなぁと思っていたのですが、お読みいただいている方からご指摘をいただいた通り、「インカ文明でも王は( A )の子と考えられていた」とありますので、( A )に入るのは「太陽」で良いのですね。すみません、昨日のうちにご覧いただいた方にはご迷惑をおかけしてしまいました。訂正いたします。(表の方も合わせて基本問題[水色]に訂正いたします)
個人で急ぎで作っておりますので、他にももしかするとミス等あるかもしれませんが、ご容赦いただければと思います。基本「HANDは信用がならない。」とお考えいただいて、過度のご期待をされないくらいで丁度良いかと思いますw
(Wikipedia)
ところで、問題に出てくるハンムラビ法典が上の写真です。この碑文が置かれていたのはバビロンのマルドゥク神殿(後に奪われるので発見地はスサです)なのですが、レリーフに描かれているのは正確には太陽神シャマシュです。授業では一応写真示しつつ名前も毎回伝えているのですが、さすがに覚えている人の方が少ないでしょうねぇ。
大問1で難しいなと感じた問題は設問5の「天子」に関する問題ですね。引っかかって始皇帝選んでしまう人が続出しそうです。一応、用語集にはちゃんと出ています。周代の周公旦(武王の弟)あたりの思想から発展して使われるようになったようですが、当然そんなことを知っている人はいないでしょう。『詳説世界史研究』もどちらかというと話の流れを重視しますので、サッと見た限りでは触れていませんね。私は「ああ、西周かな」と何となく気づきましたが、それも勉強で気づいたというよりは最近読んでいる『達人伝』という戦国時代末期をテーマにしたマンガに周王朝の末裔が出てきて、それが「天子」呼ばわりされているから「ああ、そういえばw」みたいな形で気づきましたw
ただ、難しいのはこの1問だけで、あとの問題は早稲田としては基本問題でしょう。
(大問3・4)
(大問5・6・7)
後半は手ごたえがありましたね。特に、大問の5はしっかりとした知識がないと正解にたどり着けない問題が多く、この設問でかなり差が付きそうです。正答を導くためのヒントは表の方に示しておきましたので参考にしてください。それに対して大問の6は地図を使っての出題の分、設問の内容自体は基礎的なものが多かったように感じました。
文化構想らしさが出たのは大問7ですね。
これは萌えますねw
全然世界史の受験勉強とは関係のないところから問題を出してきましたw これは何ですか「受験勉強にばかり一生懸命で、他の世界に関心が向かない人間は文化構想では減点対象だー!」とでもいうつもりなんでしょうかw たしかにまぁ、西美(国立西洋美術館)は世界遺産登録されましたから、時事問題と言えば時事問題なんですけど、私みたいに世界遺産嫌い(全てというわけではなく、特に文化遺産については、何でもかんでも遺産だ保護だというのは嫌いですw 自然に時の中で朽ちていく美しさも含めて遺産だというのに)は一体どうしたらいいというのでしょうw
ただ、それでも設問1~3については、少しでも美術に興味のある人にとってはある意味常識の範疇だと思います。文構目指そうという受験生であれば美術好きな人も多そうですし、案外解けるのではないでしょうか。難しいのは設問4ですね。これは知識では正直解けません。私も知りませんでした。でも、解けました。なぜか。
実は、この設問文章の雰囲気と、提示された絵と、美術的な知識(ほんのちょっぴり)があればそれで判断できる設問になっているんですね。ある意味、国語的というか、美術的というか、総合的な問題です。
まず、文章を見てみますと、マティスについては「絵画を現実世界の再現という伝統的役割から解放した」人物であり、「実際に見える色にとらわれない自由な色彩を用い」る作風であると書かれた上で、下の「赤の調和」という絵画が示されています。
マティス「赤の調和」
こうした文章と絵を見た上で、選択肢を検討してみましょう。
ア:イスラーム美術の装飾性が認められる。
イ:フェルメールの細密な描写が指摘できる。
ウ:印象派風の室内風景
エ:ルネサンス絵画の遠近法
これらア~エから選ぶとすれば、私はやはりアを選びます。まず、イについて検討しますと、フェルメールの絵とは似ても似つきませんし、マティスの絵からは単純化された線の大胆さは感じますが「繊細さ」は感じません。フェルメールは以下の絵などです。
フェルメール「地理学者」
また、ウについて考えますと、そもそもマティスは「絵画を現実世界の再現という伝統的役割から解放した」人物なのですから、「印象派風の室内風景」では何だか説明とあわない気がします。ついでに言えば印象派って光を大切にしますから戸外制作多いんですよね。下は印象派のひとりルノアールの「二人の姉妹」です。
ルノアール「二人の姉妹」
さらに、エについてですが、うーん、遠近法って感じではないですよねぇ。下はマサッチオの「貢の銭」ですが、初期のルネサンス遠近法を取り入れた代表作です。
マサッチオ「貢の銭」
とまぁ、こんな感じで文章と絵画の雰囲気を検討していくんです。そうすると、「ああ、多分これは当てはまらないな」という形で消去できる選択肢が出てくる、という形でも解けます。知識がなくても正解にたどり着ける問題の好例ですね。
同じように、図2のピカソの絵も検討してみましょう。下がピカソの「アビニヨンの娘たち」です。
ピカソ「アビニヨンの娘たち」
選択肢は以下の通りです。
ア:アフリカ美術の影響が認められる。
イ:レンブラントの明暗法が指摘できる。
ウ:ギリシャ彫刻を思わせる人物像が見出せる。
エ:バロック美術の空間処理が見出せる。
…アやな。アやw まず、レンブラントは違う。レンブラントと言えば代表作は「夜警」ですが、下の絵です。全然似てませんw
レンブラント「夜警」
次に、ウについてですが、ギリシャ彫刻のような均整の取れた人物像とはかけ離れた姿をしています。最後にエですが、バロック美術はルネサンスと比べて調和・均衡が破れたとはいえ、まだまだ構図はしっかりとしています。上に出てきたレンブラントもバロックの人ですよ。
ということで、総合すればやはりアが答えになるということです。「知識がないからできない」ではなく設問のヒントをじっくりと検討すると解ける場合もあるということには注意しておいた方がイザというときに道を開いてくれたりします。あきらめないって大切です。